2025 年 84 巻 6 号 p. 539-544
Patients who experience a severe attack of dizziness and/or vertigo (D/V) at home often use information from the Government Public Relations Online to decide whether to call an ambulance or not. Therefore, we often see patients with D/V in the emergency room. Between April 17, 2022, and May 24, 2024, 39 patients visited the emergency department of our hospital complaining of D/V and were admitted to our center. Among them, 7 patients were examined by the author first, and all had abnormal neuro-otological findings such as nystagmus. Of the remaining 32 patients, 13 had neurological abnormalities at the time of examination by the author, but the medical records of 7 of these patients stated that there were no neurological abnormalities at the time of their first visit. Of the remaining 19 of the 32 patients, the medical records of 5 patients at the time of their first visit stated that they had abnormal nystagmus. From the above, when the author first examined the patients, neurological abnormalities were found in all cases, but when someone other than the author first examined the patients, 66% (21/32) of the cases were judged as having no neurological abnormalities.
The nystagmus observed in D/V attacks caused by peripheral vestibular diseases such as Meniere’s disease, vestibular neuritis, and sudden hearing loss accompanied by vertigo becomes progressively weaker over a few hours. Also, the direction of the nystagmus may be reversed in cases of Meniere’s disease. Observing the weakening or reversal in the direction of nystagmus is important for diagnosing peripheral D/V diseases.
If benign paroxysmal positional vertigo (BPPV) fatigue can be demonstrated, central vertigo can be excluded. In order to diagnose BPPV in cases where nystagmus is not observed due to BPPV fatigue, it is necessary to observe positional nystagmus using a maneuver to restore the positional nystagmus from BPPV fatigue.
突然のめまいなどのような急な病気やけがですぐに救急車を呼ぶべきかどうかの判断に悩んだ時,医師や看護師などの専門家に電話で相談することができるよう,救急安心センター事業【#7119】を厚生労働省が行っている。しかし,この事業は全国的に行われているわけではなく,令和7年4月現在,北海道,兵庫,福岡など,18の県では行われていない1)。全国で活用できる政府広報オンラインに救急車を適切に利用するためのポイントが紹介されており,めまい発作時に「支えなしでたてないぐらい急にふらつく」,「急にふらつき,立っていられない」のであれば救急車を呼ぶべきと記載されている2)。また,総務省消防庁のホームページから「Q助」と呼ばれる緊急度が判定できる全国版救急受診アプリが無料ダウンロードでき,このアプリにて症状で「めまい・ふらつき」を選ぶと,「めまいの症状はひどいですか?」「めまいやふらつきが起こったのは突然ですか?」などの12個の選択肢と「どれにもあてはまらない」の計13個の選択肢が表示され,「どれにもあてはまらない」以外のどれを選んでも「いますぐ救急車を呼びましょう」と表示される3)。すなわち,これらを利用した突然のめまいが生じた患者は救急車を呼んだり,救急外来を受診したりするので,救急外来には多数のめまいを主訴とする患者が来院することになる。救急外来を受診した0.4~1.7%の患者の主訴はめまいである4)。当院にはめまいを主訴とする患者を専門的に診る「耳手術・めまい難聴センター」が設置されている。本稿にて,めまいを主訴に当院の救急外来を受診し当センターに入院となった患者に対する診療を紹介する。
