2021 年 2021 巻 652 号 p. 652_51-652_73
本稿は,日本初の近代的保険会社が設立されてから現在に至るまでの間に,生活者がリスクをどのように捉え,またリスク・マネジメントの代表的手法である保険をどのように理解してきたのかについて,様々な角度から議論を試みるものである。日常的に生活者の目に触れる新聞や小説等に記された内容から,安定した収入という意味での「恒の産」は生活者の冷静な行動の基盤となり,それを逸失するリスクに備える保険の重要性は早くから認識されてきたといえる。しかし,必ずしも十分とはいえない金融・経済リテラシーと,それによって生ずる保険に対する誤解は現在まで存続していると考えられる。定量的にも,生命保険の人口当たり契約金額等は地域によって格差があり,全国消費実態調査の集計データを用いた分析では,新聞への支出額が保険保有額と有意な正の相関があることが示された。