Purpose: To compare the driving habits and risks of accidents between adults with dizziness and healthy controls, and to examine whether dizziness-related activity limitations (score on the Dizziness Handicap Inventory; DHI), sex, and diagnosis might be associated with these outcomes.
Methods: A total of 141 patients with dizziness and 141 age- and sex-matched healthy adults were compared in terms of their driving habits and risks of accidents using a self-reported questionnaire. The dizziness group was classified by severity (mild, moderate, severe) according to the score on the DHI, and comparisons were conducted by gender and by vestibular diagnosis.
Results: No significant differences in driving habits were found between the two groups. Although not statistically significant, the rates of traffic accidents (7.8% vs. 2.1%) and near-miss incidents (44.7% vs. 32.6%) were higher in the group of patients with dizziness. Moreover, 60.3% of patients with dizziness restricted their driving. Patients with higher DHI scores showed significantly lower driving confidence, greater avoidance behaviors, and a higher frequency of near-miss incidents. Male patients drove longer distances and reported higher confidence levels than female patients, although the risk-related outcomes were similar. Disease-based comparisons revealed that patients with persistent postural-perceptual dizziness (PPPD) showed the lowest driving confidence, more avoidance behaviors, and a higher rate of driving restriction (78.3%) as compared to patients with benign paroxysmal positional vertigo, Ménière’s disease, or vestibular neuritis.
Conclusion: Patients with dizziness generally continue to drive, but those with a greater severity of dizziness showed lower driving confidence and a higher frequency of near-miss incidents. Among vestibular disorders, PPPD, in particular, appears to have a significant influence on driving habits, with PPPD patients exhibiting frequent avoidance behaviors and a higher rate of self-imposed restriction.
