This paper analyses the management of company unions in small- and medium-sized enterprises and the support provided by industrial unions, using analysis of data collected through interviews. The results yield three main findings. First, there is no scale merit of company unions' management in small- and medium-sized unions. Many small- and medium-sized company unions have numerous different problems with human resources and management methods, in addition to financial problems. Second, many small- and medium-sized company unions were devising organizational operations regarding human resources and management methods, rather than finance. In particular, devices of human resources are more than devices of management. In fact, there are some limits to their efforts to improve the union's management methods. Finally, there are some cases where industrial unions directly solve the problems of company unions, and other cases where they indirectly support the management of company unions with regard to human resources and finance. There are many support methods for human resources; however, there are limited support methods for finance. On the other hand, industrial unions directly solve the problems of company unions. This study presented several types of support/supported relationships between small- and medium-sized company unions and industrial unions.
本稿では,組合結成が難しく,かりに結成されたとしても組合運営が難しいと言われる中小企業の労働組合を対象に,中小労働組合(組合員299人以下の組合と定義)運営の課題と工夫を把握し,さらに中小労働組合に対する産業別労働組合(以下「産別組織」)の支援について検討する。
中小労働組合運動については,組織率の低下のような官庁統計を使った明確な数値傾向は確認されているが,実際の組合運営や産別組織の支援のような実態に対しては調査が少なく,中小労働組合運営の何が課題でどのような支援が効果的なのかは明らかではない。
最新の数値を確認すると,2015年の企業規模別に組合組織率を比較すると(労働組合基本調査, 厚生労働省),1,000人以上の大企業における組合組織率は45.7%であるが,雇用者数が100~999人における組合の推定組織率は12.2%,99人以下のそれは0.9%にまで低下する。労働組合がなくても,もちろん中小企業には大企業以上に様々な労働問題がある。実際のところ,大企業と比べて中小企業では労働問題があっても労働組合を結成しにくい理由があるのかもしれないのだが,組合組織率が少ないことは自明視されており,立ち入った考察はほとんど行われてこなかった。結果的に,なぜ中小企業に労働組合は少ないのか,どうして中小労働組合の組織運営は難しいのかという問いは残されたままになってしまう。
