Japan Journal of Human Resource Management
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An Analysis of New Graduate Hiring Behavior in Small and Medium-Sized Enterprises
Kazushi YAMAMOTO
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2017 Volume 18 Issue 1 Pages 4-20

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ABSTRACT

This study identifies issues with and countermeasures for the hiring of new graduates in small and medium-sized enterprise (SMEs) while considering the differences in such hiring behavior among large firms. Differences between large firms and SMEs were confirmed to understand the characteristics of hiring behaviors in SMEs, the subject of the research, and the research focus was subsequently narrowed. Issues with SMEs were (1) population formation due to the low brand power for hiring; (2) shortages of human resources for hiring and know-how; and (3) trade-offs between early informal job offers through RJP initiatives and early turnover rates. The study then examined how SMEs that focus on these selected issues, and those that are successful in hiring, respond to these issues. The results of the analysis were as follows.

First, regarding population formation, SMEs used different methods from large firms by strategically coordinating the timing of hiring new graduates and using unique promotion methods and channels such as Facebook, other social media, and dedicated websites.

Second, in response to a lack of human resources, SMEs used outside professionals if there was no hiring know-how in the company. In addition, executives and employees outside of human resources aggressively participated in hiring. However, there were risks in hiring behavior where there were no partnerships with executives or those responsible for human resources.

Third, for RJP, many employees, including executives, participated in hiring rather than having the human resources group lead the process. This increased opportunities for different types of communication with students. With SMEs in particular, there is a risk of informal offers being turned down when they are simply given information on the work environment, whereas sympathetically sharing information, such as workplace experience via other hirees (in actual internships) or even the traditional company briefing, produced results.

Based on these cases, successful measures for SMEs are those that are unique to each company rather than the imitation of hiring methods used by large firms. However, these measures are not shared among SMEs. If effective ways for hiring new graduates can be shared outside individual companies and with society as a whole, then they can be useful in reducing mismatches in the new graduate labor market.

1. 問題の所在

本稿の目的は,企業の新卒採用行動1)において,今まで常識や推測で述べられてきた大企業と中小企業の新卒採用行動の違いを考慮しながら,中小企業独自の新卒採用行動の課題とその対策を明らかにすることである。

本稿が中小企業の新卒採用行動に焦点を当てる理由は2点ある。第一に,大企業に比べると中小企業の新卒採用行動についての研究蓄積が乏しいからである。第二に,一般的に難しいと言われている中小企業の新卒採用行動において,採用の成否を生み出す人事施策の違いが不明確だからである。例えば永野(2005)は,新卒採用市場における企業地位が低い企業は,地位の高い企業と比べると採用を苦戦すると主張する。その一方で,中小企業白書(2015)によると,中小企業の中で「人材が確保できている企業」と「人材が確保できていない企業」の特徴的な差は「人材確保のためのノウハウ・手段」であると分析されている。

2015年3月卒業予定者の求人数と就職希望者を見ると,従業員5000人以上の大企業の求人総数は4.6万人で就職希望者数は8.3万人,求人倍率は0.55倍である。一方,従業員300~999人の企業では求人総数14.2万人で就職希望者は11.9万人,求人倍率は1.19倍である。さらに,従業員300人未満の企業規模になれば求人総数37.9万人で就職希望者は8.4万人,求人倍率は4.52倍となっている(リクルートワークス研究所,2014)。このような規模間格差を踏まえて経済同友会では,2012年から「新卒採用問題プロジェクト・チーム」を設置し,新卒採用の問題は早期化や長期化だけの問題だけではなく,大規模なミスマッチとそれに伴う過大な学生負担であることを指摘した。

つまり,超人気企業に応募が集中し,エントリーシートの提出段階で多くの学生が落とされる一方で中小企業では,かりに優良企業であっても新卒の応募者があまり集まらないという事態が発生している。これまで中小企業とのミスマッチ論は学生側の知識不足や意識要因に注目しているが,採用行動側に問題があれば,それらの解決策も必要になる。ただ単に大企業は認知度が高く,中小企業は認知度が低いというだけでなく,採用行動自体に質的な違いがあって,その成否に差が生まれているのかもしれない。そこで本稿では,初めに規模間の違いに着目しながら,中小企業独自の新卒採用行動について分析したい。

なお,本稿の構成は以下の通りである。続く第2節では,採用行動に関する先行研究を整理する。第3節では,調査概要と分析の焦点を説明する。第4節では,大企業と比較した中小企業の新卒採用行動の特質を確認する。第5節では,中小企業間の新卒採用行動とその成果の関係をヒアリング調査から分析する。第6節は,分析結果のまとめである。

2. 先行研究の検討

尾形(2015)によれば,企業の採用行動は毎年実施される必要不可欠な活動であり,社会的にも重要な意味を持つにもかかわらず,その研究蓄積は欠しい。人事施策の中でも採用は企業業績に与える影響は大きいと言える(Pfeffer,1988)。それゆえ,日本企業の採用行動に焦点を当てることは理論的にも実践的にも有意義である。