自動車運転は移動手段として不可欠であり,Quality of Life(QOL)の維持・向上に重要な役割を果たす1)。運転に必要な能力として,左右・後方の確認に伴う頭部運動や複雑な視覚情報の処理2)3),さらに持続的な注意力の保持が求められる4)。しかし,めまい疾患によっては急激な頭部運動や複雑な視覚環境はめまい症状を誘発する可能性があり,めまい患者にとって自動車運転は大きな負担となり得る。めまい症状が自動車運転習慣や運転リスクに悪影響を及ぼすこと,性別による影響の違いがあることが報告されている5)~7)。カナダではめまい患者265名のうち113名(43%),オランダでは432名のうち191名(44%)がめまい症状によって運転を制限された経験を有していた5)7)。めまい患者の中でも女性は男性に比べて運転制限のリスクが約2倍高いと報告している7)。また,運転リスクについてはアメリカの調査で前庭性めまいを有する人は,健常人と比較し自動車事故リスクが3.5倍に上昇することが示されている6)。一方で,めまい疾患の中でも良性発作性頭位めまい症(BPPV)やメニエール病などの発作性疾患と慢性症状を呈する持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)では自動車運転への影響も異なると予想される。
道路環境や法制度は国により異なるため,国外の知見を日本にそのまま適用することは限界がある。本研究では,日本におけるめまい患者の運転習慣および運転リスクの特徴を明らかにすることを目的とした。特に,本研究では日本のめまい患者における運転習慣・運転リスクの特徴を,対照群との比較に加え,DHI重症度・性別・疾患別に検討した。
本研究の対象は,2022年4月1日から12月31日の期間に目白大学耳科学研究所クリニックをめまい・ふらつきを主訴に受診した外来患者165名である。1)めまい症状を主訴として受診した患者であること。2)自動車運転免許を有していること。3)週に1回以上自動車の運転を行っていること。4)すべての調査を完遂していること。5)本研究への参加に同意していること。これらを満たさなかった24名(運転日数が週1回未満:18名,データ欠損:6名)を除外し,141名(年齢58.4 ± 14.3歳,男性63名/女性78名)を「めまい患者群」とした。地域住民を対象とした健診事業に参加した一般成人548名のデータから対照を抽出した。めまい症状を有さず,上記2)〜5)の条件を満たす者の中から,年齢および性別をマッチングさせた141名(年齢60.0 ± 11.4歳,男性63名/女性78名)を「対照群」とした(図1)。対照群の抽出は先行研究をもとに年齢(±5歳以内)および性別が一致することを条件とし8),めまい患者1名に対し対照者1名をマッチングした。複数の候補者が存在する場合は,事前に定めた割付け手順(年齢差が最も小さい者を優先し,同一健常者の重複割当てを禁止する)を機械的に適用し,順次対応付けを行った。この手順により,研究者の主観的判断を排除し,客観的かつ再現性のある形で対照群141名を抽出した。

研究対象の組入れ・除外の流れを示す。めまい患者群141名と対照群141名が解析対象。DHI = Dizziness Handicap Inventory。
本研究は,めまい患者群および対照群に対して以下の項目とした。基本情報(年齢,性別,運転経験年数),運転習慣(1週間の運転日数,1週間の運転距離,運転時の自信および回避行動),運転リスク(自動車事故,ヒヤリハット)である。また,めまい患者群のみ診断名およびDizziness Handicap Inventory(DHI),めまい症状により自主的な運転の制限に対する経験の有無を調査した。運転時の自信および回避行動は,先行研究に基づき9項目の運転状況に対する自信および回避行動について,それぞれ5段階リッカート尺度を用いて評価し,各45点満点とした(表1)9)10)。運転時の自信は[1点:全く自信がない,2点:あまり自信がない,3点:少し自信がある,4点:自信がある,5点:非常に自信がある]で回答し,合計スコアが高得点なほど運転時の自信が高いことを示す。運転時の回避行動は[1点:全くない,2点:あまりない,3点:少しある,4点:よくある,5点:いつもある]で回答し,合計スコアが高得点なほど多くの状況もしくは高頻度で特定の状況での運転を回避していることを示す。
| No | 運転状況 | No | 運転状況 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1人での運転 | 6 | 交差点での右折 |
| 2 | 車通りの多い道の運転 | 7 | 縦列駐車 |
| 3 | 高速道路での運転 | 8 | 混雑・渋滞時の運転 |