これらの問いに対する一般的な回答は,小規模だからということになるが,これでは原因を説明したことにならない。経済学の概念における規模の経済性(scale merit)が活かせない場合,具体的にはどのような困難があって組合活動ができないのか,さらに中小企業でも労働組合が結成されていれば,他の中小企業とは何が違うのか,さらに産別組織からの支援は有効ではないのか。われわれは,これらの実証すべき問いについて考察しなければならない。そこで本稿では,企業別労働組合と産別組織双方の組合リーダーへの聞き取り調査から中小労働組合運動の実態を把握したい。
中小労働組合運動に関する過去の研究蓄積を大くくりで整理すると,企業別労働組合の機能について正反対の評価に分かれる。ここでの機能とは,経営側に対する発言・交渉・協議などの活動を意味する1。なお,先行研究には,労働組合だけではなく,労働組合と従業員組織(社員会とも呼ばれる)をともに従業員発言機構と定義した分析がある。
まず,たしかに大企業と比べると,中小企業において労働組合は少ないが,従業員組織も含めて分析すれば,それらは労働組合と同様の経営側への発言の機能を果たしていると主張する研究がある2。その代表として小池(1981)があげられる。この研究では,中小企業においても長期勤続と内部育成が確認でき,従業員組織が「事実上の企業別労働組合」として経営側へ発言していると指摘している。
一方,佐藤(1994)は,多くの企業にとって従業員組織の存在が労働組合の内在的ニーズを減少させて組合組織化の阻害要因となるが,中小企業において組合結成の壁が大きければ,従業員組織の活性化が労働組合と同様に産業民主主義の拡大に繋がる可能性を示唆している。
ところで,従来,企業別労働組合の発言の機能の背景は,以下のように説明されている(小池(1981)や久本(1998)等参照)。企業特殊熟練(firm-specific skill)や個別企業独自のキャリア開発(career development)によって内部労働市場(internal labor markets)が形成されれば,「対立型」労働条件交渉から「参加分配型」の労使協議へと移行し,そのような企業内における相互信頼的な労使関係が人材育成や職場の生産性向上にも正の影響を与えている。企業側から見ても,企業別を基盤とした労使関係や労使コミュニケーションは,重要な経営資源であるという主張もある(呉, 2013)。
また,数少ない中小労働組合運動の計量分析である田口・梅崎(2011)は,上記の主張を支持しつつも中小企業間の違いを強調した3。すなわち,中小企業の中でも深い技能形成が必要となる企業では,労働組合が設置されやすいこと,また労働組合と従業員組織も発言交渉の機能を果たしていることが確認された。
第二に,労働組合であっても従業員組織であっても中小企業では「企業別」の活動には限界があると主張する研究がある。中村(1988)は,そもそも中小企業においては労働組合を結成することが少ない事実を指摘し,労使交渉の際に産別組織の支援が大きいこと,さらに労働組合と比べて従業員組織は離職率を引き下げないことを確認している。また中村(2007)は,中小企業分野において労働組合がある企業は少数派であるが,労働組合に加入していない労働者も労働組合肯定派が多数派であることを確認している。肯定的評価が多くても組合が結成されない理由として,一般的評価とは別に自社で組合が結成されることに否定的な経営者が多いこと,中小企業において産別組織の組合結成に対する支援は有効であるが,その支援に取り組む産別組織が少ないことを指摘している。
同様に2010年代の最新調査をもとにした呉(2014)では,労使コミュニケーションの重要性を主張しつつも,同時に中小企業における集団的労使関係の希薄化・形骸化が確認され,中小企業における限界を補うために従業員代表制の法制化の必要性が主張されている。
