Objectives: Limited studies have assessed the long-term effects of middle ear pressure therapy for Meniere’s disease. This study was aimed at evaluating the 12-month outcomes of EFET01® middle ear pressure therapy in patients with Ménière’s disease or delayed endolymphatic hydrops and to analyze the reasons for treatment continuation/discontinuation by patients to obtain evidence for decision-making in clinical practice.
Methods: A total of 24 patients diagnosed as having Ménière’s disease or delayed endolymphatic hydrops who received EFET01® were included in this study. Changes in vertigo symptoms, hearing impairment, and the MRI findings of endolymphatic hydrops (EH) were assessed retrospectively before and after 12 months of treatment. Additionally, we evaluated whether the treatment was continued or discontinued by the patients and documented the reasons behind their decision.
Results: While vertigo symptoms improved significantly following treatment, the hearing level remained unchanged. Despite symptomatic improvement, only 33.3% of the patients chose to continue the treatment due to anxiety about recurrence, as there were no changes on the MRI findings of EH. The relationship between the EH findings on MRI and clinical symptoms could not be clarified.
Conclusion: EFET01® was found to be effective for improving vertigo symptoms at the end of 12 months’ treatment, but had scarce effect on the hearing levels. It is important to inform patients that treatment can be resumed if symptoms recur. Post-treatment EH alone may not be fully predictive of the treatment outcomes. Decisions regarding continuation or discontinuation of EFET01® therapy should be made with caution, taking into account both objective and individual patient preferences.
