抄録
1985 年 4月, 香川県内の一種苗生産場のヒラメ稚魚に累積へい死率が約 50 %に達する疾病が発生した。瀕死魚の外部所見は腹部膨満, 鰓の貧血, 肛門の発赤などで, 内部所見は肝臓のうっ血, 腸の発赤などであった。細菌, ウイルスおよび寄生虫学的検査はいずれも陰性であった。病理組織学的検査の結果, 特徴的病変は心房内に形成された血栓および心筋の変性であったことから, 死因は何らかの原因で心房筋に変性が生じ, 次いで心房内に除々に血栓が形成され, やがて全身状態が悪化したためと判断した。