また,Tanova(2003)は,人的資源管理の多くの研究は小規模な組織を軽視しており,小規模な組織の人的資源管理は大規模な組織のそれとは異なると主張する。つまり,大規模な組織から学ぶ教訓は,小規模な組織には当てはまらない場合がある。特にBarber(1999)は,大企業に的を絞ったこれまでの採用行動調査は,中小企業あるいはその求職者に向けて一般化できる強い根拠を持たず,その上,採用行動の有効に関する今後の調査においては,企業規模の違いが採用行動とその結果に大きく影響する要素であると主張した。このように採用行動の有効性が大企業と中小企業で異なることは指摘されたが,有効な採用結果を測るのに適した尺度は何かという実証上の問題は残ったままである。

大宮(2010)も,中小企業の採用活動における不利な条件を次のように指摘している。一般の人の目につきやすい業績や大企業に学生の就職希望が集中し,そうでない業種や企業には目を向けにくい2)。その一方で大宮(2010)は,自企業の情報発信力の違いによって採用結果に違いが生まれることも指摘している。

同様にBarber(1999)は,企業規模別に異なる人材募集方法及び採用基準や専任の人事スタッフ数の違いなどが採用結果に与える影響を明らかにしている。そもそも米国における新卒採用行動(人材募集)は,大企業が中小企業よりもキャンパス・リクルーティング(パンフレット,キャンパス訪問,インターンシップ,コーププログラム)が盛んであり3),中小企業は,大企業と比べて社内資源(社員による紹介や人的ネットワーク)や外部の職業斡旋業者,新聞広告による募集集団を通じて新卒採用を募る傾向がある。もちろん,日本の新卒採用行動においても企業規模間の違いはあるが,その要因は米国と異なると推察される。そこで本稿では,今までの常識や推測で述べられてきた新卒採用行動をヒアリング調査によって分析したい。

そもそもCollins & Smith(2006)は,従業員の人数が100人未満の企業の場合,フォーマルな人事制度・施策の運営が難しいと述べている。ただし,中小企業の中では,フォーマルな人事制度・施策を設けずにインフォーマルな工夫で効果をあげているかもしれない。中小企業独自の実態はいまだ十分な調査が行われていない。それゆえ本稿が,100人以下の企業も含めて中小企業の中で新卒採用行動の実態を探ることは研究上,一定の意義があると言えよう。

本節では,はじめに新卒採用行動の分析焦点について先行研究に基づいて検討する。まず,新卒採用行動を行う人的資源の質と量は重要である。採用に関わる人材が量的に充実し,独自の技能を持っていることが採用の成否に影響を与えると考えられる。新卒採用行動の担い手としては,第一に人事担当者,特に新卒採用行動に関しては採用担当者があげられるが,必ずしも人事部員だけが新卒採用行動に関わる人的資源とは限らない。人事部以外の従業員が面接官やリクルーターとして動員されることも,中小企業では社長や役員自らが新卒採用行動に積極的にかかわることも多い。また,社外の人材として採用専門家を活用することもある。さらに,採用研究の先駆的研究である尾形(2007)は,トップ・コミットメント(組織トップ層が採用行動にどの程度関わっているか)の重要性を指摘している。組織トップ層も人的資源と言えるが,人事担当者や採用専門家に関する分析は少ない。

次に,募集(母集団形成行動)に対する採用ブランド力の影響を検討したい。守島(2004)は,採用ブランド力を組織の魅力と定義し,さらに尾形(2007)は,採用ブランド力には企業イメージ,会社の立地条件,および社屋などが含まれていると論じている。なお,採用ブランド力がある企業は,自ら積極的に働きかけなくても母集団形成は容易であるが,それがない企業は,広報活動など積極的に自社をアピールし,自社に対する学生達の認知度を高めることが求められている。特に一般に知られていない中小企業には,その必要性が高い。

なお,尾形(2007)によれば,採用ブランド力のある企業は,募集方法を学校推薦制度から自由応募に移行する傾向があるが,採用ブランド力がない企業は,自由応募だけの募集方法では,人材の量・質とも満足できる母集団形成することが難しくなるので,学校推薦制度による募集方法を選択する傾向がある。

さらに尾形(2015)は,企業トップが積極的に正確な情報提供に携わること,トップと部門間連携をともに強化することが良質な母集団形成に正の影響を与えているが,部門間連携が組織内コンフリクトを生み出している可能性を明らかにした。募集に対して組織内協力体制を如何に作るかが重要になる。

続いて,内定辞退や早期離職の問題とその対応を検討する。辞退や離職が起こると,必要な人材を配置できないだけでなく,採用(離職場合は新入社員訓練)に掛かったすべての費用を失うことになる。米国では,Weitz(1956)による研究に端を発し,1970年代以降産業心理学者Wanousを中心として理論的な発展と実証研究が数多く積み重ねられている。Wanous(1992)は,伝統的な採用活動(より良い面を伝える)が入社後に現実とのギャップから不満・離職を引き起すのに対して,早期離職を抑制するための正確な情報を提供すること,すなわちRJP(Realistic Job Preview)が企業定着に与える有効性を検証した。またPhillips(1998)は,メタ分析によってRJPが若者層の早期離職を抑制できることを確認した。

