民族衛生
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大学生の足に関する観察的研究―足の外観的特徴および母趾外反角,足先の型について―
田中 洋一
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1996 年 62 巻 5 号 p. 267-284

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抄録

 足や足趾の異常については,男子に関する資料が少なく,とくに若年層男子の足の状態に関しては,その一般的傾向も十分には把握されていない.本研究では,若年層の男子の足の資料を得る一環として,外観的観察を中心に大学生の足について検討を行った.対象は神戸大学の19歳から23歳の男女学生256足(男子54名:108足,女子74名:148足)である. 結果,足の異常の有力な判断材料となる第1趾(以下“母趾”)の外反角(母趾角:hallux angle)については,女子では平均11.~15.でこれまでの報告とほぼ同様の傾向であった.男子では10.までがもっとも多かったが25.5°の外反角を最高に11.以上の対象が4割以上となった.足趾の異常で代表的な「外反母趾(hallux valgas)」の外見的な判断基準の外反角は10.から15.といわれていることから,男子においても外反母趾発生の可能性が大であると考えられた.足先の型は,男女とも約7割が母趾のもっとも長いエジプト型で,足先の型の発現頻度に大きな性差はみられなかった.また,整形外科医による足の異常の指摘率は,女子に限らず男子にも非常に高く,指摘された主な異常は,第5趾変形,母趾外反,足趾の重なりや屈曲などである.中でも足趾の屈曲は,女子より男子に指摘率が高かった.男子において靴と足趾の異常の関係をみると,大きすぎる靴を着用している対象の8割以上に母趾外反が認められ,靴の不適合の危険性がうかがわれた. 以上のことから,今後,男子においても女子と同様に足の検討が必要であると思われた.

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