We investigated the incidence of postoperative vertigo and explored factors influencing the risk of its development following cochlear implant (CI) surgery.
The study included 105 patients aged 18 years or older who underwent their first CI implantation at our institution between April 2014 and March 2024. We defined “postoperative vertigo” as the development of vertigo within one month after the surgery. The patients were classified into two groups—a vertigo group and a no-vertigo group—based on whether they developed/did not develop postoperative vertigo. We examined the incidence of postoperative vertigo and investigated its association with the age, gender, surgical method employed, electrode shape, electrode thickness, prior vertigo history, and preoperative vestibular function.
The results revealed no association between the development of postoperative vertigo and the age, gender, surgical method employed, electrode shape, or electrode thickness. However, postoperative vertigo occurred significantly more frequently in patients with prior vertigo history, patients with preoperative vestibular dysfunction at least on one side, especially in those with vestibular dysfunction in the non-surgical ear.
In conclusion, it is important to obtain a careful history of prior vertigo episodes and to perform vestibular function tests on both the surgical and non-surgical sides prior to CI surgery to predict the risk of development of postoperative vertigo.
人工内耳植え込み術(Cochlear Implant:CI)の適応は両側高度難聴患者であり,術前より蝸牛機能が低下しているが,高度難聴患者は蝸牛機能だけでなく,前庭機能も低下していることが多いとされている1)~4)。人工内耳の電極挿入により聴力低下をきたす,すなわち蝸牛機能が低下する症例は54.4%とされており5),約半数の症例は蝸牛機能が低下する一方で,半数は蝸牛機能が温存される。また,人工内耳の電極挿入による前庭機能に関しては,30%~50%程度の症例で前庭機能が低下するとされており,外科的外傷,線維化,炎症反応,内リンパ水腫などが原因として考えられている6)~12)。前庭機能は左右で相補的に機能すること,小脳,脳幹で代償されることから,人工内耳術後に必ずしもめまいを感じるわけではなく,術前の前庭機能検査の結果と術後のめまい症状は一致しないこともある13)。今回,当科におけるCI術後のめまい発生率,術後のめまいに影響を与える因子について検討したので報告する。
2014年4月から2024年3月までに当院で一側目CI植え込み術を施行した18歳以上の患者105例を対象とした。男性43例,女性62例,手術時の平均年齢は57.5 ± 17.3歳であった。術後1日目から1か月以内の診療録にめまい症状を訴えたと記載のあったものを「術後めまい」と定義し,術後めまい有り群,術後めまい無し群に分類した。術後めまいの発生率を検討するとともに,めまいの発生と,性別,年齢,電極挿入方法(正円窓アプローチ:Round Window Approach,拡大正円窓アプローチ:Extended Round Window Approach,蝸牛開窓:Cochleostomyの3種類),電極の形状(pre-curved modiolar hugging(MH)電極,straight lateral wall(LW)電極の2種),電極の先端の太さ(0.35 mm未満,0.35 mm以上),術前のめまい既往の有無,術前の前庭機能との関連があるか検討した。術前前庭機能は温度刺激検査を行った78例を対象とした。温度刺激検査は少量注水法(20°C冷水を5 ml・10秒注水)またはエアーカロリック検査(10°C冷風を60秒送風)の結果で,最大緩徐相速度が10°/sec以下を前庭機能低下,11°/sec以上を前庭機能残存と分類した14)。統計学的検討には,t検定,x2検定,Fisherの正確確立検定を用いた。その後の追加の検討として,2項ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った。p値は5%未満を有意と判定した。本研究は宮崎大学医学部医の倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号:O-1769)。
・術後めまい発生率,年齢・性別と術後めまいの関係
105例中,術後めまい有り群は26例(24.8%),術後めまい無し群は79例(75.2%)であった。術後めまい有り群の平均年齢は61.3 ± 16.6歳,性別は男性9例(34.6%),女性17例(65.4%)であった。術後めまい無し群の平均年齢は56.3 ± 17.3歳,性別は男性34例(43.0%),女性45例(57.0%)であった。術後めまいの有無と,年齢,性別とに有意差は認められなかった(表1)。
| 全体105例 | 術後めまい有り群26例(24.8%) | 術後めまい無し群79例(75.2%) | 有意差 | |
|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 58.0 ± 17.3歳 | 61.3 ± 16.6歳 | 56.3 ± 17.3歳 | n.s.(p = 0.19) |
| 性別(男:女) | 43:62(41.0%:59.0%) | 9:17(34.6%:65.4%) | 34:45(43.0%:57.0%) | n.s.(p = 0.44) |
・電極挿入方法と術後めまいの関係
術後めまい有り群26例のうち,Round Window Approachが19例(73.1%),Extended Round Window Approachが1例(3.8%),Cochleostomyが6例(23.1%),術後めまい無し群79例のうち,Round Window Approachが65例(82.3%),Extended Round Window Approachが5例(6.3%),Cochleostomyが9例(11.4%)であった。比較的低侵襲とされるRound Window Approachとそれ以外で比較したが,術後めまいの有無と電極挿入方法との間に有意差は認められなかった(p = 0.396)(図1)。

