抄録
家族性腺腫性ポリポーシスの責任遺伝子として1991 年にAPC遺伝子が単離され,多くの症例で生殖細胞系列遺伝子変異が解析されてきた.しかし,その同定率は70%前後にとどまり,新たな責任遺伝子の存在が推測されてきた.特に大腸腺腫数の少ないattenuated case でAPC遺伝子変異の検出率が低いことが指摘されてきた.酸化によって生じる8-oxo-G を経て起こる遺伝子変異の修復に除去修復機構が関わるが,MYHはその主要分子である.MYH遺伝子の変異が100 個以下の多発性大腸腺腫患者の遺伝的原因として明らかにされた.この場合,常染色体性劣性遺伝形式で形質が伝達されることから,常染色体性優性遺伝疾患としてよく知られてきた家族性腺腫性ポリポーシスや多発性大腸腺腫例のサーベイランスプログラムを再考する必要が生じてきた.