民族衛生
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児童生徒の発育と血液性状に関する研究
2.身体発育と血色素量
木場 冨喜二塚 信永野 恵上野 達郎稲岡 司北野 隆雄北野 直子上田 厚上田 忠子有松 徳樹野村 茂
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1988 年 54 巻 3 号 p. 110-121

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抄録

 6~17歳の児童生徒(男子2,229人,女子2,158人,計4,387人)について,身体発育と血色素量との関係を検討した. 1.性・年齢別の身長・体重・胸囲・座高と血色素量との間には,相関関係が認められた.しかし,加齢という要素を除いた,同年齢内における個々の体格と血色素量との間には,相関関係は認められなかった. 2.男子の場合,6~12歳および12~17歳いずれのグループ内でも,発育と血色素量は比例していた.しかし女子の場合,身体の発育量が最大の時期に血色素量もピークに達し,その後髪育速度が遅くなるにつれて血色素量は減少した.このため女子の6~12歳では,体格と血色素量は正の相関を示したが,12~17歳では有意の負の相関を示した. 3.年間発育量のピークは,女子が男子よりも1~2年先行した.また女子の発育のピークは,女子の血色素量のピークに半年~2年先行し,身体発育が血色素量の増加を促しているようにみえた. 4.中学・高校女子の貧血者(血色素量129/dl未満者)の出現頻度は,身体発育の最大の時期に最も少ない.そして出現頻度を示す曲線は,12歳を谷とするV字型を示す.また貧血者は身長・体重の年間発育量の少ないグループが高頻度であり,発育量の大きいグループが低頻度であった.  5.発育と血色素量の関係は深いが,思春期貧血の発現機序について,初潮の発来と急速な身体発育が強調すべき根拠は得られなかった.

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