日本網内系学会会誌
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異種腹腔細胞の移入による癌治療の試み
三浦 啓多小島 崇司亀井 秀雄近藤 達平
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1984 年 24 巻 4 号 p. 261-266

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抄録

マウスの腫瘍に及ぼすラットの腹腔細胞の影響を検討した。in vitroの実験において,澱粉刺激により得たラットの腹腔細胞はマウスの腫瘍増殖抑制を示し,更にラット腹腔細胞の分画実験にてこの効果は主としてラット腹腔細胞のうちのプラスチック付着性細胞によるものと考えられた。次にin vivoの実験にてラット腹腔細胞とマウスの同系腫瘍細胞とを同時にマウス腹腔内に接種した場合に,ラット腹腔細胞によると思われる著明な延命効果を認めた。一方ラットの脾細胞を用いた実験にては,腫瘍単独接種群に比し若干の延命効果を認めたものの,腹腔細胞接種群に比較すればその延命効果ははるかに少なかった。更にマウスの腹腔内に同系腫瘍細胞を接種後1日目にcyclophosphamide (CPA)あるいはNitrominを腹腔内注射し更に1日後にラット腹腔細胞をマウス腹腔内に接種した。抗癌剤単独投与群ではわずかの延命効果が認められたのに対し,これにラット腹腔細胞を追加した群では更に著明な延命効果を認めた。

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