術後めまい有り群26例のうち,Round Window Approachが19例(73.1%),Extended Round Window Approachが1例(3.8%),Cochleostomyが6例(23.1%),術後めまい無し群79例のうち,Round Window Approachが65例(82.3%),Extended Round Window Approachが5例(6.3%),Cochleostomyが9例(11.4%)であった。Round Window Approachとその他で,術後めまいの有無と電極挿入方法との間に有意差は認められなかった(p = 0.396)。
・電極の形状と術後めまいの関係
術後めまい有り群26例のうち,LW電極が22例(84.6%),MH電極が4例(15.4%),術後めまい無し群79例のうち,LW電極が70例(88.6%),MH電極が9例(11.4%)であった。術後めまいの有無とインプラントの種類との間に有意差は認められなかった(p = 0.59)(図2)。

術後めまい有り群26例のうち,straight lateral wall(LW)電極が22例(84.6%),pre-curved modiolar hugging(MH)電極が4例(15.4%),術後めまい無し群79例のうち,LW電極が70例(88.6%),MS電極が9例(11.4%)であった。術後めまいの有無とインプラントの種類との間に有意差は認められなかった(p = 0.59)。
・電極の先端の太さと術後めまいの関係
術後めまい有り群26例のうち,電極の先端の太さが0.35 mm未満が15例(57.7%),0.35 mm以上が11例(42.3%),術後めまい無し群79例のうち,電極の先端の太さが0.35 mm未満が46例(58.2%),0.35 mm以上が33例(41.7%)であった。術後めまいの有無と電極の先端の太さとの間に有意差は認められなかった(p = 0.96)(図3)。

術後めまい有り群26例のうち,電極の先端の太さが0.35 mm未満が15例(57.7%),0.35 mm以上が11例(42.3%),術後めまい無し群79例のうち,電極の先端の太さが0.35 mm未満が46例(58.2%),0.35 mm以上が33例(41.7%)であった。術後めまいの有無と電極の先端の太さとの間に有意差は認められなかった(p = 0.96)。
・術前のめまい既往の有無と術後めまいの関係
術後めまい有り群26例のうち,術前にめまい既往がなかった症例が10例(38.5%),術前にめまい既往があった症例が16例(61.5%),術後めまい無し群79例のうち,術前にめまい既往がなかった症例が56例(70.9%),術前にめまい既往があった症例が23例(29.1%)であった。術前にめまい既往があった症例は有意に術後めまいを生じていた(p = 0.003)(図4)。

術後めまい有り群26例のうち,術前にめまい既往がなかった症例が10例(38.5%),術前にめまい既往があった症例が16例(61.5%),術後めまい無し群79例のうち,術前に既往がなかった症例が56例(70.9%),術前にめまい既往があった症例が23例(29.1%)であった。術前にめまい既往があった症例は有意に術後めまいを生じていた(p = 0.003)。
CI術前の前庭機能について温度眼振検査を行った78例を分類すると,両側前庭機能残存例が44例(56.4%),片側前庭機能低下例が11例(14.1%),両側前庭機能低下例が23例(29.5%)であり,34例(43.6%)が片側または両側前庭機能が低下していた。めまい既往の有無と術前の前庭機能について検討したところ,めまい既往あり群31例のうち,両側前庭機能残存が10例(32.3%),片側前庭機能低下が7例(22.6%),両側前庭機能低下が14例(45.1%)であったのに対し,めまい既往なし群34例のうち,両側前庭機能残存が34例(72.3%),片側前庭機能低下が4例(8.5%),両側前庭機能低下が9例(19.2%)であった。術前のめまい既往がある症例は少なくとも片側の前庭機能が有意に低下している結果となった(p = 0.0004)(図5)。

