2026 年 85 巻 3 号 p. 134-142
Background: Collaboration between otolaryngologists and psychiatrists is essential in managing dizziness, especially when psychiatric comorbidity is suspected. However, the referral criteria and shared clinical understanding remain unclear. We surveyed psychiatrists to clarify their perspectives to facilitate interdisciplinary collaboration.
Methods: An anonymous questionnaire was distributed to 71 psychiatrists in Saitama City. The questionnaire items included the frequency of dizziness encountered in psychiatric outpatient settings, associated psychiatric diagnoses, referral indications to the department of otolaryngology, criteria for psychiatric consultation in otolaryngology patients, and awareness about Persistent Postural-Perceptual Dizziness (PPPD).
Results: A total of 23 psychiatrists (32.4%) responded to the questionnaire survey. Most had over 20 years of experience and worked mainly in outpatient settings. The questionnaire responses indicated that anxiety, mood, and bodily distress disorder were the psychiatric symptoms most commonly associated with dizziness. Referrals to otolaryngology were infrequent and mainly prompted by suspected peripheral vestibular disorders; 65% referred patients when no clear psychiatric pathology was identified. Conversely, over 80% of respondents recommended psychiatric consultation for otolaryngology outpatients with persistent insomnia, appetite loss or functional impairment despite minimal objective findings. Awareness of PPPD was limited among psychiatrists, with only 30% familiar with its diagnostic criteria or treatment.
Conclusion: Although psychiatrists frequently encounter patients complaining of dizziness, structured collaboration with otolaryngologists remains limited. Clarifying referral criteria and fostering shared clinical understanding may improve coordination between the two fields and the quality of dizziness care.
めまい疾患は不安症やうつ病などの精神疾患の併存が多いことが報告されている1)~6)。精神疾患の併存が疑われるめまいの患者に対しては耳鼻咽喉科・精神科が協働して診療にあたる体制が望ましい。しかし実臨床では,耳鼻咽喉科医は患者のどのような症状・背景因子をもって精神科紹介の適応と判断すべきか判断に迷う場面も少なくない。さらに,慢性めまいとして頻度の高い持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)7)は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬が有効とされているが8),抗うつ薬の処方経験が少ない耳鼻咽喉科医にとっては,精神科医に診療を依頼する場合も少なくないと考えられる。英国のめまい診療に携わる医療者を対象とした調査では,前庭障害の治療に際し,心理的側面への対応に対する自信不足および専門家への紹介プロセスの課題が報告されている9)。