先行研究における中小の企業別労働組合の機能に対する評価の違いは調査の不足から生まれているとも言える。また,企業別労働組合の機能が高ければ(低ければ),産別組織の支援が必要ない(必要である)という関係についても,個々の企業別労働組合の運営や産別組織の支援の具体的中身まで把握しなければ,その実態は不明確である。すなわち,ある側面に関しては企業別労働組合が機能しているように見えるし,ある側面に関しては産別組織の支援が必要に見える可能性がある。したがって本稿では,中小労働組合にあって,具体的に何が組合組織運営の妨げになっているのか,運営方法の工夫はあるのか,さらに産別組織の支援はあるのか,あるならば有効なのかについて探索的な聞き取り調査を行いたい。特に聞き取り調査の利点を活かして,財政管理(カネ),人材(ヒト),運営方法(マネジメント)に細かく分けて質問し,定性的な分析をしたい。
なお,本稿の構成は以下の通りである。続く第2節では,アンケート調査から組合の規模間比較を行う。第3節では,調査方法の選択理由,調査の焦点,および調査対象について説明する。第4節では,はじめに企業別労働組合の課題とそれに対する運営上の工夫,次に産別組織の支援を分析する。第5節は,調査結果から明らかになった事実を検討し,組合運営と産別組織の支援の関係枠組みを析出し,その枠組みから支援の有効性や限界を検討する。
本節では,聞き取り調査の分析に入る前に,比較的最近の組合対象の量的調査である,全国労働組合生産性会議(全労生)が2012年に実施した「全労生・地方労生第4回 雇用と労使関係課題に関する共同アンケート調査」4のデータを再分析し,中小労働組合が抱える問題を把握する。この調査データは,規模別で組合運営に関する質問項目が含められているところが利点である。調査対象は全国労働組合生産性会議,地方労働組合生産性会議(地方労生)に加盟している企業別労働組合で,対象組合は865組織である。調査方法は郵便による配布・回収(郵送調査法)で,調査実施時期は2012年11月上旬~12月下旬,有効回収票は367票(回収率42.4%)であり,回収率は高い。ただし,組合規模は大規模組合に偏っている。本稿では,共同アンケートの組合員区分に基づき組合員299人以下の組合を「中小労働組合」と定義する。約21%が中小労働組合になる。
続けて,労働組合の規模が組合運営に与える影響を分析しよう。まず,企業規模別に専従者の数を把握すると(表1参照),299人以下の組合では専従者「0人」が88.31%で最も多く,「300人-999人」の39.13%や「1,000人以上」の4.85%と比べると,中小労働組合では専従者を置けないことになる。組合運営費が少ない中小労働組合では,専従者の賃金を支払うことが難しいと言える。専従者0人と1人の間には,費用面からも大きな壁が存在する。また,専従者は労働組合の活動に集中できるので,専従者がいない組合と比べれば,組合運営は円滑に行われる。また,組合役員の育成を考えてみても,専従者という仕事があれば,経験を通じて組合役員としての専門性を高めることができる。
次に,組合員数と労働組合運営との関係を把握しよう(表2)。まず,組合員数と,組合役員数,専従者数,組合役員候補(多い:4,やや多い:3,やや少ない:2,少ない:1),および役員候補(苦労しない:4,あまり苦労しない:3,やや苦労する:2,苦労する:1)の相関係数を確認し,さらに労使協議の回数,労使協議の満足度(満足している:4,やや満足している:3,やや不満である:2,不満である:1)との相関係数を分析する。組合員数が多ければ,役員も専従者も多く,その擁立に苦労していないことを確認できる。さらに,組合員数が多くなれば,労使協議の開催数も多くなり,その満足度も高まる。要するに,組合員数の規模が大きくなれば,財政,人材,運営方法が整い,組合運営にも良い効果を与えると考えられる。


本調査では,仮説を事前に設定せずに簡単な調査焦点(リサーチクエスチョン)を設定し,それらに沿って半構造化面接法を行った。採取された定性的データはグラウンデッド・セオリー・アプローチ(Grounded Theory Approach, 以下GTA)やKJ法の技法を参照しながら分析した5。
