2019 年 17 巻 1 号 p. 68-78
水素のエネルギー貯蔵能力は,島嶼部で水素エネルギーを使用することが,エネルギー安全保障上の大きな長所をもたらす可能性を与える。水素の社会的受容性については,従来,安全面での関心から世界的に多く研究されてきたが,日本における先行研究は非常に限られている。本研究は,愛媛県の旧中島町の島民の,水素ステーションの社会的受容性について,アンケート調査を実施した。個人的な価値観が,水素ステーションの受容性の主な決定要因だった。再生可能エネルギーから地域で製造した水素は,より安全性や環境性の向上のインパクトがあると予測され,化石燃料から製造された地域外で製造された水素は,経済発展やエネルギー安全保障上のインパクトがあると予測されていた。また,再生可能エネルギーからの地域での水素製造か,化石燃料からの地域外での水素製造かの如何によらず,地域の人は,水素ステーションの設置が地域の社会的な便益をもたらすと予想したときに,水素ステーションをより受容した。当該結果は,高齢化社会が進展している日本の島嶼部における,水素エネルギー導入の実施可能性の検討の際に,有用な示唆を与えるだろう。