メニエール病は,誘因なく10分以上続くめまい発作を反復し,めまい発作に伴って変動する聴覚症状を有する内リンパ水腫を病態とする疾患で,本邦では2017年の診断基準に画像所見が新たに追加された1)2)。メニエール病の間歇期の治療には,保存的治療,中耳加圧治療,内リンパ嚢開放術,選択的前庭機能破壊法と段階的な選択肢がある2)。中耳加圧療法は,保存的治療と外科的治療の中間に位置する低侵襲な治療法で,海外および国内では間欠的陽圧治療器Meniett®の治療効果が報告されてきた3)4)。Meniett®では,鼓膜換気チューブを通して圧波を内耳に伝搬し,内リンパ液が内リンパ嚢に移動することでめまい症状を軽減すると考えられているが,鼓膜換気チューブ挿入術が不可欠であった5)6)。本邦では低侵襲な加圧装置として鼓膜マッサージ機を代用し,1年間の治療成績がMeniett®と同等であることが報告されたが,保険適用外であったためEFET01®が開発され,2018年に保険収載された7)8)。EFET01®の対象は,メニエール病または遅発性内リンパ水腫による難治性めまいで,めまい月発作回数から算出しためまい係数をもとに,継続の必要性を判断するが,原則治療1年後に中止とする9)。めまい再発の不安によるストレスが再発作の引き金となる可能性があるため,治療1年経過以降も6か月間程度は継続できること,寛解に至るまで36か月後まで治療継続可能なこと,寛解に至り治療を中止した後の再発時には再開が可能であることなどを説明し,患者を心理的にサポートする9)。実際の臨床現場においては,めまい症状が安定していても本治療の継続を患者が強く希望するために中止時期の判断に苦慮することも多く経験する。
本研究では,本学順天堂医院での中耳加圧療法実施例における治療12か月後の治療効果と内耳造影MRIでの内リンパ水腫像の変化の検討,さらに12か月以上の長期使用例の実態を調査することを目的とした。
2021年1月から2024年10月までに順天堂医院耳鼻咽喉・頭頸科めまい外来を受診した患者のうち,保存的治療に抵抗してめまい発作を繰り返す難治性メニエール病確定診断例・確実例または遅発性内リンパ水腫確実例で,中耳加圧療法を実施した58例のうち,治療開始12か月後に効果判定し得た24例を対象とし,後ろ向きに調査した。中耳加圧療法の適応は中耳加圧装置適正使用指針に従い,中耳加圧装置(EFET01®,第一医科株式会社)を1回3分間,1日2回在宅で使用した9)。患者にめまい日誌を渡し,治療前と治療12か月後でのめまい症状,聴力,内耳造影MRIの3つの項目を評価した。
めまい日誌では,めまいレベル,自覚的苦痛度,活動レベルを記入した(0:めまいなし,1:軽度めまい,2:中等度めまい,3:激しいめまい,4:経験のない強さ)10)。めまい発作に対する治療効果は,治療前後の月平均めまい発作回数から算出しためまい係数を用いて評価した(めまい係数=治療後の月平均めまい発作回数÷治療前の月平均めまい発作回数×100,0:著明改善,1~40:改善,41~80:軽度改善,81~120:不変,121~:悪化の5段階評価)10)。治療効果判定は,めまいに対する治療効果判定基準案(1993)に準拠して行った10)。めまい発作の評価期間は,治療開始前6か月間と治療開始後12か月間とした。また,治療を24か月以上継続した症例では,治療開始後19か月から24か月までの6か月間におけるめまい発作を評価期間とした。
聴力障害の評価は,純音聴力検査の4分法での患側の平均聴力閾値を評価した(10 dB以上の改善:改善,10 dB未満の変動:不変,10 dB以上の増悪:悪化)10)。
内耳造影MRIでの内リンパ水腫は,前庭では内外リンパ腔に対する内リンパ腔の面積割合を評価し(水腫なし:面積比が3分の1以下,軽度水腫:3分の1以上,2分の1以下,著明水腫:2分の1以上),蝸牛も3段階で評価した(水腫なし:ライスネル膜の偏位がなく全体が造影,軽度水腫:蝸牛管の面積が前庭階の面積を超えず,蝸牛の一部が凹み黒く抜けてみえる,著明水腫:蝸牛管の面積が前庭階の面積を超え,蝸牛の内リンパ腔が明瞭に黒く抜けてみえる)11)12)。次に前庭と蝸牛のいずれかでの評価が1段階以上変化した場合を,有意な変化と判定した。MRIの評価は耳鼻咽喉科医,耳鼻咽喉科専門医,放射線科専門医の3名が盲検下に独立して実施した。
聴力障害と内耳造影MRIでの内リンパ水腫の評価は,治療前1か月と治療開始12か月後を後ろ向きに比較し,統計学的解析を行った。統計解析にはBellCurve for Excelを用い,有意水準は5%(p < 0.05)に設定した。
また,治療前後での内耳造影MRI実施例では,治療後のMRIの結果説明時に患者に継続と中止の選択肢を提示し,治療継続有無の希望について理由を含めて聴取した。
本研究は,ヘルシンキ宣言ならびに文部科学省・厚生労働省が定める「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守するとともに,順天堂大学倫理委員会の承認のもとに行った(承認番号:E24-0496-H01)。
