民族衛生
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ジヤワ島住民の体質人類學的生体測定成績
附田 鎭厦
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1950 年 17 巻 2 号 p. 34-38,A3

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抄録

ジヤワ島原住民20才以上の成人,男12825人,女1682人,外來在留民,男女2848人につき体質人類学的計測成績である.
1.從來同島住民は言語学的,文化史上に於いて,分類され,ジヤワ人,スンダ人,バタビヤ人,マドラ人の主要種族と,テンゲル人,バドイ人の小数山地住民とに区別されていた.余の本調査の結果,ジヤワ人,スンダ人,マドラ人,バタビヤ人等の主要種族は短頭中身長の同系のDeutro-Marayan種に属するものでありテンゲル人,バドイ人は長頭短身のProto-Marayan種であることが解明された.
2.身長 知識層及び義勇軍は適当な発育を遂げ長身長を現わしているが,山地住民や下層労務者は栄養不良に萎縮された体形を示し,身長の総平均は158.80糎のやや低身長であるが,義勇軍の應募者を標準とするならば,160.20糎にて,日本人の壯丁と同等な身長である.
3.幅育 身長に逆比例し,山田住民や義勇軍は平地農民や都市住民にまさり,後者は発育不全の容相を呈している.殊に体重は栄養事情に直接関係が深いため,下層労務者は隔段に低位にある.
4.体格比較 インドネシヤ原住民は,印度人,アラブ人等と共に,躯幹部に比して四肢が長い.是は熱帶の氣候や風土に適應せる体形ともいわるべく,熱帶性抵抗力に於いて寧ろ優れた体質と考えられる.
5.頭囲 インドネシヤ人は,他の諸外來種族に比して,やや小頭囲である.但し,テンゲル人は格別で,中頭囲である.頭囲は社会的生活階級によつて,差を示している.
6.頭径 ジヤワ人,スンダ人,バタビヤ人,マドラ人の主要種族は殆んど近似して,その長巾指数85内外を示し,亞細亞諸民族中に於いても最も短頭を示し,テンゲル人やバドイ人は一致して80の中位の長頭型を示している.
これにより種族差がはつきり顯われている.
7.指極指数
ジヤワ人,スンダ人,マドラ人,バタビヤ人は一致して,105.5内外を示し,テンゲル人は105.8,バドイ人は110.7の最高位を示している.
これは平地より山地に入るに從つて高まる傾向にある.
8.学生の身長は,他の文化民族の例に見る如く特に高い.而も脚が充分に伸びていることが認められる.
9.同系人種にして,それぞれの生活環境に應じ,体格並に体質に変異をきたした最もよいサンプルである.
10.日本人の体格は他の諸民族と比較して四肢が短かく躯幹部が長い.特に下肢長が短いことが分る.
備考 女子の資料はその数に於いて不充分であり,略男子のそれらと同樣の傾向にあるので,その檢討を省略したが男子資料のよい裏付となるであろう.

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