保険学雑誌
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「地震リスクに対する企業保険制度の課題」—令和3年度大会共通論題—
地震リスクをめぐる再保険
—再保険に期待される役割—
谷水 克哉
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2022 年 2022 巻 657 号 p. 657_47-657_65

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抄録

企業地震保険を提供する保険会社は再保険を活用してリスクヘッジを行っている。一件当たりの付保額が大きいものについては任意再保険も活用される。かつては火災契約を抱き合わせて出再する仕組みのスペシャルシャープラスと呼ばれる再保険も使われていたが,近年では地震部分だけをクオータシェア特約で一定割合を出再し,残る保有部分についてオカランスベースのエクセスオブロスを手配するという方法が一般的である。さらにはキャットボンドなどのILSを利用した手法も利用されるようになってきた。そのように保険会社の企業地震保険の引受を支援する再保険であるが,その引受額(キャパシティ)や再保険価格について,それらの変動がリスクであると考えられて必ずしも100%の信頼がおかれてきたわけでもない。これは1980年代の終わりから30年あまり再保険市場の実務に携わってきた中での変わらない印象である。一方で,その間,再保険市場も様々な変遷を遂げてきており,1990年代の市場とは異なる。そのような再保険市場の変遷を見ながら日本の地震リスクについて我々は再保険にどのような期待をすべきなのか考察したい。

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© 2022 日本保険学会
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