2003 年 15 巻 3 号 p. 162-168
高設栽培されたイチゴを対象に, 実用化を睨んだシステムの開発を目標に, 栽培ベッドつり下げ型マニピュレータ, 改良を加えた吸引式エンドエフェクタ, 視覚センサから構成される収穫ロボットを試作した.本システムによる収穫基礎実験の結果, 以下の知見を得た.
1) 考案した栽培ベッドつり下げ型マニピュレータは, 機構, 制御共に簡素で, 軽量コンパクト化が図られた実用的なシステム構成であった。また, 栽培ベッド下面に設置することで, 果実とロボットの位置関係がほぼ一定に保たれ, 果実の位置検出方法の簡素化も図られた.
2) 収穫時間に関しては大きな改善が見られた.しかし, 収穫対象果実に隣接する未熟果等が同時に収穫されること, 果柄切断時に果柄を長く残すなどの問題については, 改善できなかった.
3) 傷の経時変化の観察では, 14%にエンドエフェクタ内での果実搬送中のものと思われる傷が見られた.前項の問題と併せて, 最適なソフトハンドリング方法を開発する必要がある.