抄録
母斑基底細胞癌症候群(NBCCS,Gorlin 症候群)は骨格を中心とする小奇形と高発癌を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である.頻度の高い腫瘍は基底細胞癌,歯原性腫瘍,髄芽腫等である.我々は診断基準を満たす症例の約90 %で責任遺伝子Pached-1 に変異を検出した.フレームシフトをおこす1 〜4 塩基の欠失・挿入が多いが,スプライス異常や遺伝子欠損といった通常の方法では見出せない変異もあった.臨床症状がそろわない小児では,倫理的配慮と遺伝カウンセリングの充実といった条件下で,腫瘍の予防,早期発見,生活指導に遺伝子診断は多くのメリットがある.