保険学雑誌
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【査読済み論文】
損害てん補にかかわる諸法則といわゆる利得禁止原則との関係
-ドイツにおける利得禁止原則否定後の評価済保険規整,重複保険規整,請求権代位規整の議論を手掛かりとして-
𡈽岐 孝宏
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2014 年 2014 巻 626 号 p. 626_1-626_30

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抄録
損害保険に関する商法・保険法の個別規定から,不文の強行法としての利得禁止原則が推論されるというのが,わが国における通説の理解であり,これまで,その推論根拠とされる個別規定の解釈論は,当該原則の支配・影響を受ける形において行われてきた。しかし,保険法の諸規定を客観的に考察する場合,そこに,保険給付に関して何らかの禁止を命じ,その違反に対して無効という法的効果を用意している<個別>規定(=強行規定)は存在しないのであって,その状況下,強行法規という性質の<一般的>法命題を<全体>推論することは,説得的でない。法規範,とりわけ,強行法規という性質の法規範たる利得禁止原則は存在しない。損害保険において,損害のみがてん補されるのは(それを裏側から見て利得がないと表現するにしてもそれは),契約当事者がその結果を欲したからにほかならず,当事者意思による必然ないし当然を,公益的当為による命令の成果と評価すべきでない。そして,個別規定の解釈論も,「利得禁止原則」なる架空の法規範を離れて,再構成していくことが求められる。
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© 2014 日本保険学会
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