日本の事例において,金井(2011)は,採用方針におけるRJP指向が高いほど,入社後の過剰な期待が抑制され,リアリティショックを緩和し,入社後自分の役割を自覚し,結果的に経営業績にも正の影響があるが,一方,RJP施策は定着率や初期の不適応に対する正の効果は観察されなかったことを確認している。さらに,堀田(2007)は効果的なRJPを実現する方法としてインターンシップをあげ,小杉(2007)はインターンシップの経験が定着志向に及ぼす影響を示している。また高橋(2007)は,中小企業においてインターンシップを採用戦略に組み込むことの意義を説いている。

なお,先行研究では分析されていないがRJP施策の効果は企業規模間で異なる可能性がある。採用ブランド力が弱い中小企業では,学生に企業名を知ってもらうことに苦労しているので,積極的に自社をアピールする必要があり,正確な情報提供だけでは母集団形成ができないかもしれないからである。特に,本稿では,新卒採用行動の内々定者の辞退問題(内定者フォロー)にも焦点を当てたい。つまり,採用ブランド力が低い中小企業にとっては早期離職よりも内々定者辞退の対策が急務であるが,RJP施策によって内々定辞退が増加する危険性がある。それゆえ,中小企業において経営及び新卒採用のマッチングの視点からRJP施策は必要不可欠であるが,その実行には困難が伴うと言えよう。

以上,先行研究を踏まえると,新卒採用行動には企業規模間の違いがあり,その上で中小企業独自の新卒採用行動が行えるかどうかが採用結果の成否を分けると考えられる。中小企業は採用ブランド力の弱さをどのように補うのか。特に採用にかかわる人的資源とRJP施策に独自性が現れると考えられる。

3. 調査の対象・方法・焦点

(1) 対象

本稿の調査対象企業は,大企業7社,中小企業15社の合計22社である(表1参照)。

中小企業を調査対象とするが,大企業との違いを考慮するために大企業も7社を調査した。

表1 調査対象企業

大企業は資本金が3億円を超えるか,又は常時使用する従業員が300人以上,又は株式上場している企業と定義した4)。なお,小企業では採用行動という人事施策がそもそもない可能性もあるが,「人材マネジメントに関する調査データ」中小企業庁(2009)及び「企業における新卒採用等への取り組み状況に関する調査データ」経済産業省(2014)では,100人以下の企業も調査対象になっているため研究対象企業とした。また本稿では,先述したように,フォーマルな採用施策だけでなく,インフォーマルな採用行動も分析するので,小規模企業も調査対象とした。調査地域は,東京を中心とした関東圏と大阪及び兵庫県の関西圏,そして地方圏とした。地方圏の中には,関西圏の奈良,滋賀の企業が入っているが,2社とも所在地が大都市圏から外れているため地方圏とした。

(2) 方法

2012年7月~12月にヒアリング調査を行い,さらに2013年5月に追加調査を行った。調査は長いもので2時間半,短いもので1時間程度であった。調査は,大きく2つに分けられる。まず,先行調査を踏まえて,予め質問項目を用意して企業の属性と新卒採用行動の実態を数値から把握した。その上で調査では,仮説構築型調査(半構造化面接)を実施した。また,事前にガイドラインを用意したが,インタビューの内容によって柔軟に質問内容を変えた5)。このような定性的方法は,定量的方法では分析できない対象には適していると言えよう6)

(3) 調査内容

本稿では,定性的方法を採用しているが,事前にいくつかの調査の焦点を設定している。既に同じ定性的方法で,日本企業の採用行動を分析した尾形(2007)において析出された分析焦点を本研究でも引き継ぎながら調査し,その上で中小企業の特質を考察する。はじめに,数量的な把握によって規模の効率性が発生しているかを把握する。特に就活サイトの費用や新卒採用に関わる人材,エントリーから面接までの学生側の行動,内定者数,内々定辞退数,および離職率などの数量的指標を確認する。次に,この企業規模の違いを考慮しつつ,分析焦点である「(1)採用ブランド力」「(2)人的資源」「(3)RJP施策」の3つの焦点に沿って自由面接を行った。アンケート調査に比べれば観測数は少ないが,ヒアリング調査だからこそ聞けた質的情報がある。

4. 大企業との比較

本節では,はじめに新卒採用行動について調査企業の規模間の違いを基本統計から確認したい(表2)。中小企業が主たる調査対象なので,大企業の観測数は少ないが,その違いを確認し,その結果を前提に中小企業の新卒採用行動の特質を把握する。なお,質問項目によって観測数に違いがあるのは,前年度に採用がなかった事例や一部情報未公開の事例が含まれているからである。

(1) 母集団形成

エントリー者数は平均で7.5倍,説明会の動員数は9.8倍の大きな差がある7)。この違いは,先行研究でも指摘されている採用ブランド力の違いと言えよう(尾形,2007)。

