植物工場学会誌
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ピーマンの結実肥大に及ぼす蛍光灯連続光と暗期中断の影響
桝田 正治荻野 知子村上 賢治吉田 裕一向阪 信一
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2002 年 14 巻 3 号 p. 147-151

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抄録

蛍光灯連続光下でのピーマンの長期栽培の最適条件を明らかにする研究の一環として, 24時間を単位とした時の着果と肥大に及ぼす4時間暗期挿入の影響を調査した.
ピーマン'京みどり'を蛍光灯連続光 (光強度150μmolm-2s-1) で育苗し, 光強度150~350μmol m-2s-1, 温度27℃, CO2濃度800ppmに設定した人工気象室内のロックウールに定植した.第1番花開花時から約2か月毎に第I期から第V期までに分け, 連続光区と4時間暗期挿入区を交互に設定し, 10か月栽培を行った.また, 蛍光灯連続光下で育苗した苗をガラス室に設置したロックウールに定植し自然光下の果実品質を人工光下のそれと比較した.
2か月毎の累積収穫果数は生育が進むにつれて増加した.暗期を挿入した第II期, 第IV期ともに収量はそれらの前後に設定した24時間連続光区での収量の増加パターンと比べ大きな変動は示さなかった.果実の尻腐れ率は連続光の第1期で25%と高かったが, その後はほとんど発生しなかった.残存培養液のpHは連続光, 暗期挿入に関係なく6.0~7.8の間で推移した.ECも連続光, 暗期挿入に関係なく, 生育前期には低下傾向を示し, 生育後期には上昇傾向を示した.このECに対応して硝酸態窒素, カリウム, カルシウム, マグネシウムの濃度は生育前期には低く推移し生育後期には徐々に上昇した.しかし, カリウム濃度は常に減少した.リン濃度はpH調整 (pH5.6) に用いた正リン酸にも影響され, 生育期間を通して当初の設定値近い濃度で推移した.
人工光下で栽培した果実はクロロフィル含量, カロチノイド含量ともに自然光下で栽培した果実の2倍を示した.24時間連続光で栽培した果実と4時間暗期挿入で栽培した果実間に違いはなかった.
以上の結果より, ピーマン'京みどり'は4時間の暗期を挿入しても果実収量の減少をきたさないものと考えられ, 果実の色素含量, つやなどにも影響が出なかったことから, 4時間暗期の挿入は投入エネルギーの低減に貢献できるものといえる.

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© 日本生物環境工学会
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