保険学雑誌
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シンポジウム第1部「インシュアテックと保険・保険業の未来」
日本におけるインシュアテックと公的医療保険
伊藤 豪
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2020 年 2020 巻 648 号 p. 648_53-648_68

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抄録

本稿は,公的医療保険制度に影響を及ぼすテクノロジーをインシュアテックと捉え,データヘルス改革,医療技術革新および情報技術革新が公的医療保険制度にどのような影響を及ぼすのかを分析したものである。具体的には,世界で一番高額な薬(ゾルゲンスマ),がんゲノム医療,血液1滴からがん検査,iPS培養装置,手術支援ロボットの保険適用拡大,認知症の薬を医療技術革新,マイナンバーカード,オンライン診療,スマホ診療そしてWHOが推奨するデジタルヘルス介入を情報技術革新と捉え,それぞれが公的医療保険制度に及ぼす影響を検討した。その結果,オプジーボのように承認当初は対象治療も悪性黒色腫(メラノーマ)に限られ,患者数も少なく高額だった薬が,対象治療の拡大と患者数の増大により,高頻度高価格となってしまうと,収支相等の原則が崩れ,保険システムの限界を迎えることになることを指摘した。一方で,医療技術革新や情報技術革新は無駄な医療を排除し,効率化を進めることにより,医療費を削減する効果も期待できることを指摘した。

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© 2020 日本保険学会
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