抄録
日本の盲導犬の歴史は警察犬・家庭犬訓練士がその能力を使って犬に盲導犬の役割を担わしたことが最初である。その影響からか盲導犬の仕事は訓練士の仕事として長い間視覚リハとの連携をとることなく過ごしてきた。盲導犬歩行が視覚障害者に正当な選択肢の一つとして選ばれるものであるためにリハの観点からの育成が求められる。そのなかで歴史的に盲導犬の訓練士の養成を犬の訓練士と同じような経緯をたどってきた。白杖歩行指導員、生活訓練士たちが科学的にそして系統だった世界基準で訓練を受けているのに対して、盲導犬はあくまでも日本におけるという冠詞がつく日本のローカルの部分で活動してきた。国際盲導犬連盟やさまざまな機会によって世界の状況を知ることが容易になってきた。そのために盲導犬訓練士に求められるものも視覚障害者の障害の多様化とともに変化してきた。その期待に応えるべく日本盲導犬協会は2004年に盲導犬訓練士学校を発足させた。いままでの反省をふまえ科学的、かつ合理的に盲導犬の育成をすることによって視覚障害者の歩行の選択肢を広げる作業を行なっている。盲導犬訓練士学校のカリキュラム、基本方針を明らかにし、今年3学年そろったことによってまだ結果は出ていないが一つの区切りとして何をやっているか、何をしようとしているか、盲導犬訓練士学校の今後の展望を述べてみたい。