抄録
傷害保険等における「外来性」の解釈及び立証責任について平成19年の2つの判例が一定の結論を出して以降も,これに関して多くの裁判例が出されているところであり,これら裁判例を分析していくと,判例を前提とした上でも「外来性」や「因果関係」を否定し,保険金支払義務を否定したものも多くみられる一方,「疾病免責条項」等の免責規定の適用については,平成19年判例以前の多数説・実務運用(「請求原因説」)の考え方を前提とした場合と異なる判断が下され,その免責が否定されているものが多く見受けられる。
「疾病免責条項」が存在していても,それによる免責が認められる事案が少ないことに鑑みれば,疾病による免責に関する規定の文言についてはより踏み込んだ検討が必要であり,割合的な認定及び支払を行える規定の仕方が,裁判所の審理及び当事者の立証の衡平に資すると考える。