| 4 | 夜間の運転 | 9 | 慣れない道路の運転 |
| 5 | 雨の日の運転 |
9項目について運転時の自信は5段階(1点:全く自信がない,2点:あまり自信がない,3点:少し自信がある,4点:自信がある,5点:非常に自信がある)で回答し,回避行動も5段階(1点:全くない,2点:あまりない,3点:少しある,4点:よくある,5点:いつもある)で評価した。運転時の自信:高得点=自信が高い。回避行動:高得点=回避行動の頻度が多い。
運転リスクのうち自動車事故は,過去2年間における自損事故を含む自動車事故の有無を調査した。ヒヤリハットは,牧迫ら11)が作成した10項目の状況に基づき,過去2年間のヒヤリハットの有無を「はい」「いいえ」の2択で調査した(表2)。ヒヤリハットありと判定する基準は,10項目のうち1項目以上で「はい」と回答した場合とした。本研究は運転習慣,運転リスクについて,以下の3つの比較を行った。
| 質問項目 | |
|---|---|
| 1 | 停止線から出たとき,違う方向から来た人に衝突しそうになったことがありますか? |
| 2 | 右折しようとしたとき,直進してきた車に衝突しそうになったことがありますか? |
| 3 | 右折しようとしたとき,歩行者や自転車に衝突しそうになったことがありますか? |
| 4 | 左折しようとしたとき,歩行者や自転車に衝突しそうになったことがありますか? |
| 5 | 車線変更をしたとき,他の車と衝突しそうになったことがありますか? |
| 6 | 前方の車両と衝突しそうになったことがありますか? |
| 7 | 自転車,オートバイなどを追い越そうとしてぶつかりそうになったことがありますか? |
| 8 | アクセルとブレーキを踏み間違えたことがありますか? |
| 9 | 駐車場でバックするとき,他の車両や障害物に衝突しそうになったことがありますか? |
| 10 | 道路から店の駐車場に入るとき,歩道の縁に乗り上げそうになったことがありますか? |
10項目について過去2年間のヒヤリハットの有無を「はい,いいえ」の2択にて調査し,1つ以上「はい」を選択した場合を「ヒヤリハットあり」と判定する。
i)めまい患者群と対照群による比較
ii)めまい患者群をDHIスコアにより3群で比較
iii)めまい患者群を性別で比較
iv)めまい患者群を疾患別で比較
なお,ii)DHIスコアによる3群の比較はGrahamら12)に基づきDHIスコアにてDHI ≤ 30を軽症群,30 < DHI ≤ 60を中等症群,DHI > 60を重症群とした。
解析方法すべての独立変数についてShapiro–Wilk検定により正規性を確認した。2群間比較には,データの尺度および正規性に応じてχ2検定,対応のないt検定,またはMann–WhitneyのU検定を用いた。3群間比較にはχ2検定,一元配置分散分析,Kruskal–Wallis検定を用い,多重比較にはBonferroni法を適用した。疾患別の解析では,各診断群の症例数に偏りがみられた場合,統計的検出力を確保する目的にて症例数が極端に少ない疾患は解析から除外することとした13)。解析にはIBM SPSS Statistics ver. 29.0(IBM社)を使用し,有意水準は5%未満とした。
研究倫理および利益相反対照群の一部データは,文部科学省科学研究費(課題番号:20K19424)を用いて取得した。本研究は目白大学倫理審査委員会の承認(承認番号:22医-003)を受け,対象者には書面および口頭で十分な説明を行い,同意を得たうえで実施した。
めまい患者群における疾患名の内訳を表3に示す。最も多かった疾患はBPPV 43名(30.5%),次いでPPPD 23名(16.3%)であった。
| 疾患名 | 人数(%) |
|---|---|
| 良性発作性頭位めまい症 | 43(30.5) |
| 持続性知覚性姿勢誘発めまい | 23(16.3) |
| メニエール病 | 16(11.3) |
| 前庭神経炎 | 16(11.3)* |
| 前庭性片頭痛 | 15(10.6) |
| めまいを伴う突発性難聴 | 5(3.5) |
| 両側前庭機能障害 | 1(0.7) |
| 不明 | 22(15.6) |
左列に診断名,右列に人数および割合を示す説明:左列に診断名,右列に人数および割合を示す。*前庭神経炎は亜急性期5例,慢性期11例であった。
i)めまい患者群と対照群による比較(表4)
| めまい患者群 n = 141 |
対照群 n = 141 |
有意確率 | |
|---|---|---|---|
| 年齢:平均 ± SD:年 | 58.4 ± 14.3 | 60.0 ± 11.4 | p = 0.548 |
| 性別:男性:人(%) | 63(44.7) | 63(44.7) | p = 1.000 |
