抄録
女性の男性化徴候で頻度の高い疾患は多嚢胞性卵巣症候群であるが、稀にアンドロゲン産生腫瘍が原因のことがある。アンドロゲン産生腫瘍は主に副腎由来又は卵巣由来であるが、後者の場合その頻度は全卵巣腫瘍中0.1%未満といわれている1) 。腫瘍径が大きければ画像診断は容易であるが、2cm程度の小さな卵巣腫瘍は画像による局在診断は困難である2-8, 10) 。局在診断困難例に対するアプローチは複数報告があり、Color Doppler9) 、選択的静脈血ホルモンサンプリング5, 10) 、術中卵巣静脈血ホルモンサンプリング11) を用いたものが挙げられる。しかし、腫瘍の局在診断後、手術等で治療を行い症状 (男性化徴候、無月経等) が改善した例は複数認められるが、その後妊娠した症例に関しての報告はない。今回我々は画像診断が困難な小さなLeydig cell tumorの局在診断に選択的静脈血ホルモンサンプリングが有用であり、腹腔鏡下での腫瘍摘出後早期に妊娠に至った症例を経験したので報告する。