Strauss and Corbin(1990)は,第一に,まだほとんど知られていないような現象について,その背後にある何かを明らかにし,そして理解するために用いることが可能な方法であり,第二に,すでにかなりの多くの部分が明らかになっている事柄についても,新しく,新鮮なものの見方を得るために利用できる。第三に,数量的方法では伝えることが難しい現象のもつ複雑で難解な中身を詳細に記述することも可能になると主張している。本稿では,数量的分析では組織運営の中身までは把握できない中小労働組合運動の組織運営を分析する。さらに,産別組織と企業別労働組合の間の関係を探索的に分析する。これらを明らかにするには,GTAやKJ法の手法が適していると言えよう。
(2) 調査の焦点本稿では,仮説構築型の調査を行うが,事前にいくつかの調査焦点(リサーチクエスチョン)を設定した。まず,企業別労働組合の運営を把握するために,財政管理(カネ),人材(ヒト),運営方法(マネジメント)に分けて組合リーダーにどのような課題があるか,それらにどのように対処しているかを質問した。これら3つの焦点は,組織運営を分析するための基本視点であるが,特に規模の経済性を考慮しながら中小労働組合の課題と運営の工夫を聞き取りする。
例えば,組合費による財源が小さければ,専従者を置くことも難しく,組合運営に課題が生まれると考えられる。たとえ1人であっても専従者を置くことは難しい。つまり,0人と1人の間には大きな壁があり,そのために何らかの工夫が行われていると考えられる。さらに中小労働組合は,組合役員の選抜や育成に課題を抱えていると考えられる。また,労働組合の結成には,制度の初期設置のために費用もかかるし,これまでの経験蓄積が役に立つが,それらが中小企業にはない。仮に組合を結成できたとしても,労使協議や団体交渉には,独自のノウハウが求められる。大労働組合を模倣するだけでは,組合運営は難しい。むしろ大労働組合とは異なるやり方で組合運営を工夫している可能性が高い。
なお,労働組合の運営(特にカネ)については秘匿性が高く,過去の調査でも情報を入手することが難しかった。組合財政に関しては白井(1964)や岩崎(1994),ユニオン・リーダーに関しては大河内・氏原・高橋・高梨(1965)等の古典的研究はあるが,現在の組合運営を把握できる調査がなかった。本稿では,組合運営に踏み込んだ聞き取り調査を行った。
次に,中小の企業別労働組合だけでは課題を解決できていない場合,産別組織がどのような支援を行っているかを聞き取りした。企業別労働組合側にどのような支援を受けて,それぞれの支援が役に立っているかを確認したうえで,産別組織に対してはどのような支援を行ったかを質問し,双方の立場から企業別労働組合と産別組織の関係を考察した。このような企業別労働組合と産別組織を組み合わせた調査をすることで,両者の関係性が明らかにされると言えよう。表3は,調査焦点を項目化した表である。さらに,それぞれの項目に関して簡単な質問項目を事前に作成した6。
(3) 調査対象本稿では,2011年に17の中小労働組合に聞き取り調査(企業別組合調査)を実施し,2012年には13の産別組織に聞き取り調査(産別組織調査)を実施した7。中小労働組合に対して組織形態と日常的な組合活動を質問した後,組合が抱える課題とそれらに対する対応事例を聞いた。さらに,中小労働組合の課題を把握したうえで産別組織による中小労働組合支援を聞いて,個々の中小労働組合の課題を踏まえて支援の有効性について質問した。中小労働組合と産別組織の一覧は後掲表4および表5に示す通りである。



表6は,表3に示す調査焦点の項目に沿って採取された質的データをもとに中小労働組合が抱える課題と,運営上の工夫(以下「運営」)を整理したものである8。同表を見ると,中小労働組合が抱える課題は,第一に財政管理(カネ)では「収入の縮小」があげられる。具体的には「組合員の減少,非正規社員化による組合費収入の減少(以下「組合費収入の減少」)」「組合リーダー育成予算比率の圧迫」である。例えば,「組合費収入の減少」の課題を抱える運送業E社労働組合(以下「E組合」)では,取引先の減少と定年退職者の組合員資格のない再雇用者への切り替え等を背景に従業員数は10年前に比べて100人以上減少し,現在300人弱となっている。この影響を受けてE組合の組合員数は減少するとともに組合費収入も減ってしまい,同組合の組合財政は逼迫している。
