保険学雑誌
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「保険事業とERM」―平成23年度大会共通論題―
保険会社のERMとガバナンス
長谷川 俊明
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2012 年 2012 巻 617 号 p. 617_73-617_83

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抄録
保険会社の経済価値ベースのソルベンシー評価は世界的潮流だが,同評価の適切な実施にはERMが有効である。保険会社には計量化が難しいリスクもあるので,定性的評価を定量的評価と併せて行うことでERMを機能させうる。
ERMは,事業体全体にわたって適用されるプロセスであり,保険会社のERMにはリスクの計量的把握に加え,ガバナンスと内部統制による定性的リスクコントロールが欠かせない。とくに,保険契約者への説明不足,風評,システムなどからくるリスクが重要である。
相互会社はステークホルダーが異なるため,株式会社以上にガバナンス向上が求められる。また,ERM は企業グループで大きな威力を発揮するのでグループ内でリスク管理手法を適切に使い分けるべきである。東日本大震災のような大自然災害時の保険会社としてのBCP(事業継続計画)は,リスクガバナンスを利かせたERMの一環とすべきであろう。
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© 2012 日本保険学会
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