魚病研究
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好塩菌の薬剤耐性獲得について
窪田 三朗
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1966 年 1 巻 1 号 p. 5-9

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抄録

 近年養殖魚の細菌性感染症が増加し,それにともなってサルファ剤,ニトロフラン系薬剤および各種抗生物質が予防や治療の目的で使用されている。たとえば,東海各地の養鰻業者は毎年3~5月に発生する水生菌病(第一次感染菌はグラム陰性細菌)の予防・治療にサルフア剤添加餌料を連続投与することによってその目的を果していたが,本年になってサルファ剤の効果が小さくなったり,全く認められない場合が出てきている。同様なことが各地の海産蓄養稚アユ,ハマチ,フグなどの場合に知られている.薬剤の乱用は一時的に予防・治療効果があがってもその後の魚病対策を困難にする.また,ノリ漁場に発生する病害対策として抗生物質などが散布されているが,その海域で採捕され,蓄養されている種苗魚に発生する細菌感染症は特になおりにくい傾向があるといわれる.これの事実は人体に抗菌性薬剤を連続投与した場合にしばしば耐性菌が現れることとよく似た現象であり,魚族に対する感染起炎菌も薬剤耐性を獲得することを示唆している.水族館では病魚を治療しょうとして,過去に無計画な薬剤投与を行なっている場合が多いので,飼育されている魚に細菌感染症が発生すると薬剤による治療がむつかしい.その原因も起炎菌が多数の薬剤に対して耐性を備えているためと考えられる.これらの点に鑑み,まず魚類病原菌の一つである好塩ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus, biotype I,II,III)について増量継代法で数種の薬剤に対する試験管内での耐性の上昇と耐性獲得菌の交叉耐性獲得の有無について検討した.

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© 日本魚病学会
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