第二に人材(ヒト)に関わる課題は大きく9項目に整理され,それらは「役員の選抜・育成・仕事配分問題」「組合規模の縮小」「組合員の意識・関心の低下」「組合内部のコミュニケーション不足」「組合内部の利害対立」の5つのカテゴリーに分類される。例えば,「役員の選抜・育成・仕事配分問題」について,電機機器・部品製造業N社労働組合(以下「N組合」)は「若手組合員の減少による後継者育成問題」を抱えている。生産拠点の海外移転,そして2000年以降の業績悪化による2005年からの新規採用中止等によってN社の従業員数は減少した。その結果,若手組合員は減少し,執行委員のなり手も少なくなった。そのため,執行委員の任期が長くなり,後継者育成がN組合にとって大きな課題となっている。
第三に運営方法(マネジメント)に関わる課題は7項目に整理され,それらは「労使関係制度の維持困難」「組合活動・運動機能の低下」「経営対策」の3つのカテゴリーに分類される。例えば,「労使関係制度の維持困難」について,化学業K社労働組合(以下「K組合」)は「労使関係制度に対する経営側,管理職の関心の低下」の問題を抱えている。同族経営のK社は組合活動に対する経営者の理解や認識が低く,組合員の労働条件の見直しには労働組合との協議が必要であるにもかかわらず経営側は独断で行い,事後報告が組合執行部に行われたことがあった。K組合は経営側のこうした行動に異議を唱えるとともに,今後は事前協議を行うことを申し入れている。

以上で確認した課題に取り組む中小労働組合の運営の特徴を見ていく(後掲表6)。まず財政管理の課題に対する中小労働組合の運営の具体例は5項目に整理される。例えば,組合費収入減少の課題を抱える食品製造業O社労働組合(以下「O組合」)では「半日専従制度の導入」が行われた。O組合は現在13人の執行役員体制で組合を運営しているが,フルタイムの専従者を置いていない。2000年代前半までフルタイムの専従者を置いていたが,経営の合理化,契約社員の増加,従業員の高齢化に伴う嘱託社員の増加によって組合員数が減少,それに併せて組合費収入も減少し,フルタイムの専従者を維持することが困難になったためである。そこでO組合は,午前中は会社の業務を,午後は組合活動を行う半専従制度を導入した。専従者の賃金は午前中の会社業務分は会社側が負担するが,午後の組合活動分は組合側が負担している。
つぎに人材の課題に対する運営の特徴を見ると,各課題に対応した工夫が行われている。その数は13項目である。例えば,「執行部人数の減少による執行部の担当業務負担の増大」の課題を抱える製造業G労働組合(以下「G組合」)では,「経営側への組合活動休暇制度の導入の働きかけ」を実施した。G組合の執行役員6人は全員非専従であるため,G組合は組合活動を原則,就業時間外に行っている。しかし,外部との会合等は日中に行われることが多く,出席することが難しい課題をG組合は抱えていた。G組合は経営側に働きかけて組合活動用の特別休暇制度を導入してもらい,就業時間中に必要な組合活動に対応している。
最後に,運営方法の課題に対する運営の特徴を見ていくと,財政管理や人材に関わる課題への工夫と同様に各課題に対応した工夫が行われている。その数は6項目に整理される。例えば,流通業J社労働組合(以下「J組合」)では,「組合活動へのベテランパート組合員の参加促進」が進められている。J組合は組合員数の4分の3近くがパートタイマー等の非正社員であるが,執行部は全員正社員組合員である。パートタイマーの多くは勤続年数3年未満の子育て世代であるため,仕事と子育ての両立に忙しく組合活動に消極的である。J組合はパートタイマー組合員に組合活動へ参加してもらうため,子育てを終えたベテランのパートタイマーに職場リーダーを担うよう働きかけている。
(c) 小活以上,中小労働組合が抱える課題と運営の特徴を整理してきた。中小労働組合が抱える課題は多く,その特徴を項目数で見ると人材に関する課題(5カテゴリー9項目),運営方法に関わる課題(3カテゴリー7項目)は財政管理(1カテゴリー2項目)に比べて多いことが確認された。しかし,項目をあげる組合数で見ると,項目数の少ない財政管理の課題の「組合費収入の減少」を多くの組合(12組織)があげており,この課題に関しては各組合で共通して見られているという特徴が確認された9。