| 運転経験年数:平均 ± SD:年 | 35.4 ± 13.7 | 36.3 ± 11.9 | p = 0.533 |
| 1週間の運転日数:人(%) | p = 0.512 | ||
| 4日未満 | 49(34.8) | 39(27.6) | |
| 4–6日 | 36(25.5) | 42(29.8) | |
| 7日(毎日) | 56(40.0) | 60(42.6) | |
| 1週間の運転距離:人(%) | p = 0.522 | ||
| 10 km未満 | 21(14.9) | 17(12.1) | |
| 10 km–99 km | 83(58.9) | 79(56.0) | |
| 100 km以上 | 37(26.2) | 45(31.9) | |
| 運転時の自信:平均 ± SD(点) | 26.5 ± 7.1 | 26.7 ± 6.1 | p = 0.761 |
| 運転時の回避行動:平均 ± SD(点) | 18.8 ± 7.5 | 20.3 ± 6.7 | p = 0.107 |
| めまいによる運転制限あり:人(%) | 85(60.3) | ||
| 自動車事故:人(%) | 11(7.8) | 3(2.1) | p = 0.051 |
| ヒヤリハット:人(%) | 63(44.7) | 46(32.6) | p = 0.050 |
めまい患者群と対照群において運転関連指標を比較。
運転習慣では,運転経験年数(p = 0.533),運転日数(p = 0.512),運転距離(p = 0.522)に両群間の有意差は認められなかった。両群とも40%以上の対象者が「毎日運転している」と回答し,週100 km以上運転している者は,めまい患者群で26.2%,対照群で31.9%であった。運転時の自信(p = 0.761)および回避行動(p = 0.107)について有意差は認められなかった。運転リスクでは,自動車事故の経験者はめまい患者群11名(7.8%),対照群3名(2.1%)であり,有意差は認められなかった(p = 0.051)。ヒヤリハットの経験者は,めまい患者群63名(44.7%),対照群46名(32.6%)で有意差は認められなかった(p = 0.050)。自動車事故およびヒヤリハット経験者は統計学的な有意差は認められなかったが,めまい患者群で高い傾向を示した。めまい患者群141名のうち,めまいによる運転制限があると回答した者は85名(60.3%)であった。
ii)DHIスコアにより3群で比較(表5)
| 軽症群 DHI ≤ 30 n = 78 |
中等症群 30 < DHI ≤ 60 n = 50 |
重症群 DHI > 60 n = 13 |
有意確率 | |
|---|---|---|---|---|
| 年齢:平均 ± SD:年 | 59.9 ± 14.0 | 57.0 ± 14.6 | 54.6 ± 15.3 | p = 0.316 |
| 性別:男性:人(%) | 34(43.6) | 26(52.0) | 3(23.0) | p = 0.167 |
| 運転経験年数:平均 ± SD:年 | 36.6 ± 13.9 | 34.5 ± 13.5 | 31.3 ± 13.7 | p = 0.474 |
| 1週間の運転日数:人(%) | p = 0.954 | |||
| 4日未満 | 28(35.9) | 15(30.0) | 6(46.2) | |
| 4–6日 | 19(24.4) | 16(32.0) | 1(7.7) | |
| 7日(毎日) | 31(39.7) | 19(38.0) | 6(46.2) | |
| 1週間の運転距離:人(%) | p = 0.679 | |||
| 10 km未満 | 12(15.4) | 6(12.0) | 3(23.1) | |
| 10 km–99 km | 47(60.3) | 28(56.0) | 8(61.5) | |
| 100 km以上 | 19(24.4) | 16(32.0) | 2(15.4) | |
| 運転時の自信:平均 ± SD(点) | 28.1 ± 7.4 | 25.8 ± 7.2 | 21.8 ± 6.1 | p = 0.008 b |
| 運転時の回避行動:平均 ± SD(点) | 18.7 ± 7.9 | 21.5 ± 8.3 | 25.2 ± 6.9 | p = 0.011 b |
| めまいによる運転制限あり:人(%) | 37(47.4) | 36(72.0) | 12(92.3) | p < 0.001 abc |
| 自動車事故:人(%) | 5(6.4) | 5(10.0) | 1(7.7) | p = 0.761 |
