民族衛生
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児童の発育と成熟に関する縦断的研究
八木 保武内ひとみ吉岡 文雄
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1987 年 53 巻 5 号 p. 247-252

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抄録

 本研究の目的は児童の身体形態・機能・運動能力等の発育過程について,個々の児童の縦断的経過を追うことである. 児童の発育を経年的に見ていくと,身長の大なるものは小なるものよりも常に大きく,双方殆んど平行して成長している.しかし,思春期に入るとこの平衡はくずれてくる.また,立幅跳の能力は身長の伸びと殆ど同様な程度で発達することにみられるように,身体機能のある面は体格の発育と同様な発達経過をたどる.そして身長の大きい児童は小さい児童よりも平均して機能もよい.初潮は身長発育スパートの後に現れる.また思春期前の児童の体格の大小はそのまま思春期の体格の大小にはつながらない. 同年齢の児童について身長の大なるものと小なるものとの間の骨成熟度の差は身長の差にみられる程ではない.身長の大きいものの骨成熟が常に進んでいるのでもなく,身長の低いものの骨成熟が常に遅れているのでもない. 骨成熟と性成熟との関連についてみると,骨成熟度(指骨)が70~80%あたりで初潮がみられている.初潮出現の頃の年齢では,骨成熟の分散は身長の分散に比べれば小さい.初潮と骨成熟との関連は,身長のごとき形態的発育との関連に比べればより生理的に密接であると言えよう.成人について身長の大小はあるが,性成熟や骨成熟の度合いは同一である. 個体には個体特有の発育の型があり,同時に一般的な発育過程も有する.そして思春期には個々により特に変化が著しい.

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© 日本民族衛生学会
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