(2) 新卒採用に係る人的資源

新卒採用の専任者は大企業が平均2.4人であるのに対しては,中小企業は平均0人であった。中小企業の採用担当者は,他の仕事と兼任で行っていたと言えよう。一方,新卒採用行動に関わった人数は約8倍の差があった。実際に採用に関わる仕事量も違いがある。説明会の回数,面接(選考)の回数,筆記試験の実施率,インターンシップ実施の有無,大学訪問の有無についても大企業が中小企業より高い値を示している。

(3) 規模の効率性

新卒採用費用として「採用行動費(All)」「採用メディア行動費」があげられる。これらは,共に大企業の方が大きいが,採用数も多いので当然の結果と言える。そこで内定者1人あたりの採用メディア行動費を計算すると,大企業28.0万円,中小企業33.7万円になる。つまり,採用数(内定者数)が多ければ多いほど,1人当たりの採用メディア費用は低下するという規模の経済性がある。

(4) インターンシップと大学訪問

大企業3社(観測数7),中小企業4社(観測数15)がインターンシップを実施し,大企業7社(観測数7),中小企業4社(観測数15)が大学訪問を実施していた。大企業の方が実施率は高いと言える。

(5) 内々定辞退率と早期離職率

次に,内々定辞退率と早期離職率を確認する8)。大企業の内々定者数は平均61.2人,そのうち内々定辞退者数は平均11.2人で内々定辞退率は約18.3%である。一方,中小企業の内々定者数は平均5.9人,そのうち内々定辞退者数は平均1.4人で内々定辞退率は約23.7%である。中小企業は,そもそも新卒採用行動を大企業よりも遅らせる(内々定を大企業よりも遅くする)傾向があるが,それでも内々定辞退者が多い。加えて,一般的に入社3年目の大卒者の離職率9)は30%を超えるが,大企業はそれよりも低い。

表2 採用行動の企業規模間格差

続いて,内々定辞退率と入社3年目の離職率の関係を示した(図1)。大企業(B社除く)は,グラフの左下に集中しているが,中小企業の数値はばらついている。内々定辞退率と離職率が共に高い中小企業もあるが,どちらか一方が特に高い中小企業もある。この結果は,採用ブランド力の低い中小企業の特徴と解釈できる。つまり,採用ブランド力の高い大企業の場合,RJP施策を行っても内々定辞退は増えないが,中小企業の場合はRJP施策によって内々定辞退が増える可能性はある。加えて,もしRJP施策を行わなければ(企業宣伝を強めれば)内々定辞退は減るかもしれないが,就職後の離職が増えてしまうかもしれない。これは,先行研究では指摘されていない中小企業の独自のトレード・オフの問題と言える。ヒアリング調査でも詳しく質問した。

図1 内々定辞退率と入社3年目の離職率

5. 中小企業の新卒採用行動の定性的分析

前節の数量的把握では,調査対象企業の規模間の違いを確認した。続けて本節では,この違いを踏まえつつ,新卒採用行動について担当者への半構造化面接を行う。具体的には,新卒採用行動における中小企業の不利な点をどのように認識し,どのように対応しているかについて質問した。

(1) 採用実績

はじめに,例年と比較した各社の採用実績を確認し10),新卒採用行動の成否について調査企業を3つのグループ(A:採用満足度が高い,B:例年並みの採用評価,C:採用結果が芳しくない)に分けた。このような採用実績の違いを踏まえて,それらを生み出す要因について検討したい。

なお,具体的なグループ分けの基準は,「採用予定数通り内定者を確保できたか」,「内定者のレベルの満足度」,「内々定辞退者数」,「内定者1人当たりの費用対効果」,さらに「総合評価」についての質問である。ところで,質問を重ねるうちに,採用予定数はあくまでも目安であって強い拘りがないことが明らかになったので,予定数の充足率については参考程度とした。

Aグループの中小企業は5社(I社・K社・P社・Q社・S社)である。業種別ではICT 2社,製造業1社,サービス業1社,広告1社であり,本社所在地は東京3社,関西2社である。なお,従業員数規模別は49人以下が2社,50~99人が3社であった。Bグループは5社(M社・N社・R社・U社・V社)である。専門商社3社(食品1,飲料1,電子部品1),教育1社,建設1社であり,本社所在地は東京2社,神奈川1社,関西1社,香川1社である。規模は,50~99人4社,100~199人1社であった。Cグループは5社(H社・J社・L社・O社・T社)である。製造業2社,広告3社であり,本社所在地は関西4社,東京1社であった。規模は50~99人3社,100~199人2社であった。

(2) 新卒採用成功要因の検討

次に,新卒採用の成功要因を探るため質問を行った。先述したように先行研究でも指摘されている母集団形成,人的資源,RJP施策の3つの焦点を考慮しながら,具体的な工夫や行動について発言を収集し,それらを分類した(表3参照)。以下では,それぞれを説明する。