| ヒヤリハット:人(%) | 28(35.9) | 24(48.0) | 12(92.3) | p = 0.004 abc |
軽症群(DHI ≤ 30),中等症群(30 < DHI ≤ 60),重症群(DHI > 60)の3群で各指標を比較。a:軽症群 vs中等症群,b:軽症群 vs重症群,c:中等症 vs 重症群
めまい患者群をDHIスコアにより3群に分類した結果を表5に示す。各群の人数は,軽症群78名(年齢59.9 ± 14.0歳,男性43.6%),中等症群50名(57.0 ± 14.6歳,男性52.0%),重症群13名(54.6 ± 15.3歳,男性23.0%)であった。運転習慣は,運転経験年数のみ3群間で有意差を認めた(p < 0.05)。運転日数(p = 0.954),運転距離(p = 0.679)には有意差はなかったが,重症群のうち6名(46.2%)が「毎日運転」と回答した。
運転時の自信合計スコアは,軽症群28.1 ± 7.4点,中等症群25.8 ± 7.2点,重症群21.8 ± 6.1点であり,DHI重症度が高いほど低下し,軽症群と重症群の間に有意差を認めた(p < 0.01)。回避行動の合計スコアは,軽症群18.7 ± 7.9点,中等症群21.5 ± 8.3点,重症群25.2 ± 6.9点であり,DHI重症度が高いほど増加し,軽症群と重症群の間で有意差を認めた(p < 0.05)。
ヒヤリハットを経験した割合は,軽症群28名(35.9%),中等症群24名(48.0%),重症群12名(92.3%)と,DHI重症度が高くなるほど増加していた。過去にめまいにより運転を制限した人数も,軽症群37名(47.4%),中等症群36名(72.0%),重症群12名(92.3%)と,同様の傾向であった。多重比較の結果,ヒヤリハット経験者数および運転制限者数は,3群間でいずれも有意差を認めた(p < 0.001)。
iii)めまい患者群を性別で比較(表6)
| 男性 n = 63 |
女性 n = 78 |
有意確率 | |
|---|---|---|---|
| 年齢:平均 ± SD:年 | 58.1 ± 16.3 | 58.7 ± 12.3 | p = 0.814 |
| 運転経験年数:平均 ± SD:年 | 36.7 ± 15.3 | 34.3 ± 12.4 | p = 0.383 |
| 1週間の運転日数:人(%) | p = 0.904 | ||
| 4日未満 | 22(34.9) | 27(34.6) | |
| 4–6日 | 15(23.8) | 21(26.9) | |
| 7日(毎日) | 26(41.3) | 30(38.5) | |
| 1週間の運転距離:人(%) | p < 0.001 | ||
| 10 km未満 | 8(12.7) | 13(16.7) | |
| 10 km–99 km | 27(42.9) | 56(71.8) | |
| 100 km以上 | 28(44.4) | 9(11.5) | |
| 運転時の自信:平均 ± SD(点) | 31.5 ± 5.7 | 22.9 ± 6.2 | p < 0.001 |
| 運転時の回避行動:平均 ± SD(点) | 16.9 ± 7.2 | 23.0 ± 7.9 | p < 0.001 |
| めまいによる運転制限あり:人(%) | 37(58.7) | 48(61.5) | p = 0.434 |
| 自動車事故:人(%) | 3(4.8) | 8(10.2) | p = 0.498 |
| ヒヤリハット:人(%) | 28(44.4) | 35(44.9) | p = 0.548 |
| DHI合計:平均 ± SD(点) | 30.5 ± 19.1 | 31.8 ± 23.8 | p = 0.732 |
男性と女性の2群で運転関連指標を比較。DHI:Dizziness Handicap Inventory
めまい患者群を男性63名(58.1 ± 16.3歳)と女性78名(58.7 ± 12.3歳)に分け,運転習慣および運転リスクを比較した結果を表6に示す。運転習慣では,週あたりの運転距離に有意差を認めた(p < 0.001)。10–99 km/週の者は男性27名(42.9%),女性56名(71.8%)であり,100 km以上/週の者は男性28名(44.4%),女性9名(11.5%)であった。
運転時の自信合計スコアは男性31.5 ± 5.7点,女性22.9 ± 6.2点であり,男性の方が有意に高かった(p < 0.001)。回避行動の合計スコアは男性16.9 ± 7.2点,女性23.0 ± 7.9点であり,男性の方が有意に低かった(p < 0.001)。運転リスク(自動車事故およびヒヤリハット)の経験に有意な性差は認められなかった。
iv)めまい患者群を疾患別で比較(表7)
