民族衛生
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長野縣上伊那郡東部住民の血液型について
福田 邦三杉浦 正輝關口 浩芦澤 美晴中畑 龍樹加藤 信男大久保 修
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1955 年 21 巻 5-6 号 p. 178-181,A13

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抄録

上伊那郡東部の平坦部たる高遠町,河南村,長藤村,及び山間部たる藤沢村,美和村,伊那里村の6ケ町村の学童3162人について,並に美和村の営林署勤務者を除いた5部落の住民について血液型を測定してつぎの結果を得た.
1.上記6ケ町村の平坦部と山間部とで,血液型比率,民族示数にかなりの差がある.また各町村間の値も一致しない.
2.美和村の5部落間の血液型分布比率,民族示数にはさらに大きい差がある.
3.いづれの町村部落の値も日本の各地方或は日本の総平均値とは一致しない.
4.各町村,部落間の血液型分布比率,民族示数に甚しい相違があるが,これは彼らの祖先の間に人種的相違があるによると考えるべきではない.同じ人種であつても血液型分布に於て一般を代表しない各極く少数の入植者が互に他の系統とあまり混交することなく当初の血液型の因子比率を維持して現在の子孫に至つたと考えるべきであろう.この想定はこの地方の結婚調査によつて証明された血族結婚,同系結婚が甚しく多いこと,及び一般に通婚圏が狹く,同部落内または同村内の結婚が圧倒的に多い事実によつて支持される.

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