表3 採用における問題と対策

① 母集団形成

第一に,母集団形成に関する対策として,「採用行動開始時期の戦略的調整」と「独自の広報戦略」を挙げることができる。

まず,「採用行動開始時期の戦略的調整」について説明する。Aグループでは2社(K社・S社)の企業が大企業と同じ採用広報解禁11)の12月から新卒採用の行動をはじめているが,I社とQ社の2社は解禁から2か月経った翌年2月から新卒採用行動をはじめていた。

大企業との競合を回避しつつ,大企業志向である学生たちが中小企業に視線を向けるタイミングを考慮していた。中小企業では,単に新卒採用受入れ準備が遅れたという受動的要因で開始時期が遅くなる企業がある中で,この2社は,新卒採用市場を分析した上で独自の新卒採用行動の差別化を図っていた。例えば,Q社の採用担当者は,「中小企業のICTは,早期に説明会を行っても大企業にひっくり返される可能性があるので,2月から3月末までの説明会は微妙と思っている。(Q社:採用担当者)」と発言している。

なお,P社はインターンシップに重きをおいて12月以前の6月頃から準備をはじめていた。厳密には,インターンシップは新卒採用と切り離しているが,この機会に企業の認知度を上げることを目指している。また,2013年の採用実績ではBグループに属しているM社の社長も,大企業とのバッティングを避けることの重要性を以下のように語っている。 

「私自身が学生ならば私の会社を第一志望とするのは不自然。学生達の大企業を受けたい,受けてみたいという気持ちを大事にしながら,その後で中小企業にアプローチしてくると思うので,戦略的に大企業の動きより遅らせている。(M社:経営者)」

一方,採用結果が芳しくなかったCグループのH社,J社,およびL社は,採用行動の開始時期が年度によって変動していた。直近の経営業績の影響が強く,長期的な採用計画も確認できない。

次に,「独自の広報戦略」を説明する。まず,大手就職サイトの活用については,費用が高いと感じている中小企業は多い。そもそも採用予定人数が少ないので,1人当たりの費用が割高になる。Aグループの中では大手就職サイトを活用している中小企業(K社・Q社・S社)もあるが,それらを使わないで成果を出している企業もある。I社・P社は,独自の新卒採用広報行動を打ち立て成功している。P社の人事担当者は,中小企業にとっての大手就職サイトの不便さについて次のように発言している。

「9000社以上の企業が参画している大手就職サイトの中から知名度のない中小企業を発見してもらおうと思うと,バナーやDM等のオプション企画を活用しなければいけなくなって膨大な経費が掛かる。(P社:人事担当者)」

なお,採用予定数が比較的多い企業が大手就職サイトを活用している傾向がある(採用予定数,Q社:8人,R社:20人,S社:8人)。また,大手就職サイトについて,P社の経営者は,「弊社は採用予定数が少ないためマスメディア戦略は必要がない。効率が悪い。よって,新卒採用行動のイベントやFacebook等のSNSを活用しながら学生間の口コミを利用して母集団を形成している。(P社:経営者)」と発言している。

以上まとめると,A,Bグループは,大手就職サイトをまったく使わないわけではないが,費用対効果を考えてローカル就職サイト,Facebook等のSNS,口コミ,リアルイベント,大学訪問,合同会社説明会(大学,業界,行政,民間主催),自社HP等を活用しながら母集団形成を行っている。

この他に,母集団を増やすための手段として大学訪問があげられる。J社の新卒採用責任者は,「大学に行っても(中小企業は)学生とは会えない。大学も大企業であれば喜んで対応してくれるだろうけど,小さな企業が行ってもね。」と発言する。一方,S大学のキャリアセンターの職員は,企業の大学訪問について「確かに学生とは直に会えない。しかしながら,大学としても魅力的な中小企業については学生に紹介したいと考えているので,全ての企業の要望には応えられないとしても,日程調整しながら個別説明会を学内で実施するようにしている。また,良い企業だと判断した場合,就職相談に来た学生の方向性と一致するのであれば,学生に紹介するようにしている。」とも発言している。

② 新卒採用にかかわる人的資源

多くの調査企業は,新卒採用にかかわる人的資源の不足を課題としてあげていた。その中でも成果を出している中小企業は,「採用専門家の効果的利用」と「経営者の介入と社員の積極参加」という工夫を行っていた。

まず,「採用専門家の効果的利用」について説明する。AグループではI社とQ社の2社が新卒採用行動に長けた外部の採用専門家を利用していた。また,Bグループ内でも2社(M社・N社)が外部の採用専門家及び就職サイト担当者の支援を受けていた。なお,I社は,事業を成長させるために若い人材を求めており,最近,新卒採用行動を開始した。経営者は,「全く新卒採用を行ったことのない中で,説明会やインターンシップ,そして,面接等の採用行動の進め方を就職サイトの営業マンのWさんにアドバイスしていただけたので,結果を出すことが出来たと思っています。(I社:経営者)」と発言している。