一方,精神科外来におけるめまい症状の位置づけや耳鼻咽喉科への紹介実態,PPPDについての認知度や理解度については,これまで体系的に検討された報告は乏しい。
円滑な医療連携を構築するためには,耳鼻咽喉科医側の課題を明らかにすることと,精神科医側の認識や診療実態を把握することが不可欠である。そこで本研究では,めまい診療における耳鼻咽喉科・精神科間の連携を促進するための基礎調査として,精神科医を対象としたアンケート調査を実施した。
本研究は,精神科医を対象とした無記名自記式アンケート調査である。さいたま市内の精神科または心療内科を標榜する医療施設(市中病院9施設,診療所41施設)に勤務する医師71名を調査対象とした。アンケートを郵送により配布し,回答は無記名で回収した。目白大学医学系研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:23医-023)。
急性めまいや反復する発作性めまいは耳鼻咽喉科へ紹介されることが多く,慢性めまいについては精神科診療の中でも対応に苦慮する場面が少なくないのではないかという,筆者らの臨床経験に基づく問題意識を出発点として,設問を作成した。そのため「めまい」の定義は,回転性めまい,浮動感やふらつきなど,広く含むことを明記した。
回答者の属性として,年齢,臨床経験年数,主な勤務先,専門医資格の有無を取得した。めまいに関する認識や診療実態を把握するため,精神科診療におけるめまい症状のある患者の割合,関連する精神疾患,耳鼻咽喉科および精神科間の紹介判断,PPPDに関する認知度および治療経験に関する質問を設定した。精神疾患名は分類体系を規定せず自由記載とし,筆者らがICD-11の疾患概念に基づいて再整理・集約した。アンケートの設問内容の詳細を表1に示した。
| 1.先生ご自身についてお伺いいたします。 |
| 年齢 |
| ◯20代 ◯30代 ◯40代 ◯50代 ◯60代 ◯70歳以上 |
| 医師(臨床医)としての経験年数 |
| ◯5年未満 ◯5~10年未満 ◯10~20年未満 ◯20年以上 |
| 精神科専門医 (◯資格あり ◯なし) |
| 心身医療専門医(◯資格あり ◯なし) |
| 心療内科専門医(◯資格あり ◯なし) |
| 主な勤務先 |
| ◯診療所(無床) ◯診療所(有床) ◯市中病院 ◯大学病院 ◯その他 |
| 2.貴院を受診する患者様(直近3ヶ月間)についてお答えください。 |
| ※「めまい」の定義にはぐるぐる回る回転性のめまい以外にも,ふわふわする浮動感や体や足元の安定しない感じ,歩行時や動作時のふらつきなども含んでいます。 |
| 1)患者さんの主訴や副訴でめまいはどれくらいを占めていますか |
| 主訴がめまい(主な訴えが「めまい」である) |
| 0% 50 100% |
| ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ |
| 副訴がめまい(訴えの一つに「めまい」が含まれている) |
| 0% 50 100% |
| ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ |
| 2)めまい症状のある患者さんの精神科領域疾患名のうち多い順に3つ教えてください。 |
| 1. |
| 2. |
| 3. |
| 3)めまいの患者さんのうち耳鼻科の受診を勧める頻度はどれくらいですか |
| 0% 50 100% |
| ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ |
| 4)どのようなめまいの時に耳鼻科の受診を勧めていますか(複数回答可) |
| □めまい以外に精神科疾患を疑う症状がない |
| □難聴など耳の症状がある |
| □ぐるぐる回るようなめまいである |
| □頭や体の位置を変えた時のめまいである |
| □過去に「メニエール病」・「良性発作性頭位めまい症」など内耳・前庭疾患の既往がある |
| □耳鼻科を勧めることはほぼない |
| □その他( ) |
| 5)耳鼻科を受診中のめまいの患者さんにどのような症状があるときに,精神科・メンタルクリニックや心療内科の受診を勧めるべきだと思いますか。(複数回答可) |
| □不眠や食欲不振が続く時 |
| □HADS,STAIやSDSなどの質問紙の得点が高い時 |
| □他覚的所見が明らかではないのに日常生活や社会参加に支障をきたしている時 |
| □破局的な思考である時 |
| □その他( ) |
