日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
セッションID: PII-17
会議情報

ポスター発表 II
神経疾患と視覚障害を併せ持つ児童への教育的対応
*小林 巌並木 悠造神尾 裕治
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】視覚に障害のある重複障害児の教育は、一人一人の状況やニーズを踏まえた対応が求められる。本稿では神経疾患と視覚障害を併せ持つ児童を対象とした教育的対応について報告する。
【対象】対応開始時に中学1年の男児。眼疾は視神経萎縮、乱視、近視、斜視、眼振。視力は両眼0.02で視野は正常範囲。運動麻痺や感覚障害があり、多発性硬化症の疑いと診断されている。小学生時代は、点字、墨字ともに十分な活用が難しいとされ、主に音声テープやパソコンの音声出力を使って学習が行われた。中学に進み、中学レベルの学習内容に十分対応可能な学習環境の検討が求められた。
【経過】従来、補助的に墨字を活用していたが、適切な読み環境に関する詳細な検討は行われていなかった。そこでPC版ひらがな読書チャート(pcMNREAD-JK)および大型ディスプレイ(23インチ)を用いて読み環境の評価を行った。その結果、従来は白黒反転の環境にしていたが、実際には白黒反転なしの方が読書効率は高かった。また、従来用いていた文字サイズよりはるかに大きい条件で読書速度が高くなった。以上をもとに、大型ディスプレイによる読みに配慮した学習環境を構築したところ、国語や英語での文字の確認や、数学での数式や記号の理解等が容易になり、特に漢字学習や数学のイメージ化に進展が見られた。しかしその後、1年の3学期に視力が低下し、視覚による文字の確認が難しくなったため、国語や英語ではパソコンの音声出力の利用に全面的に切り替えた。漢字学習は六点漢字入力を用い継続している。一方、数式はまだ視覚で確認できるため、数学のみ必要な時に視覚を活用しながら学習を進めている。
【結論】視覚に障害のある重複障害児の教育においては、活用できる教育手段に制限が生じがちである。個々の状況、残された機能等を総合的・組織的に把握し、様々な工夫を行って学習を進めていく必要がある。

著者関連情報
© 2006 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
前の記事 次の記事
feedback
Top