またQ社は,2012年卒生の新卒の採用結果が芳しくなかったため2013年卒生の新卒採用行動にあたっては,外部の採用専門家を別の会社に変え,新卒採用行動のアプローチを全面的に見直した。Q社の外部専門家は,就職サイト,広報活動の開始時期や説明会の開始時期,広報活動のキーワード出し,説明会の方法,内々定の意思表示など,全てを変更し,結果的に「昨年採用2人だったのが,今回は内々定8人で,1人だけ内定承諾書がきていないが満足した結果だと評価してもらっている。(Q社:外部専門家)」と発言している。このように費用が掛かるものの,企業内部にノウハウを持った人材がいなければ,外部人材をピンポイントで活用する方が効果的と考えられる。

他方,自社内部に採用専門人材を配置している企業もある(K社・P社・S社)。ただし,中小企業は,人材の内部育成が難しいので中途採用者を活用している。例えば,K社の採用担当者は前社の採用経験を活かしており,P社の採用責任者は,前社の採用経験だけでなく人材ビジネスの経験も活かしている。

続いて,「経営者の介入と社員の積極参加」について説明する。そもそも新卒採用に限らず,人材採用や教育研修に関して意識の高い経営者は多い。調査企業15社のうち13社の経営者は説明会で経営ビジョンや求める人物像等を話し,最終面接などの選考で新卒採用行動にかかわっていた。さらに新卒採用行動の企画だけでなく,入社後以降の組織体制や既存社員の教育まで考慮して新卒採用行動に携わっている経営者も多かった。その上でAグループの経営者は,複合的な狙いをもって新卒採用行動に積極的に関わっている。なかでもS社の経営者の発言から経営者の新卒採用行動の関わりの強さが窺える。

「弊社は,新卒採用行動を行うにあたって,コアの採用メンバーに採用チームを加えて6か月から10か月にかけて新卒の採用活動を行います。採用チームは営業,経理,生産部門の入社2~10年目の既存社員の中から10名選抜して採用チームをつくっています。(中略)毎年,新卒採用体制の見直しを行っています。(S社:経営者)」

加えてS社では,同じ対象の学生に主旨を変えた説明会を2回実施し,説明会参加学生と経営者や役員が時間を掛け,会社と学生の双方の相互理解が図れる機会を作っている。なお,BグループのM社の経営者も自ら陣頭指揮を執り新卒採用行動に携わっているが,2013年卒生の採用についてはやや苦戦したと評価されていた。このような戦略・企画への経営者の参加には,経営者の手腕による格差が生まれると考えられる。人材採用の重要性について採用担当者と認識共有ができておらず,単に採用担当者は業務命令として動いているため,「目的なき新卒採用行動」に陥っている企業もある。例えば,M社の経営者は,過去の新卒採用行動を振り返り,中小企業の場合,経営者だけが突っ走る新卒採用行動にはリスクがあると発言している。

「以前は,説明会や面接のほとんどを私が行っていたため,新入社員を4月に迎えた時,既存の社員から社長が採用した人という感じでやや冷やかに捉えられました。その結果,先輩が新人の面倒を見なければいけないという風土がなく,早々に新入社員が退職してしまったという苦い経験をしたことがあったので,これでは駄目だということに気付き,社員を巻き込んで採用活動を行うようになりました。(M社:経営者)」

一般的に魅力的な人材は中小企業においては希少な存在のため,一時も現場から離れてもらっては困るという現状があり,仕方なく魅力がない人材を新卒採用にかかわらせることがある。当然ながら学生の心を動かせず,採用に至らないという結果になる。Aグループ全ての企業に共通していることは,外部の人材も含めて魅力的な人材が新卒採用行動にかかわっていることである。

③ RJP施策

第三に,RJP施策として「多様なコミュニケーション」と「インターンシップ」があげられる。第2節で検討したように採用ブランド力の低い中小企業は,離職率を下げるために職場情報を伝えるが,それが母集団形成や内々定辞退につながらないように注意しなければならない。

まず,採用に成功している中小企業は,新卒採用行動にかかわった人事部以外の社員数が多いことが確認された。人事部以外の社員が新卒採用にかかわる場面は,若手社員は説明会,中間管理職以上は面接が多い。AグループとCグループにおいて採用にかかわった社員数の比較をしてみると1.8倍の差があった。

例えば,AグループのK社は全社員が新卒採用行動にかかわっており,既存社員の意見も参考にしながら最終決定を経営者が下すという流れを作っている。社員参加の丁寧なコミュニケーションは,内々定辞退率と離職率を同時に下げるためである。実際に入社4年目の社員は,「説明会やインターンシップで先輩社員の話を聞いたり,課題を作成し提出したり,また,社長の話も含め良いところだけでなく課題も包み隠さないで知ることのできる環境をつくってもらったので,信頼できる企業だと思い始め,この企業に入社したいという気持ちになってきました(K社:社員)。」と発言している。一方,K社の役員は,社員参加の効果を次のように語っている。同様の発言は,I社の経営者からも確認された。