| 6)持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)という慢性めまい疾患を存知ですか。 |
| ○実際に治療をおこなっている |
| ○治療経験はないが,診断基準や疾患について知っている |
| ○詳しくは知らない |
| ○全く聞いたことがない |
| 6-1)実際に治療をおこなっていると回答した方 |
| 過去1年間の症例数: 例 |
| 6-2)治療内容(複数回答可) |
| □診断および治療をおこなっている |
| □耳鼻科からSSRI・SNRIの投薬依頼を受け,治療経験がある |
| □耳鼻科から心理療法(カウンセリング・認知行動療法)の依頼を受け,治療経験がある |
| □その他( ) |
| アンケートは以上です。ご回答ありがとうございました。 |
23名(有効回答率32.4%)の回答があった。年齢は60代が9名(39%)と最も多く,19名(83%)が臨床経験年数20年以上であった。20名(87%)が精神科専門医,3名(13%)が心身医療専門医の有資格者であった。18名(78%)が無床の診療所,5名(22%)が市中病院勤務であった。
①精神科を受診している患者のめまい症状についてめまいを主訴とする患者の割合は中央値10%(四分位範囲[interquartile range: IQR]0–10%),副訴としてめまいを認める患者の割合は中央値20%(IQR 10–30%)であった(図1)。

めまいを主訴とする患者の割合の中央値は10%,副訴としてめまいを認める患者の割合は中央値は20%であった。
めまい症状のある患者の精神科の疾患名は不安または恐怖関連症群(「不安症」「不安障害」「パニック障害」などの記載)が最も多く,気分症群(「うつ病」の記載),身体的苦痛症(「身体表現性障害」の記載)の順であった(図2)。

めまい症状のある患者の精神科の疾患名として多いものを3つ回答してもらった。うつ病,全般不安症,身体的苦痛症の順で多かった。
精神科の患者にめまいのために耳鼻咽喉科受診を勧める頻度は0~10%が最も多かった。3名と少数ではあるが,80%以上と回答した精神科医もみられた(図3)。また,耳鼻咽喉科受診を勧める症状として,70%以上の精神科医は,「聴覚症状がある」,「頭位や体位変換時のめまい」,「回転性めまい」,「内耳前庭疾患の既往がある」と回答していた。「精神疾患を疑う所見がない」場合には65%の精神科医が耳鼻咽喉科を勧めると回答した(図4)。

精神科医がめまい症状のある患者に耳鼻咽喉科の受診を勧める割合は0~10%が最も多かった。

70%以上の精神科医は「聴覚症状」,「頭位性・体位変換時のめまい」,「回転性めまい」,「内耳・前庭疾患の既往」がある場合は耳鼻咽喉科受診を勧めると回答した。また,65%の精神科医は「精神疾患を疑う所見がない」場合には耳鼻咽喉科受診を勧めると回答した。複数選択可。
80%以上の精神科医は,耳鼻咽喉科受診中のめまい患者に「不眠や食欲不振が続く時」や「他覚的所見が明らかではないのに日常生活や社会参加に支障がある」場合は精神科の受診を勧めるべきと回答した。約半数が「破局的思考である」「Hospital Anxiety and Depression Scaleなどの自記式質問紙の得点が高い」場合に精神科受診を勧めると回答した(図5)。

80%以上の精神科医が「不眠や食欲不振が続く時」や「他覚的所見が明らかではないのに日常生活や社会参加に支障がある」場合は精神科に紹介すべきと回答した。複数選択可。HADS:Hospital Anxiety and Depression Scale, STAI:State Trait Anxiety Inventory, SDS:Self-rating Depression Scale
PPPDの「治療経験がある」と回答した精神科医は1人(4%)のみであり,耳鼻咽喉科よりSSRIなどの投薬を依頼されていた。26%の精神科医が「診断基準や疾患を知っている」と回答した。半数以上がPPPDについて「詳しくは知らない」と回答した(表2)。
| 認知度 | 診療内容 | 回答した医師数(%) |
|---|---|---|
| 実際に治療を行なっている | 耳鼻咽喉科からSSRI・SNRIの投薬治療の依頼を受けた | 1(4) |
| 治療経験はないが診断基準や疾患を知っている | 6(26) | |
| 詳しくは知らない | 13(57) | |
| 全く聞いたことがない | 3(13) |
SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬,SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
本研究では,精神科外来において,めまいが主訴または副訴に含まれる患者は約30%を占めていた。一方で,めまいを理由に耳鼻咽喉科受診を勧める頻度は低く,約半数の精神科医が10%以下と回答した。この結果は,精神科診療においてめまいは一定の頻度でみられる症状であるが,耳鼻咽喉科への紹介は選択的に行われている可能性を示している。
