保険学雑誌
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Earthquake Commission Actの改正
—ニュージーランド・クライストチャーチ地震の衝撃—
黒木 松男
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2019 年 2019 巻 647 号 p. 647_27-647_42

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抄録

2011年(平成23年)2月22日にニュージーランドのクライストチャーチを襲った大地震は,大きな人的被害や物的被害を生じさせ,ニュージーランドで自然災害担保を提供してきたEarthquake Commission(EQC:地震委員会)に対しても大きな衝撃を与えることになった。すなわち,クライストチャーチ地震におけるEQCの支払った地震保険金の金額は,85億NZドル(1NZドル≒70円として,約5ó950億円)に達した。EQCが長年積み立ててきた自然災害基金は,クライストチャーチ地震発生時には,56億NZドル(約3ó920億円)になっていたが,自然災害基金は枯渇し,他の支払原資となった再保険金などが使用された。その結果,ニュージーランドの自然災害担保を今後も存続させるという制度的持続可能性がクライストチャーチ地震直後から議論され始めた。

その検討から4年後の2015年,ニュージーランド政府は,Earthquake Commission Act 1993の改正案を公表し,2019年2月18日に改正法は成立した。それによると,1EQCは住宅建物敷地や建物への通路の担保を拡大し住宅建物担保に特化し,家財担保から撤退し,家財担保は民間保険会社に全面的に任せること,2住宅建物の担保の上限限度額を,10万NZドル(約700万円)を15万NZドル(約1ó050万円)に引き上げること,3EQCと民間保険会社の保険金請求の1本化など連携を密にすること,4保険金請求期間をEarthquake Commission Actの改正災害時から3ヶ月間から2年間に延長すること,5自然災害保険料の保険料率を引き上げることなどが改正された。

2019年2月18日に改正されたEarthquake Commission Actは,同日施行の条文,同年7月1日施行の条文,2020年7月1日にその他の条文のすべてが施行される。本稿は,成立した改正法の改正内容を検討考察するものである。

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