当院では年間1万人以上の救急患者の受け入れを行っており,めまいを主訴とする救急患者も多数来院する。耳鼻科医の勤務時間内に当センターにかかりつけの患者が救急搬送された場合や開業耳鼻科などの近医からのめまい患者の受け入れ要請のあった場合は著者が対応するが,著者が対応できない場合は他の耳鼻科医が対応する。耳鼻科医の勤務時間外は,救急科の医師もしくは当直医が対応し,採血,心電図検査,頭部CT検査,神経学的な一般検査などを施行し,中枢性めまいが否定的で帰宅可能と判断すれば後日の当センターの受診を患者に指示し帰宅させる。めまい症状がひどく,帰宅させられない場合は当センターに入院となり,著者に連絡が入り,著者が主治医になる。通常勤務のために著者が来院するまでは当直医が対応してくれるので,緊急入院となっためまい患者の対応のために著者が時間外に呼び出されたことはなく,入院の2日後に初めて主治医の著者が患者を診察しても診察が遅いと苦情を言われることもないので,緊急入院となった全てのめまい患者の主治医をすることはたいした負担ではない。
2022年4月17日~2024年5月24日にめまいを主訴に当院の救急外来を受診し,当センターに緊急入院した患者は39名であった。最終的に中枢性めまい疾患と診断された症例はなかった。7名(18%)は著者が最初に診察を行い,6名に神経耳科学的異常所見(自発性水平性眼振のみ 4名,一側の急性感音難聴のみ 1名,眼振と難聴 1名)を認めた。残りの1名には反回神経麻痺を認めた5)。すなわち,著者が最初に診察した患者全員に神経学的な異常所見があった。救急科の医師,もしくは当直医が最初に診療にあたった32名の神経学的所見の有無を表1に示す。13名で著者の診察時に神経学的異常所見を認めたが(自発性水平性眼振 10名,頭位眼振 2名,一側の急性感音難聴 1名),この内,7名の初診時のカルテには神経学的異常所見なしと記載されていた,もしくは眼振,難聴に関する記載がなかった(表1右上)。著者の診察時には神経学的異常所見を認めなかった19名のうち,5名の初診時のカルテには病的眼振を認めたとの記載があった(表1左下)。病的眼振を認めたと記載された場合に眼振の方向までは記載されていることはなかった(表1左上,左下)。以上より,著者が最初に診療にあたった場合には全例で神経学的異常所見が認められたが,著者以外が最初に診療にあたった場合には66%(21/32)の症例で神経学的異常所見なしと判断されていた(表1右上,右下)。末梢性めまいで観察される神経学的異常所見は難聴などの蝸牛症状と眼振だけであるので,これらの所見なしに末梢性めまい疾患は診断できないことを留意しておく必要がある。
「神経学的異常所見を認めた旨のカルテ記載なし」とは,カルテ上に神経学的異常所見が記載されていないこと,すなわち「異常所見なし」と明記されている場合,または眼振や難聴などの神経学的症状に関する記載が存在しないことを指す。
| 神経学的異常所見を認めた旨のカルテ記載あり | なし | |
|---|---|---|
| 著者の診察時に神経学的異常所見あり | 6 | 7 |
| なし | 5 | 14 |
めまいを主訴とする患者に対する診療において聴力検査は不可欠である。しかし,救急外来の診察室にオージオメータが設置されていることはまずないのでその場で聴力を正確に評価することはできない。救急外来でも,Weber検査により一側の感音難聴の有無を調べることができ,また,世界保健機関(WHO)が開発したスマートフォン用の無料で入手できるアプリ(日本語非対応)やタブレット型オージオメータ(OtoKiosk,ダイアテックジャパン株式会社,神奈川)などを用いれば簡易聴力検査ができる。
末梢性めまい疾患で観察される自発眼振は明室での開眼では固視抑制されはっきりと観察することができないので6),固視抑制が起こらないようにフィレンツェル眼鏡下,もしくは赤外線CCDカメラを使用して眼振を観察すべきである。フィレンツェル眼鏡は持ち運びに便利であるが,眼振動画を記録できない。耳鼻科外来で最も使用されている「赤外線眼振画像TV装置IEM-2(永島医科器械株式会社,東京)」は簡便に使用でき,映像もきれいであるが,バッテリーが内蔵されておらず,電源が必要であり,眼振観察のためのモニターTVも必要であるので,装置が大型で携帯性に優れていない。よって,耳鼻科外来で救急患者を診察するのであればIEM-2は有用であるが,救急外来での使用は難しい。現在は製造販売が終了しているので入手できないが,著者が使用しているジャイロフレンツェルG96DA(KIDS MEDICAL社,東京)はバッテリーが内蔵されたタブレット型のコンピューターとそれにUSB接続された赤外線CCDカメラで構成されているので,コンセントが不要で持ち運びが便利であり,眼振動画が記録でき,その動画をファイリングソフトで管理できるので,救急外来で使用するにはとても便利である7)。また,カメラにはジャイロセンサーが搭載されているので,患者の頭位データを眼振の映像と同期して記録することができる。画像ファイリングシステムが搭載されている電子カルテには,眼振動画をリアルタイム,もしくは動画記録後に取り込める。
