抄録
昭和57年より不妊症症例を中心に腹腔鏡を実施してきたが、今回は平成2年より平成11年までの期間の当教室の臨床統計をおこなった。この10年間にて腹腔鏡を実施した症例数は年間ほぼ50-80例と一定しており、総数629例であった。それは、その間の全手術数3784例の16.6%となった。その内訳は、腹腔鏡検査376例、付属器腫瘍手術80例、子宮外妊娠手術53例、子宮付属器癒着剥離術47例、LAVH29例等であった。対象症例では、不妊症423例、良性卵巣腫瘍82例、子宮外妊娠53例、子宮筋腫35例、子宮内膜症16例、その他 (原発性無月経、精巣性女性化症など) 14例となっていた。治療目的での腹腔鏡の実施割合は腹腔鏡総数の24.7%であったが、その割合は平成2年から平成5年までは平均12.1%であったものが、保険適応の拡大が実施された平成6年より平成10年では57.8%となった。この間に重篤な合併症として腸管損傷が3例認められたが、それ以外重篤な合併症は認められなかった。手技としても、open法、closed法、direct法と変遷し、腹腔鏡挿入部も当初は臍下だけであったが、症例により臍上からも行うようになった。また、細径の腹腔鏡も利用するようになった。今後、患者のQOLの向上を計る目的で腹腔鏡手術の適応拡大の方向で進めている。