2020 年 2020 巻 649 号 p. 649_13-649_34
自賠責保険の直接請求権につき,損害賠償額が保険金額を超える場合でも損害賠償額と同額の権利であるとする考え方と,保険金額を限度とする権利であるとする考え方がありうる。この点は,直接請求権と損害賠償請求権の関係をどのようにみるか等とも絡んで,請求権代位による代位取得の範囲に影響する。また,被害者が複数いる場合の保険金の支払にも影響する。もっとも,結論としてはさほど大きな違いがあるわけではない。
傷害保険における外来性につき,吐物誤嚥自体で外来性を肯定する判例の考え方に対しては批判が強い。しかし,外来性要件の機能は判断基準の明確化であるという見地からすれば,判例も合理的といえる。老齢等による身体機能の低下を原因とする事故をどう扱うかは問題になるが,これはそもそもそのような原因の事故が担保範囲に含まれると解するかどうかが必ずしも明らかではないことから生じる問題である。