「我々も学生を選考していますが,学生さんからも弊社を選考してもらうために,マイナス面もわかるよう食事会や先輩社員と接点をもってもらうようにしています。長期にわたって選考をしていくので,その間に他社から内々定をもらってそちらに決める学生もいますが,それはそれでよいとしています。時間を掛けて学生のことを全社員が知り,弊社にマッチングするかを判断していきます。もちろん,最終は社長が判断しますが,全社員で選考していますね。長期戦です。(K社:専務取締役)」

「採用予定数が僅か1~2名なので内々定辞退者や入社後早期に退職してしまうことになると経営に大きな影響を及ぼします。時間を掛けて慎重に相互理解を高めています。よって,学生は,弊社のリアルな面もインターンシップやアルバイトを行いながら感じ取っていると思います。(I社:経営者)」

また,P社も内々定を出すまでに面談を数回繰り返し,内々定後や入社後のミスマッチを出さないアプローチを行っている。さらに,Bグループの中のM社は,情報提供の相手を両親まで広げている。M社の経営者は,「弊社の内容を説明し,少しでも親御さんに安心してもらうために,家庭に伺っています。(M社:経営者)」と発言している。

中小企業は,新卒採用行動に割ける人的資源に限度があるので,大企業のように人海戦術は困難である。しかし,学生との多様なコミュニケーションの機会を増やし,不利を補っている企業もある。また,RJP施策についても大企業とは異なる。採用実績をあげている中小企業では,職場の情報をただ単に提供すると内々定辞退者が増える危険性があるので,時間をかけて丁寧な情報提供を行っていると考えられる。

次に,「インターンシップ」について説明する。まず,Aグループでは5社中3社の企業がインターンシップを実施していたが,Bグループでは0社,Cグループでは1社であった。採用実績のある中小企業の方がインターンシップを効果的に利用する傾向があると解釈できる。ただし,AグループのI社,K社,P社の中で大企業と同様に長期のインターンシップを実施しているのはK社だけであり,P社は2日,I社は3日と5日の2回である。特に注目すべきはI社とK社のインターンシップである。現在,実施されている他社とは,その目的が違った。この2社は,就職活動中の4年生を対象にした採用に直結するインターンシップであった。従来の会社説明会と採用選考の間の現場経験(リアルインターンシップ)で双方の理解を深めて,離職を減らそうとしていた。I社の経営者は,リアルインターンシップについて次のように説明する。

「弊社は,2回に分けてインターンシップをやっていますが,1回目は3日間,2回目は5日間です。インターンシップの内容は,弊社の営業を知ってもらうことを目的に行っているため,営業対象企業のリストアップから始まり電話を掛けてアポイントを取る内容です。でも,1回目の3日では営業の辛さのようなものはわからないのですが,流石に2回目の5日になると営業の厳しさを肌で感じとっているのか,4日目から来なくなる学生がいますね。来なくなる学生がいることは残念ですが,しっかり見極めができるのでリアルインターンシップは,有効的だと思っています。(I社:経営者)」

この発言から短期間の事実に徹した情報提供と双方の企業理解が深まる点で,リアルインターンシップが評価されていることが窺える。リアルインターンシップの内容も営業そのものをリアルに経験させるRJP施策である。中小企業において内々定者の辞退や入社後の退職者を防ぐために有効的であると言えよう。

6. 結論

本稿では,大企業と中小企業の新卒採用行動の違いを確認した上で,特に中小企業の新卒採用行動に焦点を絞ってヒアリング調査を行った。

第4節の大企業との比較で確認された中小企業の新卒採用行動の課題を前提に調査の焦点を絞った。具体的には,採用ブランド力の低さ,採用に携わる人材やノウハウの不足,就職サイトの費用,およびRJP施策による内々定辞退と早期離職率のトレード・オフという中小企業の課題である。続く第5節では,これらの課題に中小企業がどのような対応をとっているか,さらに,新卒採用行動の成否を分ける対策は何かについて分析した。これまでの結果を図2にまとめた。

第一に,母集団形成について成功している中小企業は,大企業の採用スケジュールを分析しつつ,「新卒採用行動時期の戦略的調整」を行っていた。さらに大企業とは別路線のローカル就職サイト,Facebook等のSNS,口コミ,リアルイベント,大学訪問,合同会社説明会(大学,業界,行政,民間主催),自社HP等の「独自の広報戦略」を行っていた。

図2 調査結果の概念化

第二に,人的資源の不足について次のような対応をしていた。まず,企業内に採用のノウハウがなければ,外部専門家や就職サイトの営業担当者を活用していた(「採用専門家の効果的利用」)。もちろん費用はかかるが,採用に関して費用に見合う効果を発揮していたと解釈できる。ただし,外部専門家や営業担当者には能力差があるため採用結果に差が生まれることもあった。また,経営者自身や人事担当者以外の社員が積極的に新卒採用行動に参加していた(「経営者の介入と社員の積極参加」)。外部の専門家の活用ではなく,3年ぐらいのスパンで独自の採用ノウハウを構築する効果が明らかになった。ただし,この場合も,経営者と人事担当者が連携できていない新卒採用行動はリスクがあることも確認された。

