2009 年 2009 巻 604 号 p. 604_25-604_44
生命保険の自由化とは,戦後型保険システムが新しい保険システムに転換する過程で生じた出来事である。前者のシステムの目的は,少し高い価格であっても競争を組織化することによって契約者に対して安心できる保険サービスを提供することであり,後者のシステムの目的は,自由競争で効率性を高めた企業の剰余を価格競争によって消費者に還元することである。
システムの転換を決定づけたのが,改正保険業法であった。しかし,損害保険自由化がカルテル料率の廃止という明確なメルクマールをもっているのに対し,生命保険自由化を具体的かつ明確に解明した文献は管見のかぎり存在しない。本稿は,業務規制,価格規制,商品規制,チャネル規制という四つの規制の自由化を具体的に明らかにし,あわせて自由化のもたらした課題を検討した。その結果,新しいシステムが制度設計の目的どおりに十分機能するためには,いくつかの課題が残っていることを明らかにした。