こうした課題に取り組む中小労働組合の運営の特徴について,第一に各カテゴリーとも各課題に対応した運営の取り組みが行われていることが確認された。第二に,その取り組みの具体例の数に注目すると,「組合費収入の減少」に対する具体例の数が多いことが確認された。組合費収入の減少にいかに対処するかに絞られるが,収入に応じた支出の減少に関しては具体的な対処が行われている状況にある。しかし,第三に運営の具体例をあげる組合数で見ると,人材の課題における「組合員の意識・関心の低下」への工夫(「組合員との積極的なコミュニケーションの実施」)を多くの組合(11組織)があげており,しかも具体的な実施方法は組合によって異なっているという特徴が見られる。企業別労働組合がそれぞれの企業の特性に合わせて実施していることがうかがえる。
(2) 産別組織における中小労働組合の課題と支援の特徴表7は中小労働組合が抱える課題と運営を踏まえつつ,産別組織における中小労働組合の課題と支援を表3に示す調査焦点の項目に沿って整理したものである10。同図表を見ると,まず財政管理の課題は「会費収入の縮小」があげられる。前項で指摘したように,中小労働組合は収入減少に直面しており,それは加盟組合を介して組合費収入に依存する産別組織の財源にとっても大きな課題である。例えば,g産別組織では「地方組織会費の格差問題」が生じており,2つの産別組織が統合して発足した同産別組織の歴史がその背景にある。地方組織会費は旧産別組織で異なっていたが,産別統合後も統一されなかったためこの問題が生じている。そこで,g産別組織は本部主導の下でこの問題を是正し,地方組織会費の統一を目指して「会費収入の軽減措置の実施」を行っている。この他にも労働運動の地域間格差を是正しつつ地域特性を踏まえたオルグ活動が産別本部の主導で推進されている。
つぎに人材の課題に関する具体例は大きく3項目に整理され,それらは「執行部機能の低下」と「組合規模の縮小」の2つのカテゴリーに分類される。例えば,m産別組織は「非専従者化による執行部機能の維持・主体的な行動・運営のノウハウの継承の困難化(以下「執行部機能の維持・運営ノウハウ継承の困難化」)の課題を抱えている。m産別組織の加盟組合の執行役員は非専従者が多く時間的な余裕がないため,同組織主催の会合等に参加できない加盟組合が少なくない状況にある。加盟組合間の交流が滞り,執行部機能の低下につながる危機感をm産別組織はもっている。
人材の支援の具体例は,7項目に整理される。例えば,c産別組織は「アナログツールを利用した単組とのコミュニケーションの強化」を実施している。「組合活動は『人と人との人間関係』である」とc産別組織は考え,常に顔が見えるコミュニケーションを重視している。c産別組織では加盟組合と連絡する際にメール等のデジタルツールが使われているが,それだけでは加盟組合との関係が希薄化する恐れがあるため,電話,加盟組合への定期的な訪問等のアナログツールもc産別組織は重視して活用している。この例が典型的であるが,人材に関する産別組織の支援は,加盟組合の組合運営を直接支援するのではなく,運営自体を支援する施策が多く見られる。
最後に運営方法の課題の具体例は5項目に整理され,それは「労使関係制度の維持困難化」と「組合活動・運動機能の低下」のカテゴリーに分類される。例えば,d産別組織の加盟組合は「産別本部・地方組織のオルグ活動の停滞」の課題を抱えている。d産別組織の加盟組織は専従者が配置できない中小労働組合が多く,組合運営に困難が生じて同産別組織の支援・指導が不可欠な状況にある。人材に関わる支援と異なる点は,企業別労働組合の役員の育成ではなく,産別組織の専従者が直接的に中小労働組合を支援して企業別労働組合の運営を機能代替している点である。しかし,産別組織本部だけでは支援を行うのは難しく,地方組織の拡充・強化が同産別組織の課題となっている。
このような課題への支援の具体例は11項目に整理される。例えば,b産別組織は加盟組合が主体的な組合活動を取り組めるよう「組合活動支援ツールの作成とそれを活用した単組の実態把握」を2007年から実施している。支援ツールを活用することで加盟組合は執行部機能を高めていくことが可能になるとともに活動状況が可視化され,執行部が改選されてもその機能が継承できるようになった。