第三に,RJPに関しては次のような対応をしていた。まず,中小企業は,新卒採用行動に割ける人的資源に限度があるので,採用に成功する企業は,人事部主導ではなく,経営者も含めた多くの社員が新卒採用行動に参加し,学生との多様なコミュニケーションの機会を増やしていた(「多様なコミュニケーション」)。その際,経営者と新卒採用行動に係る従業員が目的を共有することが重要であった。特に中小企業では,職場の情報をただ単に提供すると内々定辞退者が増える危険性があるので,時間をかけて丁寧な情報提供をして成果を出していた。例えば,従来のインターンシップではなく,従来の会社説明会と採用選考の間の現場経験(リアル・インターンシップ)が効果を挙げていた。

もちろん,これらの対策は,中小企業すべてで取り組まれているわけではなく,一部の新卒採用行動に成功している中小企業が苦労の末に編み出した対策と言える。ここで確認すべきは,中小企業の成功対策とは,中小企業が大企業の採用方式を模倣することではなく,独自の方法を採用することである。言い換えると,採用ブランド力や規範の効率性などの条件を無視して,大企業と同じ方法で新卒採用行動を行っても結果を出すことも難しいと考えられる(図3参照)。

このような中小企業独自の採用方式の有効性は確認できるが,実際のところ,これらの採用方式の採用は各企業の自助努力に任されている。結果的に,中小企業は社長や人事担当者の能力だけに依存してしまう。そもそも潜在的には優れた人材がいるにもかかわらず,日常業務が重要であるために新卒採用行動に活かせないという中小企業もある。それゆえ,上記の分析結果につながった数々の工夫,すなわち中小企業独自の効果的な新卒採用行動を社会全体で共有できれば,新卒労働市場のミスマッチ減少に役立つと考えられる。むろん各企業に予算的制約はあり,企業間の競争もあるが,採用専門家を共同利用したり,各社のノウハウを共有したりする仕組みを考えればよいかもしれない。企業間で連携した共有の可能性についての検討は今後の継続的調査で確認したい。

図3 異なる成功対策

 【謝辞】

本研究のために,ご多忙の中,インタビューに応じていただきました企業の皆様に深く感謝申し上げます。また,本執筆にあたり,貴重なアドバイスを頂戴した梅崎修教授,3名の匿名査読の先生方からは大変貴重なコメントを頂きました。ここに記して深く感謝の意を表します。

(筆者=広島修道大学商学部講師)

【注】
1  経済学分野で,採用行動(employers’recruitment behaviors)が用いられる。人的資源管理論及び組織行動論では「採用施策」が用いられている。本稿で意味するところは同じであるが,「採用施策」の場合,人的資源管理施策の一つとして意味づけられるが,本稿では,後述するように人的資源管理施策には含まれないインフォーマルな工夫も含まれるので,採用行動を用いた。

2  一方,大宮(2010)は,学生の情報収集に注目し,欲しい情報を企業から「直接,積極的に収集」している学生は就職活動結果に満足していると主張する。同様の指摘は佐藤・梅崎・上西・中野(2013)の実証研究からも確認できる。この研究では,志望動機に拘らず,就職活動中に志望を早めに変更することがその結果によい影響を与えていることを検証している。

3  米国における新卒採用の歴史に関しては,関口(2014)が詳しい。

4  一般的には中小企業基本法第2条で定義された中小企業に該当しない企業を「大企業」と見なす。製造業,建設業の場合は,資本金の額または出資の総額が3億円(卸売業は1億円,小売業とサービス業は5000万円)を超え,かつ常時使用する従業員が300人(卸売業とサービス業は100人,小売業50人)を超える会社が大企業とされる。

5  大企業2社(F・G)は量的調査のみである。

6  定性的方法については,Strauss and Corbin(1990)等が詳しい。これらは単に個人的印象や直感ではなく,データに基づいた確信に近いものを得ることを重要視する研究法である。

7  説明会動員数には注意を要する。例えば,大企業の場合,エントリー者数が多いため,まずWebによる適性試験やエントリーシートの課題提出によって学生を絞ったうえで説明会を実施する。その場合は,規模間格差はさらに大きくなる。

8  大企業2社(F・G)は,2009年大卒離職率状況が把握できていない。中小企業5社(H・I・J・U・V)は,2009年大卒採用実績がない。また,2社(H・J)は,2013年大卒採用ができていない。

9  2009年大卒入社者離職率5人未満(59.2%),5~29人(49.8%),30~99人(37.9%),100~499人(30.1%),1000人以上(20.5%)(出所:新規学卒者の離職率状況に関する資料一覧(労働厚生省))。

10  経営業績の急激な悪化などで一時的に採用実績が悪くなった場合は,悪化前の採用実績について質問した。

11  2013年卒生の採用(就職)活動は,採用広報・説明会の解禁は,12月1日。選考開始は,4月1日。

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