鏡川の天然アユ,ダム湖産アユ,放流アユを対象にして,TaqMan-PCR法で冷水病菌の感染状況を調査した。本菌陽性となった外見上正常なアユの割合は鏡ダム下流の天然アユと放流アユ間,上流のダム湖産アユと放流アユ間でともに明確な差はなかったが,冷水病で死亡したアユのほとんどは放流アユであった。発症アユも含めて,それらのアユで検出された冷水病菌は主にA/G-C型と判別された。鏡ダム上流において2地点でアユ漁解禁前の6月に保菌アユが確認され,そのうち1地点のアユでのみ2年間A/G-T型が検出されたことから,冷水病菌の周年定着が疑われた。産卵期にダム上流の産卵場で採水された河川水から高コピー数のPPIC遺伝子が検出されたことから,仔稚魚期のダム湖産アユが河川水中の冷水病菌に感染して保菌状態になる可能性が示唆された。