民族衛生
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パプアニューギニア高地人の身体的特徴と生活環境
辻田 純三伊藤 清臣黛 誠田中 信雄堀 清記小石 秀夫
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1980 年 46 巻 1 号 p. 2-11

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抄録

 パプアニューギニア高地人の成人男子18名,日本人成人男子20名の身体計測およびパプアニューギニア現地での戸外および家屋内の環境温度の測定を行なって次の結果を得た。1)パプアニューギニア人の身長および体重の平均値は夫々,158.4cm,61.3kgで日本人の夫々の平均値,171.6cm,68.2kgより有意に小さかった。しかし,パプアニューギニア人のRohrer's indexおよびBrugsch's indexの平均値は逆に日本人の平均値より大きかった。2)パプアニューギニア人の胸囲,腹囲,上腕囲,大腿囲,下腿囲の平均値は,日本人の平均値よりやや小さいかその差はわずかであった。パプアニューギニア人の前腕囲の平均値は日本人の平均値より大きかった。パプアニューギニア人の上肢長の平均値は日本人の平均値よりわずかに小さかったが,手の長さ,下肢長,足の長さはパプアニューギニア人の方が日本人より長く,パプアニューギニア人の四肢長と身長との比は日本人の値より有意差をもって大きかった。3)パプアニューギニア人の皮下脂肪厚は日本人のそれより有意に薄かった。又,皮下脂肪厚より算出された体脂肪含有率は日本人のそれより有意に少なかった。4)パプアニューギニア人の足の形は,日本人と比べて足長に比し足巾が長く,足底面積が広く,親指と小指が長軸に対して扇形に開いており,山道の歩行に適応して変化していた。5)パプアニューギニア人のBushhouseは日本製木造家屋,スチール製建物に比べて日中の室内温が低く,環境温度の観点よりみると秀れた家である。6)パプアニューギニア人の身体的特徴は,彼等が日常生活において毎日山歩きの激運動を行なっていること,摂取カロリー量が少ないこと,および熱帯高山気候の影響によって形成されたものと思われる。

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© 日本民族衛生学会
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