78例のうち両側前庭機能残存例が44例(56.4%),片側前庭機能低下例が11例(14.1%),両側前庭機能低下例が23例(29.5%)であり,34例(43.6%)が片側または両側前庭機能が低下していた。めまい既往あり群は31例のうち,両側前庭機能残存例が10例(32.3%),片側前庭機能低下例が7例(22.6%),両側前庭機能低下例が14例(45.1%)であったのに対し,めまい既往なし群34例のうち,両側前庭機能残存例が34例(72.3%),片側前庭機能低下例が4例(8.5%),両側前庭機能低下例が9例(19.2%)であった。術前のめまい既往がある症例は有意に前庭機能低下を生じている結果となった(p = 0.0004)。
・術前の前庭機能の程度と術後めまいの関係
術前の前庭機能と術後めまいについて検討したところ,術後めまい有り群21例では,手術耳の前庭機能残存例が10例(47.6%),手術耳の前庭機能低下例が11例(52.4%)であった。術後めまい無し群57例では,手術耳の前庭機能残存例が38例(66.7%),手術耳の前庭機能低下例が19例(33.3%)であった。手術耳の前庭機能の残存,低下と,術後めまいとの有意差は認められなかった(p = 0.12)(図6)。次に,非手術耳の前庭機能残存と低下について検討したところ,術後めまい有り群21例では,非手術耳の前庭機能残存が10例(47.6%),非手術耳の前庭機能低下が11例(52.4%)であった。術後めまい無し群57例では,非手術耳の前庭機能残存が41例(71.9%),非手術耳の前庭機能低下が16例(28.1%)であった。非手術耳の前庭機能が低下している場合,術後めまいが有意に起こりやすかった(p = 0.04)(図7)。

術後めまい有り群21例のうち,手術耳の前庭機能残存例が10例(47.6%),手術耳の前庭機能低下例が11例(52.4%),術後めまい無し群57例のうち,手術耳の前庭機能残存例が38例(66.7%),手術耳の前庭機能低下例が19例(33.3%)であった。術側の前庭機能の有無について,術後めまいとの有意差は認められなかった(p = 0.12)。

