抄録
保険自由化から20年が経過し,2001年の「第一次再編」によって,14社あった上場会社が8社に集約され,さらなる合併・統合を推し進めた結果,現在では,3メガ損保グループに集約された。その結果,保険料収入の約90%が3メガ損保グループに集中し,リスク管理の観点から,保険契約を自然災害の多い日本国内だけでなく国際分散させる重要性が認識されている。再編の時代となった自由化10年を過ぎ,少子高齢化,人口減少社会が顕在化し,国内市場の伸びが期待できないため,成長の見込める海外市場に事業拡大の舵を切ることが,3メガ損保グループの経営戦略上,重要になってきた。
2014年以降,3メガ損保グループは,先進国市場で大型買収を通じた海外事業展開を活発化し,同質的な海外戦略を採用している。国内事業で蓄積した競争優位とM&Aで獲得した海外事業をどのように結合させるかが問われると共に,高騰している買収価格は,巨額の「のれん」計上と,その償却によって各社のBS,PLに長期的な影響を与える。収益を獲得するためのM&Aが,のれんの償却によって利益を圧迫する危険を生じさせるのである。