精神科医は,メニエール病や良性発作性頭位めまい症(BPPV)などの発作性めまい症状に対しては耳鼻咽喉科受診を勧める傾向がみられた。また過去の報告5)と同様に,めまい症状を有する患者に多い精神疾患として,不安または恐怖関連症群,気分症群,身体的苦痛症が挙げられており,精神科医がめまい症状を不安や抑うつ,身体化と関連づけて理解している可能性が示唆された。一方で,「精神疾患を疑う所見がない」場合にも耳鼻咽喉科受診を勧めると回答した精神科医が一定数存在しており,精神科医が鑑別診断の一環として耳鼻咽喉科連携を意識している実態もうかがえる。慢性めまいを呈する疾患として前庭代償不全やPPPDが存在することについて,今後さらなる周知を図ることが,両科の適切な紹介判断および診療連携の質の向上につながると考えられる。
本研究では,多くの精神科医が耳鼻咽喉科受診中のめまい患者に対して精神科受診を勧めるべき症状として,「不眠や食欲不振」や「他覚的所見が明らかではないのに日常生活や社会参加に支障をきたしている」と回答した。これらの症状は耳鼻咽喉科医による問診でも比較的把握しやすく,精神科紹介の判断材料として実用性が高いと考えられる。特にメニエール病,前庭性片頭痛,良性発作性頭位めまい症などの発作性めまい疾患では,うつ病や不安症が高頻度に併存することが報告されている10)。また,入院治療を要した末梢性めまい患者では,診断後2年以内のうつ病(ハザード比[hazard ratio: HR]2.91)および不安症(HR 4.92)の発症リスクが対照群と比較して有意に高いことも示されている11)。以上の知見を踏まえると,耳鼻咽喉科医は精神症状を積極的に評価し,本研究で示された精神科紹介適応に該当する症状が認められる場合には,精神科受診を勧めることが重要である。さらに,看護と精神科医療を統合した学際的介入モデルでは,看護師が精神症状のスクリーニングや精神科受診支援を担い,精神科医を診療体制に組み込むことによりDizziness Handicap Inventoryの改善が報告されている12)。これはチーム医療の有効性を示唆するものであり,多職種を含めた実践的な連携体制の構築が求められる。
PPPDは,急性めまいや発作性めまいの約25%に発症し,中年女性に多いと報告されている3)。罹患期間が長くなるほど不安・抑うつが増悪し,生活機能の低下も顕著となるため,PPPDの早期の診断と治療開始が必要である13)。本研究では精神科医のPPPD認知度は必ずしも高くなかった。PPPDについて「診断基準や疾患概念を知っている」と回答した精神科医は約4分の1にとどまり,治療経験があると回答した者はごく少数であった。しかし,疾患名として明確に認識されていなくても,うつ病や身体的苦痛症などの診断で加療されている可能性がある。PPPDには精神疾患の併存の有無にかかわらず,SSRIなどの抗うつ薬が有効とされている8)。薬物療法は耳鼻咽喉科医が行う場合と精神科医に依頼する場合のいずれも想定されるが,診療体制に応じた柔軟な連携が望まれる。投薬治療を精神科医に依頼した場合でも,めまい症状の評価については耳鼻咽喉科医が継続的に関与することが,患者の安心感や満足度の向上につながると考えられる。また,認知行動療法14)15)や前庭リハビリテーション16)17)など薬物療法以外の治療選択肢を提案することも重要である。
本研究にはいくつかの限界がある。第一に,先行研究が乏しい領域における探索的調査であり,筆者らの臨床経験に基づく問題意識からアンケートの設問を作成した点である。そのため,設問内容や選択肢が限定的であり,一定の誘導性を含む可能性は否定できない。第二に,アンケート調査のため想起バイアスの影響を受ける可能性がある。直近3か月の外来患者について回答を求めたが,カルテの参照を依頼したわけではなく,回答者の印象に依存している。第三に,回収率が32.4%と高くない点が挙げられる。また,回答者は臨床経験20年以上の医師が多く,若手医師の認識や対応が十分に反映されていない可能性がある。その一方で,長年の臨床経験を有する精神科医の実感や判断が集約されている点は,本研究の特徴であり,探索的研究として一定の意義を有すると考える。
精神科医のめまい症状への認識と対応を明らかにすることを目的として調査を実施した。本研究の結果は,精神科医と耳鼻咽喉科医の役割分担や連携のあり方を検討する上での基礎的資料となると考えられる。今後は,診療科横断的な教育や情報共有の枠組みを含め,めまい患者に対するより適切な診療体制の構築が求められる。
アンケート調査にご助言をいただいたメンタルクリニック美波 院長 七条敏明先生に深謝いたします。
本研究は令和5年さいたま市地域医療研究費補助金の助成により行われた。
本研究の要旨は第125回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会総会・学術講演会(2024年5月),第15回日本耳鼻咽喉科心身医学研究会(2024年10月)にて発表した。
利益相反に該当する事項はない。