家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
特集:わが国の家族性腫瘍の診療:未来への提言
多発性内分泌腺腫瘍症2 型の診療における 国内の現状と問題点
内野 眞也松本 佳子伊藤 亜希子渡邊 陽子脇屋 滋子首藤 茂塚谷 延枝
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2016 年 16 巻 1 号 p. 6-10

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抄録
多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia: MEN)2型は甲状腺髄様癌・褐色細胞腫・副甲状腺過形成を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患である. 家族性甲状腺髄様癌(familial medullary thyroid carcinoma: FMTC)は家系内に髄様癌だけが見られるMEN2Aの亜型である.原因遺伝子は染色体10q11.2に存在するRETがん遺伝子である.RET遺伝学的検査ではexon 10,11,13〜16を検索する.MEN2では,98%以上にRET遺伝子の生殖細胞系列変異が証明できる.一見散発性の甲状腺髄様癌において約10〜15%は遺伝性が証明されることから,髄様癌全症例に対してRET検査が強く推奨されており,2016年4月からRET遺伝学的検査が保険収載されることとなった.生命予後は髄様癌と褐色細胞腫により規定されるため,変異RETキャリアにおいてこれら疾患の早期発見・診断・治療が重要となる.RET検査により血縁者のキャリア診断がほぼ正確にできるため,欧米では小児に対して予防的甲状腺全摘も実施されている.しかし本邦の医療制度上,甲状腺髄様癌が未発症状態の正常甲状腺を摘出する予防的甲状腺全摘か,微小な髄様癌が既に発症している甲状腺に対する治療的早期甲状腺全摘かを明確に区別する必要がある.これまでに本邦では前者の狭義の予防的甲状腺全摘はほとんど行われていない.RET変異を有する小児に対して,手術合併症を極力なくし,予防的あるいは治療的早期甲状腺全摘術が本邦においても普及していくことが望まれる.
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© 2016 The Japanese Society for Familial Tumors
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