末梢性めまい疾患であるメニエール病,前庭神経炎,めまいを伴う突発性難聴ではめまい発作の最中,常に眼振が観察され8)9),良性発作性頭位めまい症ではめまいが誘発される頭位でのみ眼振が観察される10)。典型的な眼振を示した末梢性めまい疾患の二例を提示する。
1. メニエール病症例:60歳代女性
著者の勤務時間内である午後5時少し前にめまいが主訴の救急患者の受け入れ要請があり,午後5時過ぎにその患者が来院した。午後5時37分の自発眼振を図1最上段に示す。激しい右向き眼振が観察された。中枢性疾患を疑わせる神経症状はなかったが,めまい症状が強く,当センターに緊急入院となった。以前に激しいめまい発作が数回あり,今回のめまい発作時に右耳閉感を伴っていたので右メニエール病と診断した。約2時間後の午後7時27分の自発眼振を図1中段に示す。来院時に比べ,明らかに眼振の強度が弱くなっていた。このようにメニエール病,前庭神経炎,めまいを伴う突発性難聴などの末梢性めまい疾患の自発眼振は数時間後には強度が弱くなっている。眼振の強度の変化を確認するためには,ジャイロフレンツェルG96DAのような携帯性に優れた眼振記録装置が必要である7)。

最上段:来院直後の自発眼振
中段:来院2時間後の自発眼振
最下段:翌朝の自発眼振
入院の翌朝の眼振を図1最下段に示す。眼振の方向が左向きに変化していた。このようにメニエール病では眼振の方向が変化することが多いので11),翌日も眼振の観察が必要であり,1日で眼振の方向が変化していれば,中枢性めまい疾患の可能性は低い。
2. 良性発作性頭位めまい症症例:60歳代女性
右Dix-Hallpike法時に図2Aに示すように右回旋性の頭位変換眼振が観察されたので,右患側の後半規管型良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo,以下BPPV)と診断した12)。BPPVでは,めまい頭位を取ったときのみ,典型的な頭位・頭位変換眼振が観察される10)。しかし,繰り返しめまい頭位を取ると,めまい症状,および頭位・頭位変換眼振が減弱,もしくは消失する13)。この性質は疲労現象と呼ばれる。当症例の2回目の右Dix-Hallpike法時の頭位変換眼振を図2Bに示す12)。疲労現象により眼振はほとんど観察されない。疲労現象はBPPVに特異的であるので,疲労現象が観察されれば,BPPV,すなわち末梢性めまい疾患であると判断してよい。しかし,外側半規管型BPPV(クプラ結石症)では疲労現象は観察されないので,注意が必要である。

(A)1回目のDix-Hallpike法時の頭位変換眼振
激しい右回旋性眼振が観察された。
(B)2回目のDix-Hallpike法時の頭位変換眼振
ほとんど眼振は観察されない。
(C)Imai法時の頭位眼振
右後半規管の抑制性眼振である左回旋性眼振が観察された。挿入図にImai法時の患者の状態を示す。
(D)3回目のDix-Hallpike法時の頭位変換眼振
再び激しい右回旋性眼振が観察された。
BPPV患者が救急搬送された場合,救急搬送のきっかけとなっためまい発作にて疲労現象が起こっているので,来院直後の頭位・頭位変換眼振検査にて病的眼振が観察されないことがある。BPPVの確定診断のためには頭位・頭位変換眼振の観察は必須であるので,疲労現象により病的眼振が観察されなければBPPVと診断することができない。そこで,疲労現象が生じている後半規管型BPPV患者の頭位変換眼振を出現させる,Imai法と呼ばれる方法が開発された12)。右後半規管型BPPVに対するImai法を図2Cの挿入図に示す。疲労現象が起こった後半規管型BPPV患者に対し,頭部を前屈させ,患側に向ける。この際,患側後半規管の抑制性眼振が観察される(図2C)。Imai法を行った直後のDix-Hallpike法時には図2Dに示すように激しい頭位変換眼振が再び観察された12)。以上より,この患者では1度目のDix-Hallpike法時に激しい頭位変換眼振が観察され(図2A),2度目のDix-Hallpike法時には疲労現象によりほぼ眼振が消失したが(図2B),3度目のDix-Hallpike法時にはImai法により再び激しい頭位変換眼振が観察された(図2D)。
・末梢性めまい疾患の患者が政府広報オンラインの情報や,総務省消防庁が作成したアプリを使用して,救急車を呼ぶかどうかを判断した場合には救急車を呼ぶことになるので,末梢性めまい疾患の患者が救急搬送されることが多々ある。救急車を呼ぶ基準をめまい症状の重さだけではなく,時間的緊急性や判断の困難性を含めたものにする必要があると思われる。
・末梢性めまい疾患のメニエール病,前庭神経炎,めまいを伴う突発性難聴によるめまい発作で観察される眼振の強さは数時間後には弱くなっている。メニエール病では翌日に眼振の方向が逆転していることがある。
・BPPVでは疲労現象が観察され,疲労現象が観察されれば中枢性めまい疾患は除外できる。BPPVにて疲労現象により,頭位・頭位変換眼振が誘発されないと,BPPVと診断することができないので,疲労現象が起こっている後半規管型BPPV患者に対してはImai法を行ってから頭位変換眼振を確認する。
本研究の一部はJSPS科研費23K08941の助成を受けたものである。本論文の要旨は第83回日本めまい平衡医学会(愛知)「シンポジウム1『めまい救急のNewトレンド』」で講演した。
利益相反に該当する事項はない。
別刷請求先:今井貴夫