植物工場学会誌
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外観情報に基づくトマトのゼリー量推定
河野 俊夫
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2003 年 15 巻 4 号 p. 195-204

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抄録

トマトの品質を決定する要素のうち, 消費者の嗜好が多様なために一般的な良否を決定できず, また, 物性が果肉部と非常に似ているために通常の測定では測定が困難なトマト果実内部のゼリーの量を, 外観情報のみによって推定する方法を提案した.
推定の方法は, 二つのプロセスから構成された.一つはトマト果実表色に現れる子室を隔てる隔壁線数 (=子室数) をニューラルネットワークによって判定するプロセス.もう一つは, あらかじめ相当数の統計によって明らかとなった子室数によって異なるゼリー部占有面積割合の分布を基に, トマト果実の輪郭情報から重畳計算により内部のゼリー量を計算によって求めるプロセスである.
これら二つのプロセスをつなぎ合わせることで, トマト果実の外観情報 (表色と輪郭) のみから内部のゼリー量を, 平均推定誤差18.4%で推定することができ, 結果として厳密な推定にこそならないものの, 消費者が各自の好みのゼリー量のトマト果実を選択するには十分な精度を確保できた.
これにより, 例えばフルーツの品質テスターのように, 末端市場で消費者がトマト果実を入れるだけでゼリー量の多寡を知ることができるような簡便な装置を開発する上で一つの推定方法を示すことができたと考える.
今後の課題として, アルゴリズムの改良およびハードウェアに密着した処理言語の採用等により, ゼリー量算出まで時間を短縮する必要性がある.

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© 日本生物環境工学会
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