2023 年 2023 巻 661 号 p. 661_125-661_149
伝統的に戦争危険を担保する海上保険契約には,サイバー危険に関する免責条項が付帯されることが国際的通例となっている。近年,軍事におけるサイバー戦の重要性が増すなか,ロシアによるウクライナ侵攻に際し大規模なサイバー攻撃が行われ,武力紛争とサイバー攻撃の関連性が示された。本稿では,貨物海上保険における戦争リスクとサイバーリスクの関係性の検討を通じ,現行約款の課題について考えた。課題は,加害行為と損害の因果関係の規定方法がポイントとなる。その結果を受けて,最新の加害行為に則した理想的な約款規定のあり方,またサイバーと通常戦力の協同作用下でのアンダーライティングのあり方についても考える。