2022 年 2022 巻 659 号 p. 659_177-659_206
新型コロナウイルスの感染拡大による行動自粛制限が保険会社の非対面手続きを加速させた。当初は損保会社も生保会社も手探りの対応だったが,その後はデジタル技術も活用した新たなビジネスモデルが次々に誕生した。損保の代理店チャネルではこれまでも契約更新を中心に非対面手続きが行われてきたが,新規契約でも非対面手続きが可能になり,非対面を求める顧客ニーズや顧客利便に対応した。しかし,こうした非対面の対応はコロナ収束後も見据えたビジネスモデルの変革でなければならない。この点では非対面手続きが各社各様のバラバラ,スマートフォン利用の使い勝手,デジタル技術の利用状況など,課題も散見される。また,そもそも保険ビジネス自体もデジタル化の加速によって大きく変わりつつあり,そうした流れも踏まえながら課題解決に向き合っていく必要がある。競争環境が変容し技術競争が激化するなかで,保険会社は顧客本位の,CX向上が構造化されたマーケットを創造することによって持続的な発展が可能となる。そのためには業務プロセスなどのビジネスモデルの基本的な考え方やコンセプトを業界全体で共有することが重要で,そうすることによって質の高い,未来を切り開く競争が促進される。