2023 年 6 巻 2 号 p. 15-20
高齢者の栄養管理で重要なことは,高齢者の特徴を十分に理解したうえで,患者個々に最適な栄養管理を行うことである.高齢者は低栄養のリスクが高く,軽微なことでもそれがきっかけで容易に低栄養に陥る.配慮すべき点は多々あるが,主なものとして必要栄養量と必要タンパク質(アミノ酸)量の設定が挙げられる.いずれも計算式から算出可能であるが,あくまで推定値である.また,高齢者の体がどのように反応するかもわからないため,必要に応じて適宜調節しなければならない.
高齢者の栄養管理において薬剤師が貢献できることは大きく分けて3つある.①静脈栄養(PN)での職能の発揮では,特に絶飲食時のPN組成に対して専門性を発揮しなければならない.しかし,実際の臨床で施行されているPN組成は決して優れているとはいえず,また薬剤師も専門性を発揮できていない.②経口摂取の維持では,薬剤の副作用によって経口摂取に影響が出ていないか注意を払わなければならない.実際,ほとんどの薬剤が摂食・嚥下・食欲に関する副作用を有している.そして,そういった薬剤が漫然と高齢者に処方され続けている現状もある.③低栄養リスクの早期発見では,外来通院中の患者にとって最も身近な医療従事者である薬剤師がその役割を担うべきである.
日本は超高齢化社会に突入しており,医療経済的,医療資源的にも健康な高齢者を増やす,つまり健康寿命の増進が極めて重要である.栄養は健康寿命を維持するための重要な柱である.しかし,薬剤が栄養管理の妨げとなり,結果として健康寿命の障害になっている可能性も十分に考えられ,栄養管理への薬剤師のさらなる貢献が求められる.そのためには,栄養に興味をもつ薬剤師が増えていかなければならない.
間違いなく言えることは,薬剤師は高齢者の栄養管理において極めて重要な職種である.