以上,産別組織における中小労働組合の課題と支援を整理してきた。産別組織は中小労働組合の組織運営に対して財政管理,人材,運営方法の各分野を支援していることが確認され,中小労働組合運動に産別組織の支援は欠かすことができないと言えよう11。人材への支援は執行部機能の低下を支援する産別組織が,運営方法への支援は組合活動・運動機能の低下を支援する産別組織がそれぞれ多い。

前節では,聞き取り調査を中心に中小労働組合の課題と組合運営,さらに産別組織の支援についての調査結果を提示した。本節では,これら調査結果を踏まえて,どのような解釈(仮説構築)が可能かについて議論したい。
本稿では,はじめに聞き取り調査の前に標本調査(量的調査)から組合運営の規模別の違いを把握した。まず,組合員数が多ければ,役員も専従者も多くなり,またその擁立に苦労していないこと,さらに労使協議の回数や満足度,産別組織との会合頻度も増えることを確認した。組合運営には規模の経済性があると言える。
中小労働組合に関する聞き取り調査では,中小労働組合が抱える課題と運営工夫について質問した。特に,財務管理(カネ)に比べると,人材(ヒト)や運営方法(マネジメント)に関しては,多くの課題と運営工夫の関係を確認できた。なかでも人材(ヒト)に関する課題と運営工夫は,運営方法(マネジメント)よりも多様であった。カネに関しては組合費収入の減少という同じ問題を抱えていた。これらの多様性を踏まえて産別組織の支援についても聞き取りを行った。その支援の仕方については,カネに関わる財政問題に対する支援は少ないが,ヒトとマネジメントに関しては,多様な支援の方法を確認できた。
このような2つの聞き取りを踏まえて,中小労働組合の課題と運営工夫,産別組織の支援をそれぞれまとめてカテゴリー化した。課題の大小,運営工夫の効果,支援の効果の情報をまとめながらカテゴリー化することによって,中小の企業別労働組合と産別組織の関係性が析出できる(図1参照)。
まず,企業別組合調査から明らかになった個々の課題に対する組合運営の工夫を踏まえて産別組織の支援を見ると,課題に直接働きかける事例と,企業別労働組合の運営を支援する事例があることが確認された。本稿の分析では,前者を「機能代替」,後者を「運営支援」と定義したい。つまり,中小労働組合が独立して組合運営ができるか,運営できないのか(産別組織の支援が必要)という二者択一ではなく,自主運営と支援の関係,さらに支援が必要な場合の機能代替と運営支援の違いが調査から明らかになった。
続いて,3つの調査焦点に分けてこの析出された関係枠組みを整理すると,主にカネとヒトの限界に関しては,図2-1および図2-2のように産別組織は直接関与せずに,中小労働組合の運営自体を支援している(運営支援中心)と言える。人材(ヒト)に関する課題は,様々な支援方法があるが,財務管理(カネ)に関しては限られた支援方法しかないことが確認できる。その一方で,マネジメントの限界に対しては,図2-3のように産別組織は直接的に課題を解決していると言える(機能代替中心)。組合運営の経験が圧倒的に不足している中小労働組合も多く,人材不足ゆえにさらに運営経験が蓄積されないので,機能代替の支援を受けていると解釈できる。要するに,組合運営を考えると,運営支援と機能代替の間に「代替関係」があると考えられる。
従来の実証研究では,主に企業別労働組合の機能に焦点を当てた分析や企業別労働組合と産別組織の対立点に焦点を当てた分析が多かったが,本稿では,企業別労働組合の運営と産別組織支援を双方向から調べることで企業別労働組合と産別組織の被支援・支援関係について個別に確認できた。
ただし,これらの産別組織の支援は,ヒトやマネジメントに関しては,いくつかの方法で効果をあげているが,実際のところ,カネについては限界があることも確認された。中小労働組合の組織率は低下し続けている。つまり,言い方を変えると組合がある中小企業にとって産別組織(の支援)は「身近」であるが,多くの未組織企業にとっては「遠い」可能性がある。未組織中小企業の組合結成と産別組織については,残された研究課題として検討を続けたい。
筆者=梅崎 修/法政大学キャリアデザイン学部教授
田口和雄/高千穂大学経営学部教授

