抄録
新保険法では,「第三者のためにする損害保険契約」とされるいわゆる「他人のためにする保険」だが,この考え方は旧VVGの条文配置に淵源を有するものと思われる。しかし,新VVGでは,従来損害保険に固有であったFremdversicherungの規定が保険総則におかれることとなったため,生命保険では用語法の異なる2つの「他人のためにする保険」に関する規律が併存する。イタリアでは2002年の破毀院連合部判決でFremdversicherung型の「他人のためにする保険」は生命保険においては事務管理とされ,保険金請求権の指定変更権も被保険者自身に帰属するという判決を見ることができるが,新VVGにおいては,従来の見解が抑制的に維持された。しかし,これはドイツのFremdversicherungは,被保険者に対する保険契約者の諸権利を43条以下で維持しているからであって,原初形態のそれが当然に「第三者のためにする契約」の性質を有するものではない。