| BPPV n = 43 |
PPPD n = 23 |
メニエール病 n = 16 |
前庭神経炎 n = 16 |
前庭性片頭痛 n = 15 |
有意確率 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢:平均 ± SD:年 | 60.7 ± 13.3 | 51.6 ± 15.5 | 60.7 ± 13.9 | 61.9 ± 12.8 | 48.8 ± 12.7 | p = 0.007 b |
| 運転経験年数:平均 ± SD:年 | 36.9 ± 13.4 | 37.0 ± 10.5 | 29.3 ± 15.4 | 28.6 ± 11.1 | 40.6 ± 12.0 | p = 0.020 |
| 1週間の運転日数:人(%) | ||||||
| 4日未満 | 16(37.2) | 5(31.2) | 6(26.1) | 4(26.7) | 7(43.8) | p = 0.633 |
| 4–6日 | 8(18.6) | 5(31.2) | 9(39.1) | 3(20.0) | 5(31.2) | |
| 7日(毎日) | 19(44.2) | 6(37.5) | 8(34.8) | 8(53.3) | 4(25.0) | |
| 1週間の運転距離:人(%) | ||||||
| 10 km未満 | 11(25.6) | 2(12.5) | 3(13.0) | 1(6.7) | 1(6.2) | p = 0.605 |
| 10 kmー99 km | 23(53.5) | 9(56.2) | 13(56.5) | 8(53.3) | 10(62.5) | |
| 100㎞以上 | 9(20.9) | 5(31.2) | 7(30.4) | 6(40.0) | 5(31.2) | |
| 運転時の自信:平均 ± SD(点) | 28.3 ± 7.5 | 21.4 ± 6.3 | 28.4 ± 4.5 | 29.0 ± 4.3 | 25.0 ± 9.1 | p = 0.001 acd |
| 運転時の回避行動:平均 ± SD(点) | 18.9 ± 8.0 | 25.7 ± 7.1 | 20.1 ± 7.3 | 19.9 ± 7.6 | 19.1 ± 8.6 | p = 0.015 a |
| めまいによる運転制限あり:人(%) | 17(39.5) | 18(78.3) | 10(62.5) | 6(37.5) | 9(60.0) | p = 0.022 a |
| 自動車事故:人(%) | 2(4.7) | 3(13.0) | 1(6.3) | 1(6.3) | 1(6.7) | p = 0.797 |
| ヒヤリハット:人(%) | 18(41.9) | 12(52.2) | 9(56.3) | 9(56.3) | 8(53.3) | p = 0.668 |
| DHI合計:平均 ± SD(点) | 26.5 ± 21.9 | 42.3 ± 20.2 | 35.0 ± 24.9 | 31.5 ± 15.4 | 37.3 ± 21.7 | p = 0.045 a |
表は5つの疾患において運転関連指標を比較。a:BPPV vs PPPD,b:BPPV vs前庭性片頭痛,c:PPPD vsメニエール病,d:PPPD vs前庭神経炎
疾患別の比較では症例数の少なかっためまいを伴う突発性難聴,両側前庭機能障害および疾患が特定できなかった22名の計28名を解析から除外し,BPPV,PPPD,メニエール病,前庭神経炎,前庭性片頭痛の5つの疾患を解析対象とした。運転時の自信合計スコアはPPPDがBPPV・メニエール病,前庭神経炎との間にそれぞれ有意差を認めた(p < 0.001, p < 0.05, p < 0.01)。回避行動の合計スコアはPPPDがBPPVに比べ有意に高かった(p < 0.01)。運転を制限した人数はPPPDがBPPVに比べ有意に多かった(p < 0.05)。
自動車運転は頭部や視線の動きを伴う複雑な動作を要し,めまい患者にとって負担となり得る。疾病に起因する自動車事故の調査では,脳血管疾患・心疾患・失神・消化器疾患に次いでめまいが挙げられている14)。そのため,めまいと自動車運転の関係は臨床的に無視できない重要な課題である。本研究では,めまい患者と一般成人を比較し,運転習慣やリスクに違いがあるかを検討した。さらに,めまいによる日常生活支障の程度や性別が,運転に関連する行動やリスクにどのような影響を及ぼすかについて分析した。
i)めまい患者群と対照群による比較
