抄録
法律の適用・解釈において保険概念に関する議論が意味を持つ局面としては,「保険」であることが法規定の適用要件になっているため,ある取引がまさに「保険」取引であるのか否かということが問題となる場合(Ex.保険法・保険業法・法人税法の損金算入)と,当該規定の要件に「保険」という概念は含まれていないが,ある取引に当該規定を適用するに際して,当該取引が保険取引であることがどのような影響を与えるかということが問題となる場合(Ex.独占禁止法の課徴金額の算定)がある。いずれの場合についても,「保険」という取引・制度をどう捉えるかという問題は重要なものであるが,その議論から個々の法規定の適用について直接結論を導きうるとは限らず,当該法規の趣旨・効果を踏まえて当該法規をいかなる場合にどのように適用すべきかという観点からの検討が必要である。