最終的に,24例(58.4 ± 14.4歳(平均±標準偏差),男性12例,女性12例,治療期間484[387, 594]日(中央値[四分位範囲])を評価した。このうち治療前後で内耳造影MRIを施行した症例は15例(59.1 ± 15.7歳,男性8例,女性7例)であった(表1)。
| 中耳加圧療法(全体) | 治療前後での内耳造影MRI実施例 | |
|---|---|---|
| 症例数(人) | 24 | 15 |
| メニエール病(人) | 23 | 15 |
| 遅発性内リンパ水腫(人) | 1 | 0 |
| 男/女 | 12/12 | 8/7 |
| 年齢(歳) | 58 ± 14.4* | 59.1 ± 15.7* |
| 患側 右/左/両側 | 8/15/1 | 5/10/0 |
| 治療期間(日) | 484[387–594]** | 471[398–535]** |
*平均±SD
**中央値[四分位範囲]
めまい係数では,改善が11例(45.8%),軽度改善が9例(37.5%),不変が4例(16.7%),著明改善と悪化の症例は認めず,軽度改善以上の割合は全体の84%であった(図1A)。一方,聴力は24例25病側のうち,改善が2病側(8%),不変が19病側(76%),悪化が4病側(16%)で,改善の割合は全体の8%であった(図1B)。めまいの評価項目(月平均めまい発作回数,めまいレベル,自覚的苦痛度,活動レベル)ではいずれも有意な改善を認めたが,平均聴力閾値では有意差を認めなかった(p < 0.05)(表2,図2)。

A 中耳加圧療法のめまいに対する効果判定。軽度改善以上の割合は83.3%。B 中耳加圧療法の聴力障害に対する効果判定。改善の割合は8%。
| n = 24 | 治療前 | 治療後 | p | |
|---|---|---|---|---|
| めまい | めまいレベル | 0.82[0.24–1.22] | 0.23[0–0.745] | 0.008 |
| 自覚的苦痛度 | 1.16[0.56–1.46] | 0.35[0–1.008] | 0.005 | |
| 活動レベル | 0.50[0.22–1.38] | 0.15[0–0.66] | 0.004 | |
| めまい月発作(回) | 6[3.75–16.2] | 1[0–11] | 0.001 | |
| 聴力 | 聴覚(dB) | 45[35–61.3] | 50[33.8–60] | 1.525 |
めまいの各項目でいずれも有意な改善を認めたが,聴力の有意差は認めなかった(Wilcoxsonの符号付き順位検定)。

治療前後で内耳造影MRIを実施した15例について,図3に示す。水腫像が改善していたのは3例(治療前後でMRIを実施したうちの20%)で,水腫像が不変であったのは12例(80%)であった。水腫像が改善した3例は全例でめまい係数の改善がみられ,うち2例(13.3%)は症状が軽快したため治療開始12か月後の時点で治療を中止した。1例(6.7%)はメニエール病に対する内服薬を併用していたためEFET01®の中止に抵抗があった。しかし,内服漸減後も症状増悪を認めなかったため,最終的に治療開始855日後に中耳加圧療法を中止した。

水腫像の改善を認めなかった12例(80%)のうち,めまい係数が改善したのは9例(60%),不変3例(20%)であった。めまい係数で改善がみられた9例(60%)の中で,再発を懸念して治療継続を選択したのは7例(46.7%)であった。治療を継続した7例中2例(13.3%)ではめまい発作の再燃なく経過したため,最終的に中耳加圧療法を中止した。めまい係数も水腫所見も改善を認めなかった3例(20%)は,EFET01®導入時にはめまい症状が軽度であった症例が多く,めまい係数では改善の評価には至らずとも自覚症状では軽快を認めている例が多かった。一層の症状改善を希望したため治療を継続したが,1例(6.7%)は治療効果判定以降のめまい症状の改善を実感できず治療を中止とし,内服加療のみを継続した。残る2例(13.3%)はEFET01®中止によるめまい症状増悪への懸念から治療継続を選択した。
中耳加圧療法のめまいに対する治療効果をめまい係数で評価した過去の報告では,治療開始4か月後で軽度改善以上の割合は79.6%,12か月後では93%と,いずれも高い改善率が示されている13)14)。一方,本研究では治療開始12か月間または24か月後間の治療で軽度改善以上を認めた症例は83.3%であり,過去の報告と矛盾しない結果を得られた。
