抄録
企業の大規模地震対策においては,目標復旧時間・レベルを指標として,重要業務の継続に焦点を当てた事業継続計画(BCP)の取り組みが普及してきた。
本稿では,まず,東日本大震災における被害実態と地震対策効果に関する企業アンケート結果の分析に基づいて,事前対策の効果の度合いやその重要度に関する事前,事後の認識の変化を示す。次に,本大地震によってリスク管理の課題が浮き彫りとなり,さらに想定リスクが見直される中での企業の取り組みのあるべき姿を説明する。
最後に,企業の事業継続戦略において,多額の投資を要する本質的な対策とともに,保険,デリバティブなどのリスクファイナンス手法を組み合わせて対応すること,BCPを企業価値向上のための経営戦略に位置づけ,経営層の強い意志と積極的な関与によって進めることを提言する。