術後めまい有り群21例のうち,非手術耳の前庭機能残存例が10例(47.6%),非手術耳の前庭機能低下例が11例(52.4%),術後めまい無し群57例のうち,非手術耳の前庭機能残存例が41例(71.9%),非手術耳の前庭機能低下例が16例(28.1%)であった。非手術耳の前庭機能が低下している場合,術後めまいが有意に起こりやすかった(p = 0.04)。
多重検定(繰り返しの検定)の影響を考慮し,Holm法による補正を行ったところ,術前のめまい既往がある症例は少なくとも片側の前庭機能が低下している項目と(補正後p = 0.0056),術前にめまい既往があった症例は術後めまいを生じていた項目が有意差を維持した(補正後p = 0.00625)。多変量解析では年齢,性別,術前の手術耳の前庭機能低下の有無,術前の非手術耳の前庭機能低下の有無,術前のめまいの既往,電極挿入方法,電極の形状,電極先端の太さの項目を解析したところ,術前にめまいの既往があった症例で術後にめまいが有意に起こりやすかった(p = 0.023)(表2)。
| オッズ比 | 95%信頼区間 | |
|---|---|---|
| 年齢 | 0.997 | 0.964–1.031 |
| 性別 | 0.476 | 0.138–1.643 |
| 電極挿入方法 | 0.457 | 0.121–1.730 |
| 電極の形状 | 1.336 | 0.173–9.996 |
| 電極の先端の太さ | 2.265 | 0.619–8.293 |
| *術前のめまい既往 | 4.337 | 1.223–15.373 |
| 術前の手術耳の前庭機能低下 | 0.676 | 0.128–3.567 |
| 術前の非手術耳の前庭機能低下 | 2.029 | 0.363–11.351 |
* p < 0.05
当院での術後めまい発生率は24.8%であったが,CI術後のめまい発生率は報告により頻度のばらつきが認められる。海外のメタ分析によると,97件の術後めまいに関する論文のうち,術後めまいを生じた症例はなかったと報告するものや,最大では74.5%の発生率を報告しているものもあり,平均すると1,283/13,783(9.3%)に術後めまいが発生していたと報告されている11)。また,術後めまいを「診療録に記載のあったもの」や「めまいに関する質問票を用いたもの」のように術後早期からのめまいを積極的に含める場合と「CI後の平衡機能検査時にめまいがあったもの」や「めまいが遷延化したもの」のようにある程度の期間続いたものとする場合で術後めまいの頻度が変わる15)。今回の検討では,術後早期でも診療録に自覚症状として記載のあったものを術後めまいありと定義したため,これまでの報告よりも術後めまいの頻度は高くなったと考えた。
術後めまいに関連する因子を検討した結果,年齢,性別に有意差は認められなかった。
電極挿入方法について,Round window approachは外傷の少ない手術手技であり,前庭機能障害のリスクを低減できると報告されている16)17)一方,cochleostomyと比べるとわずかに術後めまい発生率が多かったと報告しているものもある18)。今回の検討では有意差は認められず,当科の過去の報告では術式によって術後の低音聴力に違いが認められたことから5),前庭に対する手術法による影響は限定的である可能性が考えられた。
電極の形状について,LW電極が前庭機能を低下させ,めまいの発生率も高いと報告されている一方19),MH電極は電極が鼓室階から基底板を貫き前庭階に挿入されるtranslocationのリスクが高く,その結果,前庭機能に影響を及ぼす可能性があるとされている20)。今回の検討では,電極の形状及び太さによる影響は認められなかった。
単変量解析および多変量解析の結果から,術前にめまい既往がある症例はCI術後にめまいを起こしやすいという結果であった。まためまい既往がある症例は術前から少なくとも片側の前庭機能が低下しているという結果となった。EikeらはCI候補者は術前にめまいの症状を呈することが多く,また術前にめまいがある患者のほうが前庭機能検査で異常所見を示すことが多かったと報告している21)。今回の検討でもCI手術症例の43.6%が片側または両側の前庭機能低下を認めた。CI候補者となる高度難聴者の前庭機能は約40~60%が高度低下や無反応を示すと報告されており1)~4),同等の結果となった。
Parmar らは前庭機能がより良好な耳にCI手術をした場合と,前庭機能が低下している耳にCI手術をした場合に術後めまいの頻度に有意差は認めなかったと報告している22)。一方,CI手術後に前庭機能が悪化するという報告はいくつか認められ,Kasperらによると,手術耳の術前と術後4か月時の前庭機能を評価した際,前庭機能低下が認められた患者の割合がvHITでは9から14%に,カロリック検査では20から52%に,cVEMPでは61から83%に増加した結果となり,前庭機能が手術前後で悪化していたと報告している13)。今回の検討ではCI術前に非手術耳の前庭機能が低下している場合,術後めまいを起こしやすいという結果であったことから,CIによる手術耳前庭機能の低下を非手術耳前庭機能が補完する能力が低いため,術後めまいが起きやすくなったと考えられる。
以上の結果から,術前のめまいの有無の聴取とCI術前に平衡機能検査を施行し,手術側だけでなく反対側の前庭機能を評価することは,術後のめまいを予測する上で重要であると考えられた。
CI術後のめまいでは,手術による骨粉などの半規管への迷入により,良性発作性頭位めまい症(BPPV)を引き起こしやすいとの報告もある23)。術後めまいを手術に伴う一過性BPPVと術後前庭機能が低下した例とを分けた解析が望ましいが,本研究では診療録からBPPVの診断は困難であったため,除外しての解析を行うことはできなかった。また本研究では長期的なめまい症状の有無やvHIT,VEMP,めまい質問票等を用いた検討は行われていない。105名というサンプルサイズは一定の統計的検出力を持つと思われるが,今後は他施設も含めたより多くの症例を含め,前庭機能検査,質問票などを用いた,多方面からのアプローチによる検討が必要であると考えられる。
1)当科でCIを施行した症例のうち,術後めまい発生率は24.8%だった。
2)年齢・性別・電極挿入方法・電極の形状・電極の先端の太さと術後めまいに有意差は認められなかった。
3)術前にめまい既往があった症例は有意に術後めまいを生じていた。また術前めまい既往のある症例は少なくとも片側の前庭機能が有意に低下していた。
4)非術側の前庭機能が低下している場合,有意にめまいが生じていた。
本論文は第83回日本めまい平衡医学会総会・学術講演会で口演し,座長推薦を受けた。
利益相反に該当する事項はない。