保険学雑誌
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【査読済み論文】
重複保険における保険者間の法律関係に関する一考察
山下 徹哉
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2018 年 2018 巻 641 号 p. 641_1-641_30

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抄録
本稿では,重複保険の場合の保険者間の法律関係を明確化するため,保険法上の求償規定(同法20条2項)の解釈について検討する。まず,保険法の立案担当者の見解は,その解釈の実質的正当性を明示しているわけではないが,学説では,当該解釈はコスト削減の実現により正当化し得ると主張するものがある。その具体的意味は,①各保険者の負担部分を画一的な基準で定め,保険者間の法律関係を単純化する,②保険者間の求償が可能な限り生じないようにする,という2通りがあり得る。ドイツ法および米国法を参考にして考察すると,コスト削減を②のような内容で理解すれば,立案担当者の見解を実質的に正当化できることが分かる。以上の検討を前提として,重複する保険契約の一部に独立責任額按分主義または他保険優先払の約定がある場合の保険者間の法律関係について,保険法20条2項の解釈論を示す。
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© 2018 日本保険学会
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