抄録
本稿は,戦後日本の生命保険ビジネスモデルの変遷について考察することを目的とする。そこでまず,生保会社を取り巻く経営環境の変化および生保市場の構造変化を明らかにした。次に,生命保険ビジネスモデルを商品開発・供給と販売を一体で行うものと,商品供給に徹し,販売を行わない製販分離の2つに大別し,前者をさらに(1)フルラインの商品を対面販売チャネルで提供するタイプ,(2)特定のターゲットや商品に特化するタイプ,(3)コスト優位で低価格商品を提供するタイプの3つに分類した。大手会社は戦後護送船団行政の下で,(1)のビジネスモデルを展開し収益性の高い死亡保障商品を女性営業職員を通して大量に販売した。しかし1990年代以降事業環境が大きく変化する中で,大手会社は代理店とりわけ金融機関チャネル(銀行窓販)を活用し,貯蓄性の高い商品を販売するなど,従来のビジネスモデルを再構築する動きが出ている。一方,中小会社の中には従来から(2)の特化型ビジネスモデルを展開する企業があり,さらに,近年では(3)のコスト優位型ビジネスモデルや「製販分離」のビジネスモデルを展開する企業が現れた。