抄録
1990年8月と9月に広島県および徳島県下で種苗生産過程のキジハタ仔稚魚に大量にへい死が発生した。病魚は旋回等の異常行動を示し, 組織学的には脳および眼の網膜組織に細胞の壊死・崩壊による大型の空胞形成が認められた。それらの細胞の細胞質には正六角形でエンベロープをもたない直径約28nmのウイルス粒子が濃密に存在した。病魚の磨砕濾過液を用いた感染実験により正常なキジハタ(全長82mm)に同一の症状が再現されたことから, 本病はウイルス性疾病えあると判断された。原因ウイルスの分類学的位置は不明である。