運転日数や運転距離に群間差は認められず,めまい患者も日常生活において自動車利用を継続しており,この所見は先行報告と一致する15)。本研究対象の平均年齢が58歳と比較的若いことも,症状を抱えながらも生活や就労において運転の必要性が高い背景にあると考えられる。一方,自動車事故やヒヤリハットに統計学的有意差こそ示さなかったが,患者群で高い傾向を示した。Cohenらは,末梢性前庭障害患者は駐車スペースへの出入りや渋滞時の車線変更など空間的なナビゲーション能力を必要とする運転条件や,夜間や雨天時の運転など視覚的な入力が制限される運転条件において困難があると報告している15)。また,めまいに伴う突発的な頭位変換や眼振が運転中の状況判断に影響した可能性もある。今後症例数を増やして疾患別に運転リスクの増大を検討したい。患者群約6割が「めまいのために運転を制限した経験」があり,この点は重要である。運転制限は,就労機会の喪失や社会参加の制約につながるため,臨床現場では適切な運転指導や代替手段の検討や提案が望まれる。
ii)DHIスコアにより3群で比較
DHIは,めまいによる日常生活支障の重症を評価する代表的指標である16)17)。本研究では,DHIに基づき軽症・中等症・重症の3群に分類し,運転習慣と運転リスクを比較した。その結果,DHIスコアが高い群ほど運転時の自信は低下し,回避行動やヒヤリハットが増加していた。このことは,不安や恐怖回避行動といった心理的要因を強め,運転機会を制限するとともに,めまいによるQOL低下につながっていることを示唆している。
DHIは本来ADL全般の評価指標であるが,本研究結果からは運転リスク層別化への応用可能性を示す。今後は,DHIや他の平衡機能検査と運転適性との関連を縦断的に検討することが求められる。
iii)めまい患者群を性別で比較
一般的に自動車運転には男女差があり,男性は女性よりも運転距離が長く18)19),運転に対する自信や自己評価も高いとされている20)21)。また,女性は夜間や慣れない道,悪天候を避けて運転する傾向がある22)。本研究においても,男性は長距離運転者が多く自信スコアが高い一方,女性は回避行動が多く自信が低いという結果が得られた。ただし,運転リスク(自動車事故・ヒヤリハット)については有意差を認めなかった。この理由として,女性が自信低下により回避行動を多く取ることで,実際のリスクが相殺されている可能性が考えられる。性差による運転習慣の違いは,運転指導やリハビリテーションプログラムを実施する際に考慮すべきである。
iv)めまい患者群を疾患別で比較
本研究では,PPPD患者は他の疾患,特にBPPVと比較して,運転制限を経験する割合が高く,運転に対する自信が低く,回避行動が多いことが明らかとなった。PPPDでは,症状を増悪させる動作として「頭を動かす」「動くものを見る」「複雑な視覚刺激を受ける」などが報告されている23)24)。これらの動作は,サイドミラーでの周囲確認や走行中の対向車への注視,交通量の多い道路での運転など,運転時に必要とされる動作と重なる。さらに,PPPD患者は不安傾向が強く,先行研究では約4割が不安検査で異常値を示したと報告されている25)。運転不安が強いドライバーは,運転の中止や特定状況での回避行動をとる傾向があることも示されており26)27),これらの要因がPPPD患者の自動車運転行動に大きな影響を及ぼしていると考えられる。
研究の限界本研究は単施設における限られた症例数の検討であり,地域的背景や交通環境の影響は考慮していないため,自動車事故,ヒヤリハットの個々の事案とめまい症状との直接的な因果関係の有無についても明確ではない。加えて,自動車運転に影響し得るめまい発作の有無・頻度,罹病期間,服薬状況,不安症状の有無・程度については系統的な解析を行っていない。今後はこれらを独立変数としてモデル化し,多変量解析により運転自信・回避行動・事故歴への独立効果を検証することで,日本における「めまい疾患と自動車運転行動」の実態をさらに明確にしていく必要がある。
結論本研究により,めまい患者の自動車運転に関して以下の知見が得られた。
1.めまい患者は一般成人と同様に日常的に運転しているが,事故やヒヤリハットは高い傾向を示した。
2.約6割がめまいによる運転制限を経験しており,症状が運転機会の喪失に影響していた。
3.DHIスコアが高い群ほど,運転時の自信が低下し,回避行動やヒヤリハットが増加していた。
4.女性は男性に比べて運転時の自信が低く,回避行動が多い傾向を示した。
5.PPPDは他の疾患と比較し,運転時の自信が低く,回避行動を頻回にとっており,運転制限の割合も多かった。
以上の結果から,めまい患者は健常者と比較して運転行動に大きな差はみられなかったものの,めまいによる日常生活支障の程度や性別,疾患によって運転習慣や運転リスクの特徴が異なることが明らかとなった。めまい患者には個々の状態に応じた適切な指導や支援が必要であることが示唆された。
利益相反に該当する事項はない。