中耳加圧療法が聴力に及ぼす影響についてはいくつかの報告があり,Meniett®による平均18か月の追跡調査では,大多数のメニエール病において聴力変化を認められていない15)~17)。EFET01®の前身である鼓膜マッサージ機による治療において,治療開始1年後で評価判定した研究では,聴力の増悪や変動は認められず,改善効果も認められなかった7)。そしてEFET01®による聴力への治療効果について,聴力障害の改善は報告されていない18)。本研究においても中耳加圧療法前後の患側聴力の改善は認めず,中耳加圧療法による聴力障害の改善は期待できないことが示唆された。
メニエール病の病態は内リンパ水腫とされる19)。世界的には1995年に作成されたAAO-HNS(American Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery)の診断基準が長年にわたり用いられており,この基準ではcertain(確実)例,definite(確定)例,probable(可能性が高い)例,possible(可能性あり)例に分類されている20)。このうちcertain例は側頭骨病理組織検査で内リンパ水腫を認めた例と定義されていたので,臨床上の有用性は乏しかった20)。近年本邦では造影MRIによる内リンパ水腫の可視化技術の研究が進み,2017年に診断基準が改定され,内耳造影MRIが確定診断に必須の項目として位置づけられた21)。これまでの報告では,保存的治療によるMRI上の内リンパ水腫の改善と臨床症状との相関が報告されている22)23)。中耳加圧療法による水腫像への影響を検討した過去の報告では,前庭でELS率(内耳体積÷内リンパ腔容積×100)の有意な減少が示されていたが,報告数は少ない24)。本研究で盲検下に複数の解析医にて実施した16例においては,12か月間の中耳加圧療法後に内リンパ水腫像の明確な改善は認められなかった。ただし当院での水腫の評価は評価者の主観に依存しており,正確な検討が困難であった。また本研究では,前庭と蝸牛で分類をしておらず,また段階を超えた変化のみを有意と判定したため,水腫の改善を過小評価している可能性も否定できない。
EFET01®を12か月以上継続した場合の,治療継続・中止に関する判断理由を調査した過去の報告はない。本研究では,めまい係数の改善を認めた12例中9例(75%)で治療を継続していた。中耳加圧装置の供給に限りがあり,当院でも通常,中耳加圧療法の導入決定から実際の導入まで数か月を要するため,的確な診断と適応の見極め,そして適切な治療管理が求められる。
EFET01®中止後の再発への不安から中止に踏み切れない症例に対しては,内服薬を段階的に漸減し,再発がないことを確認したうえで中耳加圧療法を中止することが有効な選択肢であると考える。また,めまい係数では改善がみられる一方,画像上は水腫の改善を認めない症例の多くが治療継続を選択していた。画像所見に改善がみられないことが再発への不安を助長し,中止の判断を困難にしていると考える。なお,当院でEFET01®を中止した症例で,現時点でメニエール病の再発は確認されていない。また,再発時にはEFET01®を再開することも可能である。めまいの再発への不安が精神的ストレスとなり,その懸念が発作の引き金となる可能性もあるため,中耳加圧療法の再開が可能であることをあらかじめ患者に説明し,安心感を与えたうえで,慎重に中止を促す必要があると考える。
本研究にはいくつかの限界がある。第一に,症例数が少ないことが挙げられる。また,めまい発作回数を後ろ向きに推定しており,診療録や日誌記載の不均一性による影響を否定できない。めまい日誌は患者の主観に依存する指標であるが,全症例に同一基準を適用し,評価期間を統一することで影響の最小化を図った。治療後の再発有無に関しても,EFET01®終了後に再発した症例が他院を受診していた場合,経過を把握できていない可能性がある。また,内耳造影MRIの水腫評価については,専門医による盲検評価を行い,主観的バイアスの軽減に努めたが,定量的評価が望まれる。今後は,より多くの症例を対象とした前向き研究を行い,治療成績の更なる検証が求められる。
メニエール病および遅発性内リンパ水腫に対して12か月以上EFET01®を継続した症例を対象に調査した。前庭症状の有意な改善を認めたが,蝸牛症状の有意な変化は認めなかった。めまい症状が改善しても,MRIでの内リンパ水腫像の変化が認めない例は患者自身がめまい再発への不安感からEFET01®の継続を希望する例が多かった。EFET01®を中止する際は,再発時に治療の再開が可能なことを患者に説明したうえで,個々の症例に応じた治療方針を慎重に検討する必要がある。
利益相反に該当する事項はない。