魚病研究
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鹿児島県内における養殖カンパチの眼球炎の発生傾向について
柳 宗悦前野 幸二今岡 慶明嶋原 佳子三輪 理大迫 典久
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2015 年 50 巻 1 号 p. 29-32

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抄録

2010年頃から南九州や西四国を中心に,養殖カンパチにおいて眼球 (左右どちらかの片眼が多い傾向) に白濁・出血・欠損・潰瘍・乾酪化を呈する疾病が,夏季の高水温期を中心に多発するようになった。鹿児島県の2010年4月から2014年3月の魚病診断データから,本症が年々増加傾向にあること,天然・人工の種苗の由来にかかわらず発生すること,当歳魚に多く発生する傾向にあることが確認された。さらに,水温が高い7月から11月にかけて多く確認され,Neobenedenia girellaeの多発時期とほぼ一致する傾向にあった。また,病理組織観察,電子顕微鏡観察から,眼球が外部から何らかの物理的障害を受け,養殖場内の各種細菌が外部から眼球内に侵入して炎症反応を起こし,乾酪化を引き起こしているのではないかと推察された。本症は養殖カンパチの商品価値の低下を招き,産業的に大きな問題となっていることから,早急な原因解明と対処法の技術開発が望まれる。

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© 2015 日本魚病学会
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