抄録
[目的] 腹腔鏡検査による外性子宮内膜症 (以下、内膜症) の確定診断後、引き続き施行した腹腔鏡直視下保存手術の成績を、卵管癒着の程度と卵管通過性の観点から解析し、内膜症に対する腹腔鏡直視下手術の適応と限界について検討した。
[方法] 1989年1月より1994年12月までに挙児希望にて当科を受診し、腹腔鏡検査を施行した137例を対象とした。内膜症の臨床進行期の診断はR-AFS分類で行った。腹腔鏡直視下保存手術の基本術式としては、腹水除去、内膜症病巣焼灼術、チョコレート嚢胞摘出術、癒着剥離術などを施行した。卵管癒着のない癒着 (―) 群と、卵管癒着を認め直視下保存手術後の左右の卵管通色素検査の結果から両側卵管通過性良好 (A群) 、一側の卵管通過性良好 (B群) 、両側卵管通過性不良 (C群) ならびに両側卵管閉塞 (D群) の5群に分類し、卵管癒着スコアならびに妊娠成績について検討した。
[結果] (1) 腹腔鏡検査施行137例中73例 (53.3%) に内膜症が認められた。術後73例中29例 (39.7%) に妊娠が成立した (待機妊娠20例、IVF-ET9例) 。 (2) 臨床進行期別の内訳はI期16例、II期6例、III期20例、IV期31例であった。平均卵管癒着スコアは臨床進行期に比例して高値であったが、III期、IV期症例の中にも卵管癒着スコア低値の症例を認めた。臨床進行期別の妊娠成績には、有意差は見られなかった。 (4) 癒着 (―) 群の待機妊娠率は40.0%で腹腔鏡直視下手術は有用であった。 (3) 卵管癒着C群、D群ならびに卵管癒着スコア24点以上では術後待機妊娠はなく、卵管癒着スコア20点が待機妊娠成立の限界であった。
[考察] 不妊を主訴とする内膜症に対する腹腔鏡直視下手術の有用性が再確認された。しかし、卵管癒着スコア24点以上の高度卵管通過障害は、腹腔鏡直視下手術の限界で、治療の変更が必要であると考えられた。