2024 年 2024 巻 667 号 p. 667_139-667_167
実質的被保険者論は,第三者による故意の事故招致免責における有力な学説である。もっとも,裁判例において同理論が直接的に援用された事案ばかりではなく,その用いられ方にはバリエーションがある。本稿では,裁判規範として実質的被保険者論を精緻化するための試論を展開した。その結果として,被保険利益が形式的被保険者・実質的被保険者のいずれに帰属するかという観点に加え,免責の対象となる行為を形式的被保険者・実質的被保険者のうちいずれがどのように主導したかという